アリババが立ち上げた「菜烏網絡」が握る物流における挑戦

山谷剛史
2017-05-09 12:12:00
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 中国のECの巨人「阿里巴巴(アリババ)」。同社はオンラインショップサイトの「天猫(Tmall)」や「淘宝網(タオバオ)」ほか、電子マネーの「支付宝(アリペイ)」をリリースしている。

 11月11日に天猫を舞台にオンラインショッピング祭り「双十一」を開催し、世界的な販売記録を年々更新した。淘宝網のエスクローサービスからスタートした支付宝は、リアルショップで使われる電子マネーとなった。また支付宝の電子マネーを資金運用する投資信託「余額宝」はリリースされるや人気が爆発し、運用金額は世界一となった。同社は近年中国の生活を変えた企業の1つといっていいだろう。

 あまり日本では報じられていないが、アリババは2013年に広東省深センで立ち上げた「菜烏網絡(CAINIAO)」という会社により、ITによる物流革命を起こしている。菜烏網絡は物流企業だが、自社でトラックを用意するわけではない。中国で主要の物流企業である順豊、円通、申通などの宅配大手などと、「中国智能物流骨幹網(中国スマート物流骨幹ネットワーク、略称CSN)」という物流システムネットワークを構築し、運用する企業だ。

 菜烏網絡は、中国国内の宅配会社、さらには日本通運やアメリカ合衆国郵便公社(USPS)など中国国外企業や組織と連携し、リアルタイムで加入企業のトラックや倉庫の稼働状況を把握し、自動で担当を振り分ける。ビッグデータや物流クラウドプラットフォームを導入するほか、有力15企業との間で送り状の電子化を行うなど、ITによる効率化を進めている。

 これら積み重ねにより、クラウドやビッグデータなどを使いこなすことにより、オンラインショッピングでの購入商品の配送で1つの宅配会社にタスクが集中するという無駄をなくし、ひいてはコスト削減や配送時間の短縮を実現する。

 特に、ピークである双十一でその真価は発揮され、宅配物の停滞を減らし効率的な配送が実現される。また日通との提携での発表では、菜烏網絡との提携による物流のスマート化によって日本からの越境ECの配送費が3割抑えられるとしている。

 ビッグデータやクラウドプラットフォームを導入した菜烏網絡は、それで終わることなく新しい試みを発表している。最近では菜烏網絡の拠点となる店舗「菜鳥駅」を中国全土にオープン。学校に300店舗、住宅地の敷地に450店舗と、その数は中国に展開する数としては少ないが、そこで新しいサービスが続々と導入されている。

 菜鳥駅とAIベンダーの「Face++」が提携し、上海市、浙江省、江蘇省の60余りの大学キャンパス内の菜鳥駅内スマートロッカーに顔認識を導入し、顔認識で荷物の受け取りができるようになった。企業提携では、菜烏物流とロレアルが提携し、ロレアル商品を注文したらすぐに菜鳥物流の店舗で受け取ることができるようになった。注文後、即宅急便の店舗ですぐに受け取れるのはこれまでになかった。

 また菜鳥駅では、中国のオンラインショッピングで最も取引数が多いといわれるアパレル製品対策として、試着室を用意した。試着してサイズが合わなければその場で返品が可能となった。また段ボール箱を開けた後、店頭で段ボールを回収する業務も開始するなど、CO2削減や、エコへの取り組みも発表している。

 物流業者でありながら、ITニュースがしばしば報じられている菜烏網絡もまた、中国のIT事情を知る上でキーとなる企業なのだ。

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