IT業界のバブル構造をブチ壊すのはクラウドコンピューティング

冨田秀継(編集部)
2009-02-04 21:19:02
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 1月24日に開催された「オープンソースカンファレンス2009 Sendai」に、サン・マイクロシステムズ 新規ビジネス開発本部 本部長 兼 情報セキュリティ統括責任者の中村彰二朗氏が登壇した。

 講演タイトルは「クラウドコンピューティングの行方とそれを支えるOSSの躍進」。クラウドコンピューティングをめぐる課題と、そのあるべき姿を概念的に披露するセッションで、クラウド環境内に配置されるオープンソースソフトウェアの重要性も語っている。

住基ネットを利用率で課金できたら――

 中村氏は講演の冒頭、「クラウドコンピューティングはこれまでのIT環境の考え方とは不連続だ。クラウドはIT環境のあり方を抜本的に改革する」と訴えた。この言葉は、クラウドコンピューティングが語られる際によく持ち出される「利用側の調達モデル」の変化――ソフトウェアは購入するのではなく、必要な時に使い、使った分だけ支払う――だけを指摘したものではない。IT業界の事業モデルもまた確実に変わるであろうという予言だ。

中村彰二朗氏 中村彰二朗氏

 例え話として中村氏が挙げたのは「住民基本台帳ネットワークシステム」(住基ネット)だ。利用が進まない住基ネットだが、これがクラウド環境で提供されていたらと考えてみよう。

 「使った分だけ払うモデル。(システムを)ピークデザインではなく、ゼロから利用できるデザインにする」と中村氏。そうすることで、コスト構造の大胆な改革が可能になる。「利用率で課金できるのであれば、相当節税できただろう」(中村氏)

 総務省の資料によれば、住基ネットの運用で、市区町村、都道府県、指定情報処理機関がシステムを維持および管理するコストは、年間約140億円だ。住基ネットのためにデータセンターを設置し、住基ネットのために人員を配置することをやめるのであれば……と考えたくもなる。

 ただし、現状で公共サービスがクラウドへ移行するのは時期尚早と断言できる。中村氏もクラウドコンピューティングの課題として、「複数の組織が共同で利用する時のセキュリティを担保する、トラステッド環境が必要になる」と語っている。そして、クラウドをセキュアに運用する環境は、なにも公共サービスだけが必要としているものではない。多くの企業、個人が必要とする環境だ。

使われないシステムに恩恵を受けるIT業界

 そのほかにも課題はある。事業構造の問題だ。

 住基カードの交付枚数は2008年3月31日時点で約234万枚。住基ネットに加入する自治体などの、人口あたりの利用率は低いといえる。

 利用が進まないシステムを嘆いたり、笑ってばかりもいられない。住基ネットはシステム開発の結果生まれた。つまり、IT業界はこの事業で恩恵を受けたのだ。

 今後、クラウド環境が公共サービスの利用に耐えうるレベルに達した時、IT業界はピークデザインを放棄できるだろうか。より安価で、より簡単にサービスやシステムを組み立てられる開発モデルを採用できるのだろうか。

 サン・マイクロシステムズのサーバを購入し、どこかのベンダーのデータベースを買って、さらにそれはCPU1個につきいくらで――と、そういうモデルをやめる世界がくるのであろうか。

 中村氏は「従来の構造を守りたい人たちからの、凄い抵抗があるだろう」と予言している。

IT業界のバブル構造

  • コメント(1件)
#1 anonymous   2010-01-06 15:38:48
クラウドはIT業界の提供する選択肢

A)クライアントが買い取り、運用する
B) ITベンダーがすべてを請け負う

の2つまたは その亜流から選択するしかなかった時代から
げんざい「クラウド」とよばれる様々な提供形態から、クライアントは、「賢く」選択することができるようになる。

オープンソースは現状 上記の2つの亜流しかないが、 プラットフォーム提供型のクラウドサービスとオープンソースが合体したとき新しい選択肢になりますね。
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