皆がお世話になっている“技術メモ三銃士”に聞いた! なぜ始めたの? 長く続けるコツ、そして書くことのメリットは?

Oracle Java & Developers編集部
2017-06-22 13:00:00
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新しい技術やプロダクトの使い方を調べる際、先達者がネットで公開している“技術メモ”を参考にしている方は多いだろう。人気の技術メモ・サイトの筆者らに、執筆の理由やメリットを聞いた。

あの技術メモの筆者らが、それぞれのエンジニア道を語った

 読者がシステム開発を行う中で、最新の技術情報を得たり、ちょっとした問題を解決したりするために、検索サイトでヒットした個人のブログやWebサイトの情報を参考にすることは多いだろう。特に日本語による情報が少ない新技術の解説や、それを実際に試用した結果をわかりやすくまとめた個人による“技術メモ”は貴重な情報源だ。

 日本オラクルが2017年5月に開催した「Java Day Tokyo 2017」におけるセッション「緊急開催! Java技術メモ三銃士が語るエンジニア道」では、Javaに関する話題を扱う3つの著名な技術メモの筆者が招かれ、技術メモを始めたきっかけや、その執筆スタイルに関する質問に答えた。

 今回セッションに登壇した“三銃士”は、次の3名だ(括弧内はTwitterアカウント)。

 はてなダイアリーで「CLOVER」を執筆するかずひら氏は、都内のSIerで主に基盤の整備や開発にかかわる仕事を行っている。CLOVERは2011年から執筆しているが、仕事で直接扱わないものも含めて、自分の興味や関心のある技術を中心に扱っているという。業務でJava開発に携わっていることもあり、Javaに関する話題を中心に、Scala、GroovyなどのJVM言語、Java EEやインメモリ・データグリッド、Springなどの話題を多く取り上げている。

 関西から参加したopengl-8080氏は、開発者向けの技術情報共有サービス「Qiita」で2013年より記事を公開。普段はSIerで製造業向け基幹システムの開発/保守開発を行っている。業務で利用しているのはStrutsだが、記事は趣味で追いかけているJava EEやSpringに関するものが多いという。そのほかにも、AngularJSをはじめとするJavaScriptフレームワークなどを扱っており、読者の反応も大きいという。

 「ひしだまのコンピュータ関連技術メモ」を執筆するひしだま氏は、以前はSIerのシステム・エンジニアだったが、現在は大規模分散バッチ処理フレームワーク「Asakusa Framework」にかかわる仕事に携わっているという。

 なお、進行役は日本オラクルの伊藤智博氏(@chiroito)が務めた。

彼らは、なぜ技術メモを書き始めたのか?

 セッションは、Twitter上で寄せられた質問に対して、三銃士が順に答えるかたちで進められた。最初の質問は「なぜ技術メモを書こうと思ったのか?」だが、3氏に共通しているのは、「自分のための備忘録」を作ることが大きなきっかけとなっている点だ。

 「以前に金魚本※1でJava EEを勉強したことがありました。当時は勉強しただけで終わらせていたのですが、その後1年ほど経ってから改めて使ってみようと思ったら、勉強したことを全て忘れてしまっていたんですね。そのことがとてもショックで、一度勉強したことは忘れてしまっても思い出せるようにメモを残しておこうと始めたのが最初です」(opengl-8080氏)

※1 『Beginning Java EE 6~GlassFish 3で始めるエンタープライズJava』(翔泳社刊)のこと。表紙のイラストが金魚であることから“金魚本”と呼ばれている。

 「僕の場合、それまでやってきた勉強の方法を変えたかったというのがあります。以前は書籍やWebサイトを参考にしながら、書かれている情報を写してコードを書くというスタイルでやっていたのですが、これだと勉強を続けていくモチベーションを保てなかったんです。

 そこで、勉強した内容についてブログを書くということを始めたのですが、学んだことを言葉にするためには、自分がやったことの意味と、そこから何を学んだのかを理解できていなければなりません。そうすると、なかなか書けないんですね。それまで、自分が書籍やWebサイトの内容を丸写しするだけで理解した気になっていたことを痛感しました。今では、ブログを書くことは、自分が勉強したこと、理解したことを見直すための良い習慣になっています」(かずひら氏)

 今日のようなブログ・サービスが登場するずっと以前、インターネットの黎明期より「ホームページ」としてWebサイトを作っていたひしだま氏が技術メモを始めたきっかけは「人に言われたから」だそうだ。

 「作り始めたのは大学時代で、当時はインターネット検索という言葉もあまり一般的ではありませんでした。そんなときに技術系の情報サイトを探していたら、知人から『そんなものはないから自分で作れ』と言われたのがきっかけです。その後、仕事をするようになってから、備忘録として紙のメモをとるようになったのですが、紙のノートは持ち歩くのが大変だし、検索も難しいですよね。それなら、インターネット上に書いておけば、どこからでも見られて便利じゃないかということで公開サイトに書くようになったんです」(ひしだま氏)

「転職のきっかけに」、「英語が苦手じゃなくなった」、「表彰された」──技術メモをやっていてよかったこと

 ひしだま氏は、技術メモを書くようになったことが、エンジニアとしてのキャリア形成に大きなプラスになったと打ち明ける。

 「今の会社には、技術メモがきっかけで転職しました。Asakusa Frameworkが出たとき、関連する記事を沢山書いたのですが、それを読んだ人が『うちに来ないか』と声をかけてくれたんです。技術メモを書いていなかったら、今の会社には入っていなかったでしょうし、その点ではやっていてよかったと思っています」(ひしだま氏)

 opengl-8080氏、かずひら氏も、副次的なメリットが多いと話す。

 「関西方面で開催される勉強会によく顔を出すのですが、技術メモを書いていることで知り合いが増えましたね。そのほかに、英語に対する苦手意識が薄れたというのがあります。新しいライブラリやフレームワークについて調べるときには、まず公式のユーザー・ガイドやリファレンスから目を通すのですが、その過程で英語を読み込むことになります。それを繰り返しているうちに、段々と苦手意識がなくなってきました。以前はJSRの仕様書などは読もうとすら思わなかったのですが、今では『とりあえずJSRの仕様書に目を通してみるか』と思える程度になりました」(opengl-8080氏)

 「自分が興味を持ったライブラリやフレームワークについて調べて、技術メモを書くということを続ける中で、その実装がどうなっているのかを知るためにソース・コードを読むのが苦ではなくなってきました。また、僕の場合はニッチなところを追いかけているので、日本語の情報がないことがほとんどです。そのため、自分で英語のドキュメントやソース・コードを読んで頑張るしかないことが多いのですが、それらに関しては力が付いたと思います。あと、技術メモを書いていたことで、今回のように登壇の機会をいただけたり、先日は技術メモの内容に関して海外の企業から表彰していただいたりといったこともあり、有り難く思っています」(かずひら氏)

 一方で、3氏とも「やらなければよかった」と思うことはほとんどないと話す。調べて記事にしたフレームワークを、その後、使わなくなるようなことはよくあるものの、「後からよりよいものが出てきたので、それに乗り換えたというケースが多く、その判断のよりどころになったという意味では、調べて書いたことは無駄になっていません」(opengl-8080氏)という。