“持たざる設備&IT”で需要増大に応える──三菱重工航空エンジンが「Oracle Java Cloud Service」の上で加速するサプライヤーとの協業推進

Oracle Java & Developers編集部
2016-10-26 18:00:00
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過大な生産設備を抱えることなく、サプライヤーとの協業により増大する需要への対応に努める三菱重工航空エンジン。同社は、この協業促進の要となるポータルの運用基盤に「Oracle Java Cloud Service」を選んだ。

世界的な需要増大でビジネスが急成長しても、生産設備の増強に直結しない


三菱重工航空エンジン 経営管理部 総務・管理グループ システムチーム 主席チーム統括の吉野一広氏

 “不具合ゼロ”、“設備ダウンタイムゼロ”のスマート・ファクトリーを実現すべく、先進ITの導入に旺盛に取り組む三菱重工航空エンジン。生産設備もITも、全てを自社で持つのではなく、社外の優れたリソースを活用することで、固定費を削減しながらビジネス環境の変化への対応力向上に努める同社は、航空機部品の供給元となるサプライヤー各社との間で納期/不具合管理を行うためのポータル・サイトを「Oracle Java Cloud Service」で構築中だ。プロジェクトを主導した同社 経営管理部 総務・管理グループ システムチーム 主席チーム統括の吉野一広氏に聞いた。

 三菱重工航空エンジンは、三菱重工業(以下、三菱重工)で航空エンジンの部品製造や修理を行う部門から、2014年10月に民間向け航空エンジンの部品製造と修理(オーバーホール)を行う組織が分社化して誕生した。民間航空機への需要増大の波に乗り、よりスリムで俊敏性の高い組織によってビジネス環境の変化への迅速な対応と一層のビジネス拡大を図ることが狙いだ。現在は2つの事業を柱としており、その1つである航空エンジンのコンポーネント(特定機能を実現する部品の集合体)および部品の受託生産では、海外の主要航空エンジンメーカーを顧客にビジネスを展開する。また、もう1つの柱である航空エンジンのオーバーホール事業では、主に国内航空会社を顧客としている。

 設立以来、世界的な航空輸送量の拡大や機体リプレース需要の増大を追い風に、同社のビジネスは右肩上がりで成長してきた。通常なら当然、これを好機と生産能力の増強に努めるところだが、そうはいかない業界事情があると吉野氏は明かす。

 「航空機業界では、例えば2001年の米国同時多発テロ事件のような突発的かつ重大な事件/事故、あるいは航空燃料の高騰に伴う燃料費の値上げなど、予測の困難な外部的要因により急激な需要縮退が起きることを常に考慮しなければなりません。航空会社の機体調達計画から数年先までの需要はある程度見通せるものの、その先の市場動向を正確に予測するのは難しいのです。そのため、たとえ現在が好況であっても、それに乗じた大幅な設備投資には慎重にならざるをえません」(吉野氏)

 とは言え、増え続ける需要には的確に対応していきたい。また、部品納期などの要件は航空会社の事情で頻繁に変わるため、それに応える迅速性も重要だ。そして当然、製品の品質は常に高く保たなければならない。

ITを駆使した業務効率化でBPMとサプライヤー向けポータルを推進

 これらの事情も背景に、同社は設立以来、ある方針の下にさまざまな検討を進めてきた。それは「IoTの活用も視野に入れた、ITを駆使した業務効率化」だ。これを通して同社が究極的に目指しているのが、“不具合ゼロ”、“設備ダウンタイムゼロ”のスマート・ファクトリーの実現である。

 そのための具体的な取り組みも進めている。1つは業務効率化を図るための「BPM(Business Process Management)の推進」、もう1つはサプライヤーとの間で効率的な情報共有を図る「サプライヤー向けポータル」の構築だ。

 このうち、BPM推進の狙いを、吉野氏は次のように説明する。

 「これまでは人に依存して業務を回していたため、担当者の異動などによって業務を効率的に遂行するための知識やノウハウが失われることがあり、そこで大きなロスが生じていました。また、従来はシステムを構築/修正する際、その時点の業務の流れをシステムの中に作り込まなければなりませんでした。つまり、システムが特定時点の業務フローに依存した作りになっていたのです。

 BPM化すれば、業務フローが人に依存している問題を解消できるとともに、業務フロー依存な作り込みを排除することで、システムをもっとシンプルに作れるようになると考えました」(吉野氏)

 一方、サプライヤー向けポータルの構築には、優れたサプライヤーとの協業を促進しながら、納入される部品の品質を高く保つという目的がある。

 「従来、部品の納期や不具合などサプライヤーとの取り引きに関する情報は、必要になった際に担当者が資料を集めて手作業でレポートを作り、社内やサプライヤーの関係者にメールや電話で連絡していましたが、これには多くの手間と時間がかかります。それらの情報をいつでもポータルで閲覧できるようにすることで、情報伝達のスピードを上げ、関係者がいつでも必要な情報を得られるようにしたいと考えたのです」(吉野氏)

Oracle Java Cloud Serviceでポータルを構築し、サプライヤーとのコミュニケーションを効率化

 取り組みはBPMからスタートした。そこに用いるBPM製品の選定では、いずれパブリック・クラウドを活用する時が来ることを想定し、クラウド・サービスも含めた提案を吟味。数社のプランを検討するが、接戦の末に選ばれたのは、「Oracle BPM Suite」をはじめとするミドルウェア製品とパブリック・クラウド・サービス「Oracle Java Cloud Service」、「Oracle Database Cloud Service」などのオラクル製品/サービスであった。

 「最終的に自由度の高さや価格を考慮し、Oracle BPM SuiteやOracle Java Cloud Serviceを含むオラクルの提案を採用しました」(吉野氏)

 製品を決めると、同社は2015年4月に導入を開始する。まずパイロット・プロジェクトとして内部監査のフローに適用しながらBPM導入の手順やプログラムの作り方などを確認。2016年4月からは本格的な導入に着手し、社内の他の業務やサプライチェーン管理、設計変更管理など、基幹業務の周辺部分にまで適用領域を広げつつある。


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 なお、同社は三菱重工時代から利用してきた会計や人事、販売管理などの基幹システムのリプレースも検討しており、BPMはそれも見据えて取り組んでいる。「リプレース後の基幹システムでカバーできない当社独自の業務フローなどをOracle BPM Suiteで補完しながら、業務全体を効率的に電子化していきたいと考えています」と吉野氏は話す。

 一方、BPM導入への着手から半年後の2015年10月、「いずれ必要になる」と契約したOracle Java Cloud Serviceを活用する機会が訪れる。目的は、先述のサプライヤー向けポータルの実現だ。これには、パブリック・クラウドとして提供される同サービスなら、外部サプライヤーとやり取りを行うポータルの運用基盤に最適という理由のほかに、同社固有のITインフラ事情があった。

 「当社のIT環境に関して、他社とは少し事情が異なる点を挙げるとすれば、ITインフラです。実は、事業所が三菱重工の敷地内に所在することもあり、ITインフラについても三菱重工が保有するものを借り受けて利用しているのです。サプライヤー向けポータルのためにITインフラに手を入れる場合、その作業を三菱重工に依頼することとなり、そこで時間と手間、コストがかかりますが、PaaSとして提供されるOracle Java Cloud Serviceならば、それらが不要になります」(吉野氏)

 サプライヤー向けポータルは現在、今年11月の第1弾リリースに向けて開発が進められている。第1弾はパイロット・プロジェクトの位置付けにあり、これを介して一部のサプライヤーに次の情報が提供される。

  • 部品発注への追随情報:発注への追随状況に関する情報を各社と共有する
  • オープンクレーム:納入された部品に不具合が見つかった際の通知と、不具合部品を返却する際の返品管理などを行う

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 公開を間近に控え、現在は開発作業が大詰めを迎えているが、リリース後はブラッシュアップを重ねながら、ポータル上で公開する情報を徐々に増やしていく考えだ。

 「例えば、現在は納入部品に不具合が見つかった際、それを社内に通達するレポートを担当者が手入力して作成していますが、今後はポータル上でサプライヤー自身に必要な情報を入力してもらえるようにしたいですね。また、当社は納期や不具合に関してサプライヤーごとの実績を詳細に管理していますが、それらの情報をポータル上で関係者がいつでも確認できるようにすることも検討しています」(吉野氏)

 サプライヤー側からも、ポータルで公開する情報についてリクエストが寄せられている。

 「パイロット・プロジェクトにご協力いただいているサプライヤーからは、自社の納品物で生じた不具合の情報をポータルで一覧できるようにしてほしいという要望が寄せられています。現在は不具合情報を1件ごとにデータベースから取得していますが、それをポータル上で一覧できれば、サプライヤー側での不具合分析などの作業が効率化されます」(吉野氏)

 これらの情報を順次追加しながらパイロット・プロジェクトである程度まで雛型を作り上げた後、2017年4月以降は他のサプライヤーに対してもポータルを順次公開していく計画だ。