MSの「会話のプラットフォーム」が描く未来、開発者の未来

阿久津良和
2016-05-25 21:52:00
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 日本マイクロソフトは5月24日と25日の2日間にわたり、開発者向けカンファレンス「de:code 2016」を開催した。25日、de:code 2016の登壇者である米Microsoft Corporate Vice President(CVP) Chief EvangelistのSteve Guggenheimer氏と、日本マイクロソフト 執行役 デベロッパー エバンジェリズム統括本部長 伊藤かつら氏によるラウンドテーブルを設け、ソフトウェア開発者への取り組みやOSS(オープンソースソフトウェア)コミュニティとのコラボレーションについて説明した。

 Guggenheimer氏は基調講演で述べたプレゼンテーションの内容に重ねて、「Conversation as a Ploatform」の重要性を強調した。"会話をプラットフォーム化"するMicrosoftは、「りんな」に代表されるソーシャルBOTで情報収集し、言葉のやり取りを通じながら、さまざまな情報提供を実現しようとしている。

 基調講演の記事でも紹介したように、「会話をコンピュータのフロントエンドに置き換えることで、新しいコミュニケーションの形が生まれる」(Guggenheimer氏)という世界が、同社が目指す世界だ。


Microsoft CVP Chief Evangelist Steve Guggenheimer氏

 だが、今日明日世界が変わるわけではない。「コグニティブサービスやソーシャルBOT、機械学習などさまざまな技術を組み合わせながら実験を繰り返していく。すべての準備が整っている段階ではない」(Guggenheimer氏)とし、今がその黎明期だと説明する。

 だからこそソフトウェア開発者に門戸を開いて、Microsoft Researchが長年研究してきた各種研究結果をコグニティブサービスAPIとして提供を始めたのだろう。

 スタートアップ企業など多くのソフトウェア開発者と顔を合わせる機会が多い伊藤氏は、コグニティブサービスの展開は時期尚早と述べつつも、「技術を掘り下げていくと必ずMicrosoft Researchの論文に出会うと言っていただけている」(伊藤氏)と語った。

 今回の説明で感じたのは、Microsoftがプラットフォーム企業としての立ち位置を維持するという決意である。国によって異なる文化や道徳性があり、ビッグデータから相関関係を見出した仮説で、推論や意思決定を行うコグニティブサービスは国によってフィルターを変えなければならない。この点についてGuggenheimer氏は、「各国の大衆と(コグニティブサービスが)触れることで学習し、成長していく。われわれはインフラとツールを用意し、弾力性を持った相互作用の場面を増やすのが役割だと考えている。自分たちが使う場面で快適なルールを選べばよい」と回答している。


日本マイクロソフト 執行役 デベロッパー エバンジェリズム統括本部長 伊藤かつら氏

 伊藤氏は日本のエバンジェリストを束ねる立場、Guggenheimer氏はチーフエバンジェリストである。話のテーマは自然とソフトウェア開発者に移った。まず、モバイルアプリ開発ツール「Xamarin」無償提供の最大のメリットについて、「開発者がデバイスやツールを選ばずに済むのが大きい。開発者の皆さんと話していると必ず出てくる話題が、クロスプラットフォームを維持するコード管理の負担だ。開発者が使い慣れているツールをそのまま使ってもらう」(Guggenheimer氏)

 MicrosoftがOSSコミュニティにコミットする理由にも言及。「世界を取り巻く状況はエンドユーザーもビジネスユーザーもすべてソフトウェアが握っている。企業間の差別化もソフトウェア技術だ。だからこそ開発者の力を引き出すツールや環境を提供するのが大事」とGuggenheimer氏。

 日本国内の開発者については、「国内のソフトウェア産業が近代化していない。開発者には国境を越えて世界へ出てほしい」(Guggenheimer氏)とアドバイス。伊藤氏も、「日本の開発者は年を重ねると窓際に追いやられる傾向があった。終身雇用制の問題として開発者自身もスキルアップを目指してこなかった部分はあるものの、つけが回ってきた」と現状を分析する。

 伊藤氏は現場のエバンジェリストの上司として米国人が就任した件を引用し、それまで英語を使わなかった日本のエバンジェリストも、「C#などのコードを理解し、中学校レベルの英語があれば技術者同士は会話ができる」(伊藤氏)と説明。所属する会社はもちろん、開発者自身が内にこもらずに、コミュニティへ参加して自分の能力を確認しつつ、次のビジネスにつなげるべきだと指摘。既に終身雇用制は崩壊しつつあるなか、これからのソフトウェア開発者は「腕一本で世界と向かい合ってほしい」(伊藤氏)とエールを送った。

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