彼らはなぜコミュニティ活動に力を入れるのか?──モチベーションの源についてグローバルJavaコミュニティのリーダーたちが語った

Oracle Java & Developers編集部
2017-06-26 15:20:00
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グローバルなJavaコミュニティで活躍する各国の開発者たちは、どのようなマインドでコミュニティ活動に取り組んでいるのだろうか? 国内外のJavaコミュニティのリーダーらが語り合った。

国内外のJavaコミュニティ・リーダー8名が参加してパネル・ディスカッションを実施

 Javaがマイクロサービス/クラウド時代にもメインストリームの開発技術であり続けるために大きく発展しようとしている現在、Java開発者コミュニティも国内外で大きく活性化している。読者の中にも、仕事を終えた後や週末の時間を使ってオラクルや各種コミュニティが主催する勉強会などに参加している方が多いだろう。

 そうした開発者の中には、日本と同様、もしくはそれ以上にコミュニティが活発な海外の開発者らがどのような活動をしているのかが気になる方もおられるかもしれない。日本オラクルが2017年5月に開催したJava開発者向けカンファレンス「Java Day Tokyo 2017」では、これをテーマにしたスペシャル・セッションとして、国内外のJavaコミュニティから8名のリーダーが参加してパネル・ディスカッションが実施された。ここでは、同セッションで交わされた議論の中から、編集部が特に興味深いと感じた話題をピックアップして紹介する。

 本セッションにパネリストとして登壇したのは、次の8名だ。いずれも世界各地のJavaコミュニティで中心的な役割を果たしている人物である。モデレーターは日本オラクルの伊藤敬氏が務めた。

【パネル・ディスカッション登壇者(写真左より。括弧内はTwitterアカウント】

  • イクシェル・ルイーズ氏(@ixchelruiz):メキシコ出身で現在はスイスの企業で働くソフトウェア開発者。後述のアンドレス氏とは夫婦
  • 阪田浩一氏(@jyukutyo)関西Javaエンジニアの会 会長。通称「じゅくちょー」
  • カーク・ペッパーダイン氏(@kcpeppe):カナダ出身で現在はハンガリー在住のJava Champion。特にJavaのパフォーマンス・チューニングの分野に造詣が深い。Java Day Tokyo 2017でG1GCに関する技術セッションで講師を務めた
  • 谷本心氏(@cero_t):関西Javaエンジニアの会の創設メンバーであり、現在は日本Javaユーザーグループ(JJUG)の幹事を務める
  • セバスチャン・ダシュナー氏(@DaschnerS):ドイツ出身のJava Champion。フリーランスでJavaによるシステム開発やコンサルティングなどを行い、JCP(Java Community Process)のメンバーとしても活動している
  • 横田紋奈氏(@ihcomega)Java女子部の部長であり、現在はJJUG幹事も務める
  • アンドレス・アルミレイ氏(@aalmiray):メキシコ出身のJava Champion。JSR 377(Desktop|Embedded Application API)のスペック・リードを務める。Hackergarten主宰者の一人
  • スティーブン・チン氏(@steveonjava):米国オラクルのOTN(Oracle Technology Network)グループでディレクターを務める。元Java Champion

やはりグローバル・コミュニティの課題は“言語の壁”。それを乗り越えて海外に向けた情報発信を

 ディスカッションで最初のテーマとして取り上げられたのはコミュニティ活動だ。モデレーターの伊藤氏から、国の垣根を超えたグローバルなコミュニティ活動について次のような質問が投げかけられた。

伊藤氏 「私たち日本人の多くは、国境をまたいだコミュニティ活動についての意識をまだあまり持っていません。海外の皆さんは、そうしたコミュニティにどう関与されているのでしょうか?」


スティーブン・チン氏

チン氏 「私は世界中のJUG(Javaユーザー・グループ)を見ていますが、各国のさまざまな地域にJava開発者のグループがあり、それぞれの地域の皆さんがそこに関与しています。そして、その中からJava Championのような存在が生まれるのです。Virtual JUGのような地域を固定しないグループもあり、自分が住む地域にJUGがない場合でも、そうしたグローバルなグループに参加することができます。グローバルなコミュニティの大きな課題の1つに“言語の壁”があり、それを乗り越える橋渡しとなる存在が必要になります。私たちも、そのような橋渡しとなるべく活動していきたいと思っています」

 チン氏のこの発言をきっかけに、Java Day Tokyo 2017に先立って日本で開催された「JOnsen」に話題が移った。


セバスチャン・ダシュナー氏

ダシュナー氏 「その“橋渡し”の1つとして先日、開催したのがJOnsenというイベントです。JOnsenでは、日本のコミュニティ・メンバーとともに過ごす貴重な機会を得ることができ、 彼らも積極的にスピーチに参加してくれました。私の出身地であるドイツの開発者も国外に向けた情報発信はあまり行わないのですが、本当はもっと積極的に外に出て行くべきだと思っています。いろいろな情報を英語で発信し、世界の流れに関与していかなければなりません。日本の皆さんにも、そうした活動を積極的に行っていただきたいですね」

 JOnsenは5月12日から14日にかけて“アンカンファレンス”として催されたイベントだ。各国のJava ChampionをはじめとするJavaのエキスパートが静岡県下田市の温泉地に集まり、リラックスした雰囲気の中でJavaに関する情報交換や議論が行われたという。

“クリティカルマス”を超えると、さまざまなチャンスが訪れる

 日本のエンジニアにとって、海外のエンジニアの働き方も関心のあるテーマだろう。まず伊藤氏が、フリーランスとして活動するダシュナー氏に次のような質問を投げかけた。

伊藤氏 「セバスチャン(ダシュナー氏)は独立した個人として仕事をしていますよね。仕事とコミュニティ活動をこなし、さらに各国で開催されるカンファレンスにも積極的に参加していまが、これらのバランスを取るのは大変でしょう?」

ダシュナー氏 「確かに、私が企業に所属していたとしたら、海外のカンファレンスに頻繁に参加するのは難しいでしょう。私はそうした活動が好きだし、働くことへのモチベーションも高まります。今はフリーランスとして、クライアントのための仕事もやりながら、企業の開発プロジェクトやコンサルティングなどの仕事も行っています。一方で個人の活動として、コミュニティ活動のほかにブログやビデオ配信、ニュース・レターの配信などもやっています。そうした情報発信が仕事につながることもあるんですよ」

 コミュニティ活動を続けていくうえで、本業との両立は極めて重要なテーマだが、コミュニティ活動に精力的に参加することが仕事の面でも有利に働くことがあるようだ。


谷本心氏

谷本氏 「私も最近、コミュニティ活動をしていると、そのつながりから仕事の幅が広がるケースがあるということを強く実感しています。コンサルティングや教育の依頼をいただくことが増えましたし、コミュニティ活動を通して私の名前が広く知られるようになることで、お客さんが安心して私に頼めるようになるというメリットもあるようです」


カーク・ペッパーダイン氏

ペッパーダイン氏 「表に出る活動をしていることで、熱意だけでなく、知識や技術などを目に見えるかたちで示せるため、『この人は、自分たちが抱えている問題を解決してくれる人だ』という信頼を得やすくなります。そうやって活発に活動することで“クリティカルマス”の段階にたどり着くと、セバスチャンのように仕事と自分の活動のバランスが取れるようになります。世界的に見ても、エンジニアの働き方は変わってきています。クリティカルマスに到達できれば、いろいろな地域を旅しながら、さまざまな人と出会い、いろいろな話をさせてもらう機会が得られます。私のようなエンジニアが、東ハンガリーの小さな町に住みながら、日本の皆さんの前でこうして話をする機会も得られるわけです」


アンドレス・アルミレイ氏

アルミレイ氏 「オープンソース・プロダクト(OSS)についても同じことが言えますね。私が初めてOSSの活動に参加したのはJythonの小さなプロジェクトでしたが、当時はまだメキシコにいて、地球の反対側の人たちが始めたプロジェクトに貢献する立場でした。OSSのおかげで、自分には世界のどこかで必要とされている技術があるんだと知ることができましたし、その結果、今はこうして日本の皆さんの前でお話することができているわけです」

 クリティカルマスとは、ある商品やサービスの普及率が一気に跳ね上がる分岐点のことを指すマーケティング用語だ。個人の知識や技術力を商品として考えた場合、コミュニティ活動に積極的に参加して発信を続けていくことで、いつかクリティカルマスに到達できるというわけである。エンジニアがコミュニティや個人で活動していく際には、クリティカルマスへの到達を目標の1つとして考えられるかもしれない。