デザイナーはデザイン、開発者はプログラムだけという時代は終わった―アドビ イルグ社長

大野晋一(編集部) 杉山貴章(オングス)
2007-12-27 10:00:00
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 非常に鋭い指摘ですね。現在でもクリエイターの製作したものをエンタープライズ用の開発ツール―EclipseベースのFlex開発環境―に渡すことができます。しかしクリエイターから見ると複雑すぎるということで、あまり評判が良くありません。

 そこでアドビは「Thermo」というコード名で呼ばれるツールの開発に取りかかっています。これはFlexをベースとした新しい開発環境ですが、最大の特徴はビジュアルな環境でUIの"コーディング"を行うことができるという点です。例えばイベントの発生や、その際に行うアクションの定義などは、従来ならばスクリプト言語で行わなければならなかった部分です。Thermoではそれをグラフィカルな画面で定義することができます。

 また、Photoshopなどで作成された成果物を、ドラッグ&ドロップの操作だけでFlexアプリケーションに取り込むことも可能です。これによってクリエイターはプログラミングができなくてもワークフローの開発に関与することができるようになります。これがマルチメディアとエンタープライズの間をつなぐツールになるでしょう。

―日本市場でThermoを最初に使い始めるのは誰だと思いますか。デザイナー側からのアプローチになるでしょうか。それともエンタープライズ側からのアプローチでしょうか。

 私個人の考えですが、代理店から仕事を請け負っているような小さな会社のデザイナーが使うことでより大きな効果が得られると思っています。非常に予算が限られた状況で、より責任範囲の大きな仕事ができるようになるからです。日本におけるThermoは非常にパワフルなものになっていくと思います。

 ただ、ThermoはSIerの仕事を大きく変えるようなものではありません。Thermoはクリエイターとデベロッパーの関係を変え、融合させることになります。しかしお互いの職分を侵すようなものではないので、依然としてデザインはクリエイターの仕事であり、基幹系はSIerの仕事であり続けるでしょう。

大切なのは、継続的に知識を積み重ねていくこと

―今ギャレットさんがおしゃったような世界というのは今の日本の市場にすぐに受け入れられるようなものなのでしょうか。それともある程度の変革が必要なものなのでしょうか。

順を追って説明すると、まず5~6年前には人々の興味の対象はインフラ、特にミドルウェアに集中していました。それが現在ではそのインフラが完成し、アプリケーションに意識が向けられるようになっています。それによってPCからモバイルへの移行、ブラウザからクライアントへの移行といったものがどんどん続いていくと思います。

 このように大きな変化があるときには、必ず同じことを質問されるんです。新しいテクノロジーをどうやって普及させるのか、何を準備したらいいのか、トレーニングはどうするのか、どうモチベーションを上げていくのかといったことです。

 我々にとっての大きな課題は、これらの質問に対する回答をマーケットに正しく理解してもらうということです。これは確かに簡単なことではありませんが、数年前に比べれば吸引力はより強くなっていると感じています。特にアドビは統合されたプラットフォームを提供する会社なので、マーケットに対して積極的に情報を提供し、強力にサポートしていくことができるはずです。

―具体的にはどのような呼び掛けやサポートを行っていく予定ですか。

特に積極的に考えているのは、アドビの技術をもっと身近に利用できるようにしていくということです。例えば2007年には、Flex SDKの一部をオープンソースにした他、Flex Builderの価格の見直しを行いました。新しい技術に触れ、どのようにRIAを作っていけばいいのかを実感してもらうことが重要だと考えたからです。

―逆に、クリエイターやデベロッパーとしてはどのような準備をしていけばいいでしょうか。

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