全世界で100万台超の複合機が接続! キヤノンはグローバルIoT基盤の構築でオラクルのミドルウェアをどう活用したのか?

Oracle Java & Developers編集部
2015-06-01 13:00:00
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キヤノンは2014年、全世界で100万台を超える複合機から収集した稼働情報をさまざまな顧客サービスへと転換するIoTソリューションのシステム基盤を刷新した。その新基盤を支える中核技術が「Oracle Exalogic」や「Oracle Coherence」、「Oracle Event Processing」といったオラクルの製品群だ。

グローバルの販売網全体を通じたサービス向上、IT投資最適化のためにキヤノンがIoT基盤を提供

キヤノン 映像事務機DS開発センター 部長の落合将人
キヤノン 映像事務機DS開発センター 部長の落合将人氏

 「ネットワークに接続された膨大なデバイスを通じて新たなビジネス価値を生み出す」というコンセプトに基づくIoT(Internet of Things)をグローバル規模で実践する先駆的企業がキヤノンだ。同社は先頃、基幹の複合機事業を支えるIoTシステム基盤をオラクルの「Oracle Exalogic」、「Oracle Coherence」、「Oracle Event Processing」といった基盤製品群で大きく刷新した。日本オラクルが2015年4月に開催した「Oracle CloudWorld Tokyo 2015」におけるキヤノン 映像事務機DS開発センター 部長の落合将人による講演「キヤノンが目指すグローバル 『複合機 IoTソリューション』」を基に、同社がIoTを駆使して展開するサービスと、それを支えるIoT新基盤の概要を紹介する。

 キヤノンが推進する複合機IoTソリューションのプラットフォームとは、世界各国に広がる同社の販売網に向けたクラウド・ベースの仕組みである。顧客オフィスに設置される複合機に組み込まれたIoTモジュールとクラウド環境(グローバル・サーバ)で構成されており、これを通じて客先の複合機の情報(例えば、稼働情報やカウンター情報など)が、キヤノンが管理/運用するグローバル・サーバに集められる。この情報が、メールやポータル・システムなどを介して各国の販売会社/販売店に提供され、「故障診断」や「請求書発行」といった各種サービス(保守管理サービス)で活用されるわけだ。

 IoTソリューションをベースにしたキヤノンの保守管理サービスの呼称は、国/地域によって異なる(日本での呼称は「NETEYE」)。だが、サービスの内容は基本的に同一であり、機器故障などをモニタリングする「リモート監視」、カウンター情報を自動的に収集する「リモート検針」のほか、「ファームウェアの自動更新」、「消耗品の自動配送」、「機器管理情報の提供」といったサービスが用意されている。

 「販売会社/販売店による保守管理サービスは、以前はセールスパーソンやサービス要員の"足回り"に依存する部分が大きく、サービス提供のプロセスにも無駄が少なくありませんでした。それをIoTソリューションによって変革したことで、販売会社/販売店のサービス・スタイルを変え、彼らの業務負担を減らすことができました。顧客サービスのスピードや的確性も増しています。そして、最終的には顧客満足度の向上へとつながっているのです」と落合氏は胸を張る。

 このIoTソリューションが初めてスタートを切ったのは、2005年6月のことだ。それ以前、キヤノンの販売会社/販売店は、それぞれが独自に構築したシステムを通じて保守管理サービスを提供していた。つまり、個々の販売会社/販売店が、それぞれにシステムの開発や運用管理の負担を担っていたのである。キヤノンがIoTソリューションをグローバル展開したことには、そうした販売会社/販売店の負担を軽減する狙いもあった。言いかえれば、販売網全体のIT投資最適化やシステム開発のスピード向上、運用管理の負担軽減を図るべく、「キヤノンが各販売会社のサービス提供を支えるグローバル・サーバの開発/運用を一手に担うことにした」(落合氏)というわけだ。なお現在、キヤノンのIoTソリューションは100を超える国/地域で活用されており、各国累計100万台を超える複合機が接続されている。

従来型IoTの限界をオラクルのテクノロジーで乗り越える

 2006年にスタートしたキヤノンの複合機IoTソリューションは、長年にわたって各販売会社のサービス提供を支えてきた。しかし、キヤノン製複合機の普及が世界規模で進むにつれて、グローバル・サーバの性能/キャパシティに限界が見え始め、機能/性能の拡張が困難になっていた。そこで、同社はグローバル・サーバの刷新、つまり複合機IoTソリューションの提供を支える次世代グローバル・サーバの構築に乗り出したのである。

 このプロジェクトを立ち上げる際、同社が設定した新システムの要件は、次の3つとなる。

  • さらなる事業拡大(複合機の増大)に伴うIoT通信の増大への対応
  • 24時間365日の連続稼働を実現する高可用性
  • 旧来システムからの安全な移行

 キヤノンは、これらの要件を満たす次世代グローバル・サーバのインフラとして、オラクルのアプリケーション実行基盤「Oracle Exalogic」とデータベース実行基盤「Oracle Exadata」という2つのEngineered Systemsを採用。これらをベースにして次世代グローバル・サーバを完成させ、2014年10月から本格的な運用を開始している。

Oracle CoherenceとOEPにより、100万台超の複合機との通信性能が5倍、内部処理性能が10倍に向上

 落合氏によれば、次世代グローバル・サーバ構築における最大の挑戦は、世界中の複合機から送られて来るデータの「受信/加工/格納」を行う仕組みを全面的に作り直したことだ。キヤノンは、これをOracle Exalogic上で稼働する2つのミドルウェア、具体的にはオラクルのメモリグリッド「Oracle Coherence」とイベント・ストリーミング処理基盤「Oracle Event Processing(OEP)」によって実現している。

 グローバル・サーバは、大きく2系統の機能から成る。その1つが、膨大な数の複合機から送出されるデータを「受信/加工/格納」する機能群、すなわち「受信/加工/格納系の仕組み」である。また、もう1つは「参照系」の機能群であり、こちらは加工されたデータを各国の販売会社が参照したり、夜間バッチを実行したり、販売会社/販売店のシステムと連携させたりするために利用される。

 このうち「受信/加工/格納系の仕組み」にOracle CoherenceとOEPを導入し、大量データの受信/加工/格納のパフォーマンス、およびアプリケーションの生産性/保守性を一挙に高めたというのが、次世代グローバル・サーバ構築における「最大のチャレンジであり、刷新のキモ」(落合氏)となったわけだ。

 従来のグローバル・サーバでは、アプリケーション・サーバが複合機からの通信を受信すると、まずデータの「パース」が行われ、次にデータの種類に応じて処理を振り分ける「振り分け処理」、不要なデータを取り除く「フィルタ処理」、「履歴登録処理」、「サマリ処理」などが順次実行されていた。そして、これらの処理が発生する度にデータベース・サーバ(UNIXサーバ上のOracle Database)にアクセスし、ストレージに対するデータの書き込み/読み出しが行われていた。「そのため、どうしてもデータベース・サーバ側のI/O性能が受信/加工系処理のボトルネックになっていたのです」と落合氏は振り返る。

 これに対して、次世代グローバル・サーバでは、Oracle Exalogic上で動作するOracle Coherenceを受信/加工系処理とデータベース・サーバとの間に介在させることで、データベース・サーバ側のI/O処理を削減し、性能を高めている。また、Oracle CoherenceからOracle Exadata上のOracle Databaseに対するデータ書き込みも、Oracle Exadata独自の「Write-back Flash Cache」技術によって高速化している。

 これにより、次世代グローバル・サーバでは受信/加工/格納といった内部処理の性能が従来サーバの約10倍に高速化され、IoT通信のレスポンス性能も約5倍に向上したと落合氏は説明する。

 また、次世代グローバル・サーバでは、従来のグローバル・サーバで実行されていた受信処理がすべてOEPベースで書き換えられ、受信/振り分け/フィルタ/履歴登録/サマリといった処理が"イベント化"された。これにより、各処理(プロセス)の独立性が高まり、「処理ロジックの追加/変更にかかる手間とコストが減り、機能拡張が柔軟に行えるようになりました」と落合氏は語る。さらに、「1つの処理(イベント)の稼働中に他の処理を停止させ、メンテナンスを行う」といったことも可能になっている。