クラウドコンピューティング:ITの新しいチャンスと課題

文:Dion Hinchcliffe 翻訳校正:石橋啓一郎
2009-03-10 08:00:00
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 これは、クラウドコンピューティングとは実際には何なのかという、別の議論を引き起こす。というのも、今ではネットワーク上で動くものには、なんでもこのラベルが付けられているように見えるからだ。クラウドコンピューティングとは、アプリケーションコードのウェブホスティングサービスだろうか?オンデマンドサービスのソフトウェアプラットフォームだろうか?SaaSのアプリケーションはクラウドコンピューティングと言えるだろうか?これらの問いに対する答えは、すべて条件付きのイエスだ。適切な答えは、あらゆる種類のコンピューティング資源(CPU、ストレージ、アプリケーションなど)のアウトソーシングで、費用を共有する、商品化された公益事業モデルのサービスというところだろう。一般的に言って、実際には別の場所で提供されており、ユーザーが直接的にアクセスできるようなコンピューティングサービスのために請求書を受け取ったとしたら、何らかの形のクラウドコンピューティングを利用していると考えていいだろう。

 商品化された公益事業モデルという言い方をしたのは、クラウドコンピューティングプロバイダは(われわれが仕事で利用する他の公共サービスとは違い)独占ではなく、他のプロバイダと機能や価格の面で激しく競争しているからだ。これは近い将来、クラウドコンピューティングのCPUサイクルも、帯域も、アプリケーションへのログインも、極端に安価になり、大規模に日用品化することを意味している。この絶えず続く競争は、クラウドコンピューティングプラットフォームのコストを下げ、機能を上げる方向への継続的な圧力になる。このような圧力は、現在のIT組織内部では自然には起こらない。言い換えれば、多くの企業が自社で使う電力を発電したり、資金調達のために自前の金融機関を作ったりすることがないように、コンピューティングについても、視野が狭く、専門のプロバイダのように規模の経済の効果も得られず、イノベーションや効率の面でも劣る独自の機能を維持する理由は少なくなるということだ。

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 クラウドコンピューティング市場はまだ新しく、多くの選択肢がある。不可避的に自然淘汰が進み、勝ち組が明らかになるまでは、今後もこの傾向は強まるだろう。これは、クラウドコンピューティングの提供方法に支配的なモデルがまだ存在しないことを意味しており、このことによってすでに市場には興味深い分断が起こっている。一部のサービスは非常に汎用のものであり(AmazonのEC2がその例だ)、洗練されたオンデマンドホスティングサービス以上のものではない。一方で、提供側のプログラミングモデル、フレームワーク、ツール、管理システムを使う限り、ソフトウェアを作り出すために必要なものをほとんどすべて提供するものもある(Google App Engine)。ユーザー企業がどちらのモデルを選択するかは、今後のクラウドコンピューティングの活用方法に大きな影響を与える。そのため、多くの組織は複数のプロバイダを利用する可能性が高い。

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 間違ってはならないのは、多くの企業のIT担当役員は、現状では適切に企業の要求に応えるクラウドコンピューティングソリューションはほとんどないと考えているということだ。その多くは企業のニーズを満たす機能の一部を持っているものの、現在のところ、管理ツールからデータ同期戦略、セキュリティ監視に至るまでの企業のクラウドコンピューティングを利用する試みを完成させるには、抜けた穴をIT部門が埋める必要がある。従って、現状での賢い選択は、クラウドコンピューティングに関する基本的な能力を備えるようにし、業界が発達して落ち着くまでの間に、第三者によるクラウドサービスの賢い消費者になるということだ。

 以下に、このチャンスを生かし、今日のクラウドコンピューティングの問題に対処するために、IT部門が備えるべき能力について記す。

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