WebLogic 12cR2とOracle Database 12cのマルチテナント機能でアプリケーションの可搬性が大きく高まる─NTTデータ先端技術が技術検証

Oracle Java & Developers編集部
2016-08-30 16:30:00
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DPCTで旧WebLogicドメインを簡単にドメイン・パーティションに変換

 2つ目はDPCTに関する検証だ。DPCTは既存のOracle WebLogic Server上にあるドメインを12cR2のドメイン・パーティションに変換するためのツールである。NTTデータ先端技術は今回、DPCTの初期リリース版(12.2.1)を用いて12c(12.1)のドメインを12cR2のドメイン・パーティションに変換するテストを行った。

 このテストで得た感触を、山田氏は次のように話す。

 「DPCTを使うことで、ドメインからドメイン・パーティションへの変換は正常に行えました。ただし、検証に使用したのが初期リリース版ということもあり、ドキュメント類が整備されておらず、変換後に一部で手作業による修正が必要になるケースがあるなど、使い勝手の面で改善の余地があると感じました。これについては今後のバージョンアップに期待したいですね」

 なお、本記事掲載時点で提供されているDPCTの最新版(12.2.1.1)では、ドキュメント類がアップデートされ、初期リリース版からの不具合修正や機能強化が行われている。


日本オラクル Fusion Middleware事業統括本部 ソリューション本部 プリンシパルセールスコンサルタントの柳原伸弥氏

 ところで、DPCTは開発/運用の現場にどのようなメリットをもたらすのだろうか。NTTデータ先端技術の検証作業を支援した日本オラクルの柳原伸弥氏(Fusion Middleware事業統括本部 ソリューション本部 プリンシパルセールスコンサルタント)によれば、主な利点は「アプリケーション基盤の移行に要する工数の削減」である。今回の検証では12cから12cR2への移行について検証したが、今日、多くの企業でニーズが高いのは11gからの移行用途ではないかと柳原氏は推測する。その場合、実行基盤となるJava(JVM)のバージョンが変わるため、当然ながら移行先と同じ環境で事前に入念なテストや修正作業を行う必要がある。

 「その際にOracle Java Cloud Serviceを活用すれば、テスト用のWebLogic環境を手軽に作ることができます。このとき、DPCTを使いドメイン・パーティションとしてOracle Java Cloud Service上にアプリケーションを移すことで、従来は手作業で行っていた基盤構築の作業を大幅に簡素化、スピード化できるというメリットが生まれるのです」(柳原氏)

WebLogicとOracle Databaseのマルチテナントを併用すれば、より大きなメリットが

 オラクルは、マルチテナントをクラウド時代の核となる技術と位置付け、自社製品のマルチテナント対応を推進している。Oracle WebLogic Server 12cR2へのドメイン・パーティション導入は、そうした取り組みの一環である。また、RDBMSの最新版であるOracle Database 12cでも、一足先にマルチテナント対応(Oracle Multitenantの導入)が実現されている。Oracle Multitenantは、個々のデータベースに相当する「プラガブル・データベース(PDB)」と、複数のPDBの器(コンテナ)となる「コンテナ・データベース(CDB)」によって構成されるデータベース仮想化のためのアーキテクチャである。これを使うことで、従来のサーバ仮想化技術などよりも高いリソース使用効率でデータベースを集約できる。また、CDB間でのPDB移行は「PDBの抜き差し(Unplug/Plug)」によって簡単に行えるなど高い可搬性も実現している。

 このOracle MultitenantとWebLogicマルチテナントを併用することで、アプリケーションとデータベースを合わせたテナント単位での移行が可能になり、アプリケーションの可搬性がさらに高まると期待できる。NTTデータ先端技術による検証では、Oracle Databaseのパブリック・クラウド・サービスである「Oracle Database Cloud Service」とOracle Java Cloud Serviceの利用を想定し、オンプレミス/クラウド間、クラウド間でのPDBとドメイン・パーティションの移行が問題なく行えるかどうかがテストされた。その結果、いずれの移行パターンについても正常に移行が行えたという。

 このように、オンプレミス/クラウド間やクラウド間でのアプリケーションやデータベースの移行を容易にするオラクルのマルチテナント技術は、さまざまなシーンで活用することができる。なかでも利用価値が高いと考えられるのが、「開発/検証環境としてのクラウドの活用」だ。

 例えば、環境構築の手軽さや早さ、コスト・メリットなどを生かし、本番環境のデータベースをOracle Database Cloud Service上にクローニングし、同サービスのオプションとして用意されているデータベース・テスト・ツール「Oracle Real Application Testing」を用いてデータベースやアプリケーションのテストを行うといった使い方が考えられる。クラウドならば、一時的に必要となるテスト・ツールを従量課金で利用できるため、ライセンスの購入が必要な従来のオンプレミス環境と比べて大きなコスト・メリットが生まれるわけだ。


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 また、NTTデータ先端技術では、同社の中心的な顧客層である高い可用性と性能を求める企業に対し、ディザスタ・リカバリ(DR)環境を低コストかつ短期間で用意するための技術としてマルチテナントとクラウドを提案することも視野に入れている。

 「当社のお客様の中には、Oracle Exadata上でOracle Database 11gを使われているところもまだ多くあります。また、高可用性を求めてOracle Real Application ClustersやOracle Data Guardによる冗長化構成をとっているケースがほとんどです。こうしたシステムでOracle Database 12cのPDBを活用してデータベースを統合する場合、Oracle Data Guardの設定はCDB側で一度行えばよく、これによってDR環境構築の効率を大きく高められます。12cのマルチテナントをまだ利用していないお客様に対して、今回の検証結果を基にして積極的に活用をご提案していきたいと考えています」(山田氏)

Oracle Database 12cのPDB移行に際しての留意点

 NTTデータ先端技術による検証では、Oracle Database 12cのPDB移行に関していくつか留意すべき点が見受けられたという。以下、主なものを2点紹介する。

 1つは、移行するPDBと移行先のCDBのキャラクタ・セットに関する制限だ。Oracle Database 12c(12.1)では、CDBとその上で動作するPDBのキャラクタ・セットを一致させなければならないという制約がある。そのため、特にオンプレミスで作成/利用していたPDBをクラウド上のCDBに移すような場合は、キャラクタ・セットが一致しているかどうかに注意を払う必要がある。もっとも、この課題は将来解決されるだろう。

 もう1つはデータの暗号化に関する問題である。PDBの移行先、もしくは移行元のいずれかがOracle Database Cloud Serviceとなる場合、同サービスではTDE表領域(透過的データ暗号化)が有効となるため、PDB移行と併せて暗号化キーの移行も行う必要がある。これも見落とされがちなポイントだが、Oracle Database Cloud Service内でPDB移行を行う場合、用意された管理ツールを用いて作業することにより、暗号化キーも含めた移行が自動的に行われるため、問題は生じないという。

オラクルのマルチテナントでアプリケーション開発/運用環境が大きく変わる

 山田氏は今回の検証結果を踏まえ、「Oracle WebLogic ServerとOracle Databaseのマルチテナント機能に満足している」と話す。また、今後に期待する点として、「Oracle Java Cloud Serviceにおけるマルチテナント・オプション対応の強化(記事掲載時点では、ドメイン内で1ドメイン・パーティションまで利用可能)」や「マルチテナント対応が強化された次期Oracle Databaseの早期リリース」などを挙げる。

 「Oracle WebLogic Server 12cR2の登場により、核となるミドルウェア製品のマルチテナント対応が一段落しました。今後は、Oracle SQL DeveloperやOracle Enterprise Managerといった開発/管理ツールのマルチテナント対応やクラウド対応をさらに充実させていただきたいですね。これらのツールによってできることが増えれば、ユーザーはマルチテナントのメリットをさらに強く感じるはずです」(山田氏)


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 NTTデータ先端技術では今後、同社顧客のシステム環境も踏まえ、「多数のデータベース/アプリケーションを保有している企業における管理性の向上」、「開発/検証環境やDR環境のスピーディかつ容易な構築」といった面でマルチテナントおよびハイブリッド・クラウドのメリットを訴求していくという。

 また、日本オラクルの柳原氏は、今後のシステム開発で大きなトレンドになると見られる「マイクロサービス化」の流れが、マルチテナント・アーキテクチャへの移行を促す契機になると見ている。

 「マイクロサービス化のトレンドの中では、個々のアプリケーションのメンテナンス性を高めたり、アプリケーションの更新に伴うシステム停止時間を最短化して容易にデプロイしたりできるような仕組みを整えることが求められます。コンテナ型の仮想化技術に期待が集まっているのも、そうしたニーズが背景にあるのでしょう。

 Oracle WebLogic Serverは、Java EEアプリケーションの運用基盤として長い歴史を持つ、極めて信頼性の高いミドルウェア製品です。WebLogicマルチテナントの登場により、この基盤の上でアプリケーションの集約性と分離性、そして可搬性を大きく高めることが可能になったわけですから、この機能をぜひ多くの企業でご活用いただきたいですね」(柳原氏)

 ただし、WebLogicマルチテナントは、まだ登場したばかりの機能だ。山田氏は、「現状では、Oracle WebLogic Server 12cR2を活用してDevOps環境や体制の構築まで自力で行えるお客様は多くないでしょう、当社では、こうした活用法のメリットを積極的にご紹介するとともに、実践的なノウハウの蓄積と提供に努めていきたいと思います」と話す。

 以上、ここではOracle WebLogic Server 12cR2で導入されたWebLogicマルチテナントの可搬性に関するNTTデータ先端技術による検証結果を紹介した。Java EEアプリケーションの効率的な集約と管理を実現し、クラウド環境との高い親和性も備えたWebLogicマルチテナントは、いずれハイブリッド・クラウド時代のJava EEシステムに必須の機能となるだろう。Java EEアプリケーションの効率的な開発/運用、そしてクラウドの活用を検討している企業は、ぜひ試用版やトライアル版でその実力をご確認いただきたい。

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