金融サービスにFinTechの波。これからのシステム開発に求められるテクノロジー/システム基盤とは?

Oracle Java & Developers編集部
2016-04-19 11:00:00
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金融系システムの世界に「FinTech」の波が押し寄せている。消費者との関係強化を目指したスピーディなサービス提供と高い可用性/保守性を両立させるには、どのようなテクノロジー/システム基盤が必要なのか?

米消費者の日常生活に浸透するFinTechサービス


米国スクラム・ベンチャーズ 創業者兼ゼネラルパートナーの宮田拓弥氏

 最新のITを活用して新たな金融サービスを提供する「FinTech(フィンテック)」への関心が世界的に高まっている。すでに米国では多くのサービスが登場しており、実際に多数のユーザーを獲得しているケースも少なくない。「この"FinTech時代"にビジネスを引き続き拡大していくために、金融機関はどのようにしてIT基盤を整え、システムを開発していくべきか?」──それに対する解を示すべく、TISと日本オラクルは2016年3月にセミナー「今後の金融・カード業界に求められるシステム基盤と可能性」を共同で開催した。その要旨をレポートする。

 初めに行われた特別講演「FinTechの海外事例と日本企業に求められること」にゲスト・スピーカーとして登壇したのは、米国スクラム・ベンチャーズ 創業者兼ゼネラルパートナーの宮田拓弥氏である。現在はサン・フランシスコを活動拠点とする宮田氏は、「日常生活の中で日々、多くのFinTechを活用している」と話し、スマートフォンを使って知人間で手軽に送金することのできるサービス「Venmo」や、株取引が無料で行える「Robinhood」、個人向けの資産管理ツール「Mint」などを紹介。「すでにFinTechは未来の技術ではなく、消費者の日常生活に浸透しつつあります」と米国の現状を説明した。

"爆発的に増加するデータ"への対応が1つの鍵

 これらのサービスを開発/提供する"FinTechベンチャー"への投資も活発化している。

 「FinTechベンチャーへの投資件数は、2013年までは年間100件前後で推移していましたが、2014年には約500件にまで伸び、金額も1兆円に達しました。日本国内におけるベンチャー企業への投資額が全体で1000億円程度であることを踏まえると、その規模の大きさと期待の高さがおわかりいただけるでしょう」(宮田氏)

 このように大きな期待を集めるFinTechの"本質"の1つとして宮田氏が指摘するのが、爆発的に増加するデータ、すなわち「ビッグデータ」だ。「これらのデータをいかにして分析し、価値のある情報を探し当てるか。5年後、10年後を見据えたとき、特に金融分野では、この力の優劣が金融機関の競争力を大きく左右するでしょう」と宮田氏は断言する。

 そして最後に、「現在、金融ビジネスの世界に起きているのはファンダメンタル(根源的)な変化です。この変化に、従来の延長線上のインクリメンタルなアプローチだけで対応していくのは難しいでしょう」と話し、FinTechなど最新の金融ITの本質を理解し、取り組みを加速することの重要性を訴えて講演を終えた。

サービスの短サイクル・リリースとシステムの高可用性をいかにして両立させるか


TIS アプリケーション開発センター シニアエキスパートの川島義隆氏

 宮田氏に続いては、TIS アプリケーション開発センター シニアエキスパートの川島義隆氏が壇上に上り、「FinTech時代に求められるアーキテクチャとDevOps」と題して講演を行った。

 川島氏は現在、TISが提供する「Nablarch」の開発をチーフ・アーキテクトとして主導している。これはJavaアプリケーションの開発/実行基盤であり、その特徴を川島氏は次のように説明する。

 「Nablarchは、ECサイトなどのWebサイトから基幹系のバッチ・システムまで、多様な用途で幅広く利用できるJavaの汎用フレームワークとして、金融機関などさまざまな業種でご活用いただいています。その特徴は、TISが全てをフルスクラッチで開発しており、Javaの標準技術との融合を推進している点です。現在はJava EE 7への準拠を進めており、これによって従来以上に導入しやすくなると考えています」(川島氏)


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 このNablarchを利用する企業に対して設計/開発支援を行っている川島氏は、昨今、競合として既存の大手SIerではなく、新興のITベンチャーと競うケースが増えていると話す。このように競争相手が変わったことで、開発のスピードが極めて重要であることを改めて実感しているのだという。

 「サービスのリリース・サイクルをどれだけ短縮できるかが、競合に打ち勝つうえで重要になってきています。その一方で、運用コストの削減も必須であり、さらに24時間365日稼働の高い可用性も求められています」(川島氏)

 これらを満たすために達成すべきこととして、川島氏は次の5つを挙げる。

  • 無停止デプロイ
  • リリース・コストの削減
  • スパイク・アクセスでも停止しない
  • 自動リカバリ性の向上
  • 設定ミスや設定漏れによる障害の撲滅

 これらのうち、無停止デプロイについては、「デプロイの度に停止時間を設けると、サービスの継続性に影響が生じます。既存のサービスを停止せずに新たなサービスをリリースできることが必要でしょう」と話し、継続的なアップデートによるサービスの改善や機能強化と、サービスの継続性(可用性)を両立させることの重要性を説いた。

「エラーを前提とした設計」でアクセス急増時の処理負荷を抑える

 前掲の要件を満たすアプリケーションを設計するうえで、川島氏が参考になると話すのが「The Twelve-Factor App」だ。これはクラウド・サービス「Heroku」の開発者が著した技術文書であり、「コードベース」、「依存関係」、「設定」など、アプリケーション開発における12の要因について解説している。


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 また、これに加えて重要なのが「エラーを前提とした設計」である。その例として紹介されたのが、システム内のデータ連携におけるメッセージ・キューイングの活用だ。

 「特に日本の金融システムでは、外部サービスとの連携にメッセージ・キューイングの仕組みを利用しているケースが多いでしょう。これを単一のシステムの中でも利用し、突発的にアクセスが増加した際にバックエンド・サービスの処理負荷が急激に上昇するのを抑える仕組みを設計段階から組み込んでおくのです。この仕組みは、無停止デプロイの設計でも有効です」(川島氏)


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 川島氏が紹介したこれらのアプローチは、金融系システムのみならず、DevOpsを実践する全ての企業システムの設計に応用できるはずだ。