誕生から20年! コミュニティとともにJavaが向かう未来──Java Day Tokyo 2015基調講演レポート

Oracle Java & Developers編集部
2015-05-13 17:30:00
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2015年4月、今年最大のJava開発者イベント「Java Day Tokyo 2015」が東京国際フォーラムで開催された。Java生誕20年も記念して催された同イベントの基調講演の模様をダイジェストで紹介する。

"Write Once, Run Anywhere"のコンセプトの下、着実に適用領域を広げてきたJavaの20年

 日本オラクルは2015年4月8日、国内では今年最大となるJava開発者イベント「Java Day Tokyo 2015」を有楽町の東京国際フォーラムで開催した。1995年に誕生したJavaの生誕20年も記念して開催された同イベントは、エンタープライズ、デスクトップ、モバイル、さらにはクラウドやIoT(Internet of Things)まで、さまざまな分野に浸透したJavaの実績を総括し、将来を展望する場となった。午前中に実施された基調講演の要旨を紹介する。

日本オラクル 取締役 代表執行役社長兼CEOの杉原博茂氏
日本オラクル 取締役 代表執行役社長兼CEOの杉原博茂氏

 初めに登壇したのは、日本オラクル 取締役 代表執行役 社長兼CEOの杉原博茂氏だ。杉原氏は冒頭、「現在、ITの進化によって産業界をはじめとする社会全体で急激な変化、すなわち『混乱(Disruption)』が起きています」と指摘。そうした混乱期にあって、さらに日本企業は「少子化による労働人口の減少」や「グローバル化」への対応といった課題にも直面しており、今後は「IT活用による、ひとりひとりの生産性向上」が急務であると力説した。

 この状況も踏まえてオラクルが目指す社会の姿とは、クラウドとネットワークを介して経済と社会を構成するあらゆる要素が接続される「Modern Cyber Society」であるという。そして、その社会を支えるITインフラの中心となる技術が「Java」なのである。

 「私は以前、オラクルの創業者であり、現CTO(最高技術責任者)のラリー・エリソンに『他社にはないオラクルの強みは何か』と質問したことがありました。それに対して彼は、『Javaがあることだ』と答えたのです。Javaは現在、クラウドから組み込みまで、さまざまな環境/機器の上で動作し、世界中に900万人以上の開発者を抱える、文字どおりの標準技術です。ぜひ、より多くの開発者の方に、JavaによるModern Cyber Society、Cloud Societyの構築に、ともに取り組んでいただきたいと思います」(杉原氏)

 ここで、ステージ上にはJavaの生誕20年を祝うバースデーケーキが運び込まれた。併せて、Javaのマスコット・キャラクターである「Duke(デューク)」も登場し、会場は基調講演の登壇者と来場者全員による「ハッピーバースデー」の合唱に包まれた。


基調講演の登壇者らが壇上に集まり、会場の参加者とともにJavaの20歳の誕生日を祝う。左上は特注のバースデーケーキ

 また、ここで嬉しいサプライズが! "Javaの生みの親"であるジェームズ・ゴスリン氏からの、日本のJava開発者に向けたビデオレターが披露されたのだ。ゴスリン氏は、Javaを生み出してからこれまでの20年間を、「まるでロケットによる旅のようだった」と振り返る。

 「あなたが20歳だった頃のことを思い出してみてください。きっと、活力にあふれていたことでしょう。Javaという技術は、今まさにその時期にあります。思い返すと、2000年代初めの携帯電話に対するJavaの搭載は、特筆すべき出来事でした。Javaの最大の素晴らしさは、その多様性です。ミッション・クリティカルなデータセンターからモバイル・デバイス、さらにはIoTシステムの開発やエンド・ツー・エンドのデータ・ストリーミングと、その可視化やデータ分析に至るすべての作業が、Javaという1つのスキル・セットさえあれば可能なのです。Javaの活用分野は、今後ますます広がっていくことでしょう。

 私は何度も日本に行きましたが、日本のJavaコミュニティが持つ絶大なエネルギーを常に嬉しく思ってきました。また、日本のJava開発者の皆さんのこれまでの貢献には、心から感謝しています。そして、これからの20年も、Javaとともに過ごしていただきたいと願っています」(ゴスリン氏)


ビデオレターで日本のJava開発者の長年の貢献に謝意を表するジェームズ・ゴスリン氏

米国オラクル Javaプロダクト・マネジメント・ディレクター/JavaOneプログラム委員長のシャラット・チャンダー氏

 ゴスリン氏からのビデオレターが終わると、次に米国オラクルでJavaプロダクト・マネジメント・ディレクター、およびJavaOneのプログラム委員長を務めるシャラット・チャンダー氏が登壇。氏はまず、Java開発者コミュニティが現在も世界規模で拡大し続けていることに触れ、日本では「日本Javaユーザーグループ(JJUG)」と「関西Javaエンジニアの会」という2つのコミュニティが積極的な活動を展開していること、そしてOpenJDKの取り組みに関しても多くの日本人開発者が貢献していることを紹介し、賛辞を述べた。

 「Java SE 8のリリース後、こうした皆さんの貢献により、Javaに関する数々のポジティブな話題が世の中を賑わせてきました。Java SE 8の解説書も多数刊行されており、日本語への翻訳も進んでいます」(チャンダー氏)

 また、チャンダー氏はオラクルが5月より、Java SE 8を対象にした新たな認定プログラムを開始することを発表したほか、TwitterFacebookなども通じてさまざまな情報提供が行われていることを説明。これらを活用すると同時に、Java.net、OpenJDKなどを通じてより多くの開発者がコミュニティ・プロセスに積極的に参加することが、「Javaのこれからの20年」にとって重要だと述べた。

PepperもJavaで動く!──ロボット開発、組み込み、IoTを支えるJava


米国オラクル Javaプラットフォーム・ディベロップメント バイスプレジデントのジョルジュ・サーブ氏

 チャンダー氏の説明に続いては、さまざまな領域における最新のJava活用事例がデモンストレーションを交えて紹介された。案内役を務めたのは、米国オラクルでJavaプラットフォーム開発担当バイスプレジデントを務めるジョルジュ・サーブ氏だ。

 「Javaの開発に当たり、私たちは現実の諸問題に対処することに力を傾けてきました。生産性を高め、あらゆる業界でJavaを使えるものにしていくために投資を続けてきたのです」と語るサーブ氏は、2014年3月にリリースされたJava SE 8の特徴として、ラムダ式やストリームAPI(Stream API)といったJava開発を近代化する新機能のほか、パフォーマンスやセキュリティの向上を挙げた。


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Pepperのデモを行う仏アルデバラン・ロボティクス ソフトウェア・ディレクターのローレント・レック氏

 その後、仏アルデバラン・ロボティクスでソフトウェア・ディレクターを務めるローレント・レック氏が壇上に招かれ、家庭向けコミュニケーション・ロボット「Pepper(ペッパー)」のデモが紹介された。

 ソフトバンクロボティクスと同社の共同開発によるPepperはTV CMやソフトバンク・ショップなどで目にする機会も増え、日本人には馴染み深いロボットの1つとなった。Pepperには、全体で20のモーターと、「感情認識」、「顔認識」、「障害物感知」、「接触感知」などの役割に応じた多数のセンサー機能が装備されている。Pepperの動作は独自OS「NAOqi」で制御されるが、そのインタフェースにはJavaをはじめとするさまざまなプログラミング言語からアクセスできる。デモでは、Javaで書かれたプログラムを通じてPepperに指定した動作を行わせる様子が披露された。

 「デフォルトで用意されたAPIだけでも、大抵のことはJavaでプログラミングし、実行させることができます。コンピュータやウェアラブル・デバイスからのリモート・コントロールも可能です。もしPepperに限界があるとすれば、それは開発者の想像力でしょう。興味を持たれた方は、アルデバラン・アトリエ秋葉原 with SoftBankで、実際にPepperのアプリケーション開発を体験することができます。ワークショップやハッカソンなどのイベントも多数行っていますので、ぜひお気軽にお越しください」(レック氏)

 ここでサーブ氏は、「Java SE」の今後のロードマップを示した。現状の最新版はJava SE 8 u40※1で、今後バグフィックスなどを行ったマイナー・アップデートのJava SE 8 u60が年内にリリースされる。また、Javaにモジュラリティ機能を付加する「Project Jigsaw」などが導入されるJava SE 9については、2016年前半のリリースを目指して開発が続けられているという。


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※1 この機能強化ロードマップとは別に、2015年4月14日、重要なセキュリティ・アップデートを含むクリティカル・パッチ(Critical Patch Updates)としてJava SE 8 u45がリリースされている。

 次に取り上げられた話題は組み込み向けの「Java ME」だ。サーブ氏は、Javaが7から8へとバージョンアップされたのに伴い、Java MEとJava SEの間におけるAPI仕様と言語仕様の乖離が大きく縮まったと説明する。

 「従来から、Java SEとJava MEに関してはAPIと言語の仕様が大きく異なることが課題となっており、私たちは両者の統合を進めてきました。その成果として、バージョン8ではAPI仕様に関してJava SEとJava MEの共通部分が大きく増え、言語仕様についてはJava MEがJava SEの完全なサブセットになっています」(サーブ氏)

 Java ME 8は組み込み業界から高い評価を受け、オラクルが提供している開発キットやツール類がすでに多数ダウンロードされているという。サーブ氏は、今後もパフォーマンスや実装の改善を進め、Java MEとJava SEの間の互換性を高めていくと約束した。

 これまで、組み込み領域におけるJavaの発展では、「業界パートナーとの協業」が極めて重要な役割を果たしてきた。サーブ氏は、そのことを改めて強調したうえで、パートナーの1社であるルネサス エレクトロニクスの米山学氏(第二ソリューション事業本部 産業第一事業部 産業ネットワークソリューション部)を壇上に招いた。


ルネサス エレクトロニクス 第二ソリューション事業本部 産業第一事業部 産業ネットワークソリューション部の米山学氏

 組み込み機器向けにさまざまな半導体製品を提供しているルネサス エレクトロニクスにとって、ネットワークを介して多様かつ多数の機器を連携させるIoTは今後の注力市場の1つだ。そこに向けて同社が提供する価値を、米山氏は次のように説明する。

 「現在、IoTとクラウドを連携させることで、新たな業態やビジネスが発展すると期待されています。ただし一方で、組み込み環境からバックエンドのクラウドを活用するに当たっては、技術的な課題も数多くあります。当社は、ノード・ゲートウェイの高機能化/高性能化を進めることで、さまざまな環境からのクラウド活用をわかりやすく、簡単なものにするプラットフォームを提供することを目指しています」

 そのうえで米山氏は、同社が提供する「RZ/Aシリーズ」の紹介とデモを行った。

 組み込み環境向けの汎用プラットフォームであるRZ/Aは、デバイス開発に必要となるCPUやワークメモリ、インタフェース類を内蔵した高性能デバイスである。ARM mbed向けの名刺サイズの組み込みボード上でJava MEを動作させている。デモでは、このボードを自走式のミニカーに搭載。このミニカーを「路線バス」に見立て、道路の渋滞状況や車内外の気温などをセンサーで計測し、それらの情報も含めた路線バス運行情報を定期的にTwitterにポストする様子が披露された。


ルネサス エレクトロニクスによるRZ/Aを用いたデモの様子。路線バスに見立てたミニカーが、現在地や乗客数などの運行情報を、車内外の気温などの情報とともにツイートする。バス利用者はTwitterを見ることで、路線バスの運行情報がわかるという仕組みだ

 「今回、Javaによってこのデモを作る中で、これほど簡単にクラウドにアクセスできるのかと改めて感動しました。今後はJava開発者の皆さんが生み出すアイデアも通じて、ともに新たな価値を生み出していきたいと考えています」(米山氏)


Javaテクノロジーを駆使した自動車コックピットのデモを行う米国オラクル IoTアーキテクトのジャスパー・ポッツ氏

 組み込みJavaに関しては、もう1つデモが行われた。担当したのは、米国オラクルでIoTアーキテクトを務めるジャスパー・ポッツ氏だ。氏が披露したのは、組み込み向けをはじめとする各種のJavaテクノロジーがふんだんに盛り込まれた自動車コックピットのコンセプト・モデルである。

 このコンセプト・モデルでは、ハンドル横に備わるタッチ・パネルによってナビゲーション・システムやカー・ステレオの操作が行えるほか、運転状況や自動車を構成する各パーツから取得したデータが、適宜クラウド上に保存される。これにより、例えば「電気自動車のバッテリー劣化」という状況に対し、どのタイミングでメンテナンスを行うべきかをプログラムが判断し、ドライバーに対して事前にアラートを出すとともに、修理工場を予約するといったことが可能になる。

 一連のデモが終わると、サーブ氏はここまでに行われたデモのプログラムがすべてJavaで書かれていることを改めて強調。今後の組み込みJavaのロードマップを示しつつ、「開発者の皆さんは、ぜひ組み込みJavaで実現された製品を実際に使って遊んでみてください。そして、開発ボードを試し、自分なら、それを使って何ができるかを考えてみてください」と呼びかけた。


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