Herokuで拡がるスタートアップビジネスの可能性 - スタートアップ on Heroku Demo Day

五味明子
2012-07-27 16:54:00
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ユビレジ - iPadでPOSレジ&Webで分析

 3つめは、Demo Day参加者の人気投票で1位を獲得した「ユビレジ」。ユビレジをインストールしたiPadを店舗のレジとして使い(フロントエンド)、会計の情報はクラウドに置く(バックエンド)システムで、2011年9月にサービスをリリースして以来、すでに1000アカウント以上を獲得している。

 ユビレジは売上データの閲覧が過去3日間のみの無料アカウントと、閲覧期間に制限がないプレミアムアカウントがあり、プレミアムの場合は月額5000円となる。設置に1台50万円以上、ランニングコストも月額2〜3万円はかかる従来のPOSレジと比較し、「コストや操作性、インターフェースなど、あらゆる面で業界を破壊するイノベーション」とユビレジ代表取締役の木戸啓太氏は自信を隠さない。

ユビレジ代表取締役の木戸啓太氏
ユビレジ代表取締役の木戸啓太氏

 最大の特徴は、とにかく操作が簡単なことだ。iPhoneを使うように直感的に操作でき、その使用感も軽快そのもの。従業員への教育もほとんど必要ない。またバックエンドのリアルタイム集計機能は売上やピークタイムの把握や分析が現場で行えると好評を博している。導入事例として紹介されたJR九州運営の「つばめカフェ」からは、狭い店舗でも場所を取らない、iPadがカフェの雰囲気にあっている、リアルタイム集計機能によりピークタイムが把握できるので従業員を効率的に配置できる、などの効果が報告されている。

 ユビレジでは、サービスの提供にあたってもともと別のVPSを使っていたという。だが5時間ほどWebサイトがアクセスできなくなり、一部機能が使えなくなるという事態が発生し、「トラフィックが集中しても弾力的にさばけるHerokuに移行した」とのこと。ただし移行コストが小さくないため、メインのサービスやバックアップサイト、ヘルプセンターなどはHerokuに移行したものの、ユビレジの分析アプリケーションは従前のVPSに置いたままだという。今後はこのあたりの統合が課題になりそうだ。

7月27日 20時28分追記:掲載当初、「トラフィックが集中して5時間ほどレジが使えなくなるという事態が発生し」と記載しておりましたが、正しくは「5時間ほどWebサイトがアクセスできなくなり、一部機能が使えなくなるという事態が発生し」でした。ユビレジによりますと、レジ部分はトラフィックの影響を受けないように設計しているとのことです。読者の皆さま並びに関係者の皆さまにお詫びして訂正いたします。

 既存のPOSレジを「化石レジ」にする力をもったユビレジ。順調に事例数も増え、ビジネスとしての可能性の拡がりに目をつけたSalesforce.comが出資を発表するという朗報も。ARCが変えた流通の現場という言葉がぴったりの革新的なスタートアップ成功例である。

co-meeting - テキストベースのグループディスカッションツール

 4つめは「Happy Work! Happy Life!」を企業理念に掲げるco-meeting。B2Bの本格的なテキスト会議ツールとして注目をあつめるco-meetingだが、説明に登壇したは同社CTOの吉田雄哉氏は、吉田氏はco-meetingなどのノウハウを生かしてクラウド利用のコンサルを展開しており、そういった見地から今回の情報提供を行おうとした。実際、PaaSとスタートアップの関係を考察した興味深い発表となった。

co-meetingのCTOの吉田雄哉氏
co-meetingのCTOの吉田雄哉氏

 co-meetingはもともと、Google Waveをコアエンジンとしバグの修正などを施し、Ruby on Railsで追加機能を開発、ニフティクラウド上でサービスを提供している。吉田氏は今回のイベントにあわせ、Herokuに機能を移行できるかどうかを検証。その技術的な知見を、参加者にシェアする目的で講演している。「IaaSからPaaSへ移行するというのは世の中のトレンドの逆を行くように見えるかもしれない。以前はPaaSではファイアウォールを超えられなかったので、B2Bのサービスを提供するのが難しかったが、いまではよほど特殊なことをしない限り大丈夫。またHeroku以外にもRubyが扱えるPaaSが増えてきた。その中にあってHerokuはIaaSを拡張したPaaSというイメージ。できることが非常に多い」とPaaSの現状を語る。

スタートアップがSaaSを顧客に提供しようとする場合、インフラ、プラットフォーム、ソフトウェアのすべてを自社で作りこむには資金的にかなりきびしくなる。そこでIaaSかPaaSかという議論が出てくるのだが、吉田氏は「最近のPaaSはスケールするものが多く、小規模なサービスでも扱いやすい。なによりPaaSであれば、スタートアップはやるべきことに集中できる」と強調する。スタートアップはやはり、クラウドでカバーできる部分は最大限に活用すべきなのだろう。ちなみにco-meetingが提供するダッシュボードサービス「CROWY」はGoogle App Engineで稼働しているが、「管理工数はほぼゼロ」とのこと。コストがかからないことを体感すると吉田氏。

 co-meetingは現在、ニフティクラウド、AWSを分散させたマルチクラウド構成を採っている。

 この構成にした最大の理由はリスク分散だ。co-meetingのようなB2Bサービスはセキュリティや信頼性が重要な指標になるため、リスク分散はサービス提供にあたって欠かせない要素となる。そのため何より避けたいのは、最近話題になることが多い“クラウドのロックイン状態”だ。

 今回のco-meetingでの検討によると、MongoDB(NoSQLデータベース)やRedis(インメモリKVS)を置くHerokuのデータセンターは北米リージョンにあるが、データ量の大きな画像コンテンツ等を国内の低価格なレンサバに置くなどの対策で、レイテンシはほとんど気にならないレベルに工夫次第で可能になるとの方策も提示された。「レイテンシに関しては、工夫次第で超えられる部分がある」と吉田氏は断言する。「セッションとデータの永続化は外に出したほうがいい。そうしないと引越しが難しく、クラウドのベンダーロックイン状態に陥りやすい。サービス基盤をいくつか混ぜることで運用リスクを減らし、ロックインからも解放される。ただし、あまりに混ぜすぎるとPaaSのメリットが下がり、情報収集のコストがかさむので注意が必要」(吉田氏)

 つづけてファーストサーバによるデータ消失事件を引き合いに出し、「クラウドのサービスレベル低下と言う人もいるが、クラウドを使うならサービスは止まる可能性があるという前提でいるべきだ。リスクをできるだけ減らしたいなら、自前での運用もある程度できるようにしておく必要がある。PaaSのメリットは運用をクラウド事業者に任せられることだが、いろいろなサービスを展開したいなら、インフラの知識は必ず求められる」とも語る。

 デモの最後、会場のスタートアップ関係者に向かって「スタートアップにとってPaaSはメリットが大きい。しかし、採用にあたっては十分な調査を行うこと。Herokuは実績が豊富で、アドオンも多く、自由度が高い。しかも無料枠でできることが多い非常に魅力的なプラットフォーム。Herokuを検討するなら、無料枠を思い切り使い込んでから有償版に移るといい」とアドバイス。クラウド間の移行を評価するというこの事例は、今後、多くのスタートアップにとっての貴重なノウハウとなるはずだ。

7月30日 13時30分追記:掲載当初、co-meetingのサービスがHerokuに移行することを前提としたスピーチであるかのように記載しておりましたが、吉田氏はスピーチの冒頭、「引っ越しすることを想定して調査した」と述べており、Herokuへの完全な移行ではありませんでした。関連する表現を改めるとともに、読者の皆さま並びに関係者の皆さまにお詫びして訂正いたします。

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