スタートアップは“ARC”で楽しく、速く、効率的に! - スタートアップ on Heroku Demo Day

五味明子
2012-07-26 13:02:00
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 「ARC」という言葉をご存知だろうか。Aは「Agile」、Rは「Ruby」、そしてCは「Cloud」をそれぞれ意味している。

 いま、西海岸を中心とするスタートアップ企業の間では、このARCによる迅速で無駄のないビジネスの立ち上げ、いわゆる「リーンスタートアップ(Lean Startup)」というビジネススタイルへの関心が高まっている。そして、このトレンドはここ日本のスタートアップにも確実に拡がりつつあるようだ。

 そしてARCのすべての要素を体現している企業が、Salesforce.comを親会社にもつPaaS事業者のHerokuだ。アジャイルな手法を駆使してクラウド上で開発、その上にRubyを乗せたプラットフォームを構築し、多くのスタートアップ企業にビジネスの基盤となる環境を提供している。

 7月17日、東京・赤坂で行われたサンブリッジ グローバルベンチャーズ主催によるイベント「スタートアップ on Heroku Demo Day!」では、ARCでビジネスチャンスの拡大を狙う多くの参加者が集まり、Herokuを利用したクラウドサービスの国内事例の発表に熱心に耳を傾けていた。

 本稿では事例発表の前に行われた「(Agile + Ruby) x Cloud = Like!」と題された2つのスピーチ——まつもとゆきひろ氏によるキーノートスピーチと、Herokuエバンジェリストの相澤歩氏によるプレゼンテーションの概要をお届けする。

Matz「スタートアップの横にはいつもRubyがある」

まつもとゆきひろ氏
まつもとゆきひろ氏

 最初に登壇したのは、ご存知Rubyの生みの親であるまつもとゆきひろ氏。数多くの肩書きをもつ同氏だが、今回は米Herokuのチーフアーキテクトとしてスピーチした。

 ちょうど1年前の2011年7月、Herokuはまつもと氏をチーフアーキテクトに迎えることを発表している。クラウドの勝ち組と称されるSalesforce.comがRubyを全面的に支援する姿勢を打ち出したニュースに、多くの開発者が強い衝撃を受けたことはまだ記憶に新しい。

 Herokuはスタートアップが利用しやすいプラットフォームとして知られているが、なぜほかの言語ではなくRubyへの支援を強化したのだろうか。まつもと氏は「Herokuが推進するアジャイルという手法とRubyは、ソフトウェアに対するアプローチが非常によく似ている。一時期、Smalltalkという言語にかぶれたことがあるが、Rubyもアジャイルも源流としてSmalltalkにちかしい部分が少なからずある」と分析する。また、Herokuを利用するスタートアップの開発者にもRubyは人気があるが、その理由として「既存の資産が足かせになるような企業と違い、スタートアップは身軽。過去の実績ではなく、未来の需要や変化を見据えたソフトウェア開発をするなら、その身軽な環境とRubyはよくマッチする」と言う。

 だが、Rubyがスタートアップの間で高い人気を誇るのは、それだけが理由ではないようだ。まつもと氏はRubyの重要な“資産”としてコミュニティの存在を挙げる。

 「コミュニティで開発した成果を取り入れてRubyは成長してきた。Rubyよりとんがった言語も枯れた言語もたくさんある。でもスタートアップにもっとも受け容れられている要素は、コミュニティの存在だと思う。コミュニティが開発のモチベーションとなり、新しい機能やアイデアを生み出す源泉となっている」と、オープンソースソフトウェア・コミュニティとしての活動の重要性を語る。支援を行っているHerokuおよびSalesforce.comも、まつもと氏やRubyコミュニティの意向を最大限尊重していくとしている。Salesforce.com最高経営責任者(CEO)のマーク・ベニオフ氏も「Rubyの進化、Rubyコミュニティの発展のための協力を惜しまない」と公言している。

 コミュニティが開発のモチベーションと語るまつもと氏だが、ソフトウェア開発者が新しいものを作るとき、いちばん大切なのがこのモチベーションだという。

「モチベーションは、他人が上げることができないもの。2つあるから1つあげましょう、というわけにはいかない。そして、つまらないことがあると簡単になくなってしまう。僕はつまらないこと、理不尽なことをしたくなかったから、自分でRubyを作り、OSSで開発を進めることで、モチベーションを維持してきた。人にはあげられないけど、弱めないようにすることはできる。それがモチベーション」(まつもと氏)

 1993年に産声をあげたRubyは来年、誕生20周年を迎える。スタートアップに愛される言語としてさらなる普及が期待されるが、まつもと氏はRubyを初めて公開したとき、いまのように世界を変える存在になるとは当然思っていなかった。「たまたまインターネットが普及する時期に巡りあわせたことは大きい。Windows 95が登場し、CGIが注目され、WebアプリケーションとRubyの相性の良さが知れ渡るようになった。Rubyで世界を変えたというより、好きで開発を続けていたら、世界のほうが勝手に変わっていったという感じ。決して狙ったわけでも計算したわけでもない」という。

 モチベーションにドリブンされるがままに開発を続けていたら、結果のほうがあとからついてきたというべきか。だが、たとえ生みの親が意図しなかったにせよ、Rubyという宝石がWebの世界に誕生した偶然を世のスタートアップが利用しない手はない。

 「Rubyはスタートアップが目標に近づくためにすごく有効なツール。“踏み台”としてどうぞご自由にお使いください。皆さんの未来を作る手伝いをRubyができるのなら、開発者としてこんなに嬉しいことはない」とスピーチを締めくくったまつもと氏。いまも未来も、スタートアップの横にはきっとRubyがある。

相澤氏「すぐれた開発者の時間を無駄にしないサービス、それがHeroku」

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