「可搬性は多くの企業にメリットをもたらす」 富士通がWebLogicマルチテナントの有効性を検証で確認

Oracle Java & Developers編集部
2016-07-05 14:00:00
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Oracle WebLogic Server 12c R2の最大の特徴である「マルチテナント機能」については現在、国内パートナー企業の間で有効性や活用法を探る技術検証が進められている。その1社である富士通による検証結果を紹介しよう。

WebLogic Serverマルチテナントは本当に使える機能か?

 「Oracle WebLogic Server 12c Release 2(R2)」の最大の特徴は、1つのドメイン内で複数のアプリケーションをテナントとして動作させることが可能な機能「WebLogic Serverマルチテナント(ドメイン・パーティショニング)」が導入されたことだ。同機能を活用することにより、従来のサーバ仮想化技術や軽量コンテナ技術と比べてアプリケーションの「集約性」と「分離性」、「可搬性」を大きく高められるという。


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富士通 ミドルウェア事業本部サポート技術統括部オラクルミドルウェア技術部の金子晋氏

 それでは、Oracle WebLogic Serverを利用する企業は、WebLogic Serverマルチテナントによって本当にオラクルが掲げるメリットを享受できるのか? これについては現在、日本オラクルのパートナー企業各社でも検証作業が進められている。その1社が富士通だ。同社は先頃、社内で実施したWebLogic Serverマルチテナントに関する検証結果を公表した。同社が行った検証内容と結果、そして検証を通して感じたWebLogic Serverマルチテナントへの要望や期待について、富士通 ミドルウェア事業本部 サポート技術統括部 オラクルミドルウェア技術部の金子晋氏に聞いた。

「集約性」、「分離性」、「可搬性」に関する富士通の検証結果は?

 富士通が行った検証は、検証環境上にOracle WebLogic Serverによるアプリケーション・サーバ、Oracle Databaseによるデータベース・サーバ、アプリケーションに対して擬似的に負荷を発生させるシミュレータを立てて行われた。アプリケーション・サーバについては「マルチテナントあり」、「なし(非マルチテナント)」の2つの環境を用意し、その挙動を比較している。検証環境の具体的な構成は下図のようになる。


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 検証作業は、マルチテナントの「集約性」、「分離性」、「可搬性」の3つのテーマごとに行われた。まず、それぞれの結果を見てみよう。

集約性─ヒープメモリは約30%、CPU使用率は約70%減少

 集約性に関する検証では、VMware ESXi上にWebLogicドメインを5つ構築した環境(非マルチテナント)と、1つのドメイン上にWebLogic Serverマルチテナントによって5つのパーティションを構築した環境(マルチテナント環境)を用意し、同じ負荷を掛けた場合に使用される「ヒープメモリ」と「CPU」のリソース量を比較した。


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 この環境において、マルチテナント環境の集約性が想定どおりに発揮されれば、同環境のほうが非マルチテナント環境よりもリソース消費量が少なくなると期待される。実際の検証結果は次のグラフのようになった。


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 検証では、段階的に仮想ユーザー数を増やしながら負荷を掛けているが、ヒープメモリとCPUの双方について、マルチテナント環境ではリソース消費が抑えられていることがわかる。ヒープメモリについては約30%、CPU使用率については約70%まで減少したという。

分離性─高負荷状態における他テナントへの影響を大きく軽減

 WebLogic Serverマルチテナントにおける「分離性」とは、テナント間において使用リソース(システム・リソースやアクセス権限)の独立性が保たれることを指す。「分離性」が確保されたマルチテナント環境であれば、同一ドメイン内に存在する複数のテナントのうち、あるテナントで問題が生じたとしても、それが他のテナントに及ぼす影響を最小限に抑えられる。

 今回の検証では、1つのドメイン内に配備された5つのテナントのうち、1つに高い負荷を掛け、同時に「Partition WorkManager(PWM)」によるスレッド数の制限を適用したうえで、他の4つのパーティション(通常アクセス・パーティション)に及ぶ影響を見た。


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 検証結果は次のグラフのようになった。PWM未使用の状態では、高負荷のアクセス・パーティションに負荷を掛けた際にレスポンス・タイムが約8倍にまで悪化したが、PWMによるスレッド数制限を行うことで2.5倍程度にまで改善したという。


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 また、PWMによるスレッド数の制限が実際に機能しているかどうかを見たものが次のグラフである。PWM未使用の場合、使用スレッド数が高負荷アクセス・パーティションで約4倍、通常アクセス・パーティションで約70%となっているが、PWMを使用した場合には高負荷アクセス・パーティションのスレッド数が未使用時の約40%となり、他のパーティションへの影響を抑えられていることが確認できた。


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 なお、詳細は後述するが、「分離性」に関してはアプリケーションの特性によって異なる結果になる可能性があるという。

可搬性─操作画面数は約7分の1、入力パラメータ数は約4分の1と大きく削減

 WebLogic Serverマルチテナントの「可搬性」とは、あるアプリケーションを、現在稼働しているものとは別のマシン環境に移す際の「移動のしやすさ」を指す。可搬性が高ければ、開発やテスト、本番稼働といった各フェーズにおける環境の使い分けに関する柔軟性が高まり、作業効率などの向上が期待できる。


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 富士通による検証では、Oracle WebLogic Serverの非マルチテナント環境とマルチテナント環境において、アプリケーション本体とリソース定義情報を別のマシン環境へ移すために必要となる「作業ステップ数」が比較された。

 検証の結果は下図のようになる。マルチテナント環境では、非マルチテナント環境と比べて操作画面数が約7分の1、入力パラメータ数が約4分の1となり、環境移行に際しての工数を大幅に削減できることが確認された。


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 また、この検証ではドメインの移行作業にかかる時間についても比較している。それによれば、非マルチテナント環境とマルチテナント環境では、ドメイン・テンプレートを利用しない場合で約2分の1、利用した場合では約10%の時間短縮が見込めるという。


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