肝は「スケーラブルなアーキテクチャ」と「水平型の設計」──先進事例で見えてきたIoTサービスの実現に必要な考え方

Oracle Java & Developers編集部
2014-08-04 12:00:00
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消費者が持つデバイスなどから取得したデータを使い、新たな付加価値サービスを実現するIoT(Internet of Things)。国内外のIT先進企業は、その提供基盤をオラクルのミドルウェア製品を活用して構築し、すでにサービスを実稼働させている。

"未来の話"ではない。IoTを活用したサービスは、すでに国内外で始まっている

日本オラクル Fusion Middleware事業統括本部 製品戦略部担当ディレクターの杉達也氏
日本オラクル Fusion Middleware事業統括本部 製品戦略部担当ディレクターの杉達也氏

 IT業界のみならず、ビジネス界からも多くの関心を集めているIoT(Internet of Things)。なかには、これをいずれ訪れる未来の話だと思っている方もおられるかもしれないが、そうではない。国内外のIT先進企業では、すでに基幹事業を担う技術として活用されているのだ。ここでは、日本オラクルが2014年6月に開催した「オラクル ミドルウェア フォーラム2014」におけるNECと日本オラクルによるセッション「IoTの実践:実稼働するプラットフォーム『CONNEXIVE』とそれを支えるテクノロジー」の内容を基に、IoTやM2M(Machine to Machine)のビジネスにおける活用例や、それらの提供基盤となるソリューションなどを紹介する。

 セッションで最初に登壇したのは、日本オラクル Fusion Middleware事業統括本部 製品戦略部担当ディレクターの杉達也氏だ。氏は初めに、業務用機器や生活家電を含め、あらゆるデバイスがインターネットにつながり、自動的にデータをやり取りするIoTの代表的な活用例として、米国ナイキのサービス「Nike+ DIGITAL SPORT」を紹介した。

 このサービスでは、「FuelBand」と呼ばれるリスト・バンド型のウェアラブル・デバイスを通じて、ユーザーの運動状況を日々モニタリングし、そのデータをクラウド上でリアルタイムに処理する。その結果をユーザーにフィードバックするとともに、周辺ではさまざまなサービスも展開している。デバイスから取得したデータは、顧客の動向を把握するためのマーケティング情報としても活用されているという。Nike+ DIGITAL SPORTは現在、全世界で数千万人のユーザーを獲得している人気サービスだが、その提供基盤には「Oracle Coherence」、「Oracle Exadata」、「Oracle Spatial」といったオラクルの製品群が使われているという。

 杉氏がもう1つの活用例として紹介したのは、国内ハイテク製造業の機器監視プラットフォームの事例だ。この企業では、オフィス機器の内部に組み込んだセンサーにより機器の稼働情報データを収集し、それをインターネット経由で自社の機器監視センターに送信する仕組みを構築。機器の故障予知や消耗品のタイムリーな補充といったアフター・サービスで活用している。

 同社は、機器販売数の拡大と、機器からの情報収集頻度の増加に対応しつつ、さらなる付加価値サービスの提供を目指してプラットフォームを刷新した。その基盤としてOracle CoherenceやOracle Exadata、「Oracle Event Processing」、「Oracle Exalogic」といった製品群を活用し、従来の約4倍のキャパシティへの拡張を果たしたという。

M2M/IoTの基盤構築の鍵は「スケーラブルなアーキテクチャ」と「水平型の機能設計」

 杉氏が紹介した2つのケースは、オラクル製品によってすでに実用化されているM2M/IoTサービス事例の一部だが、これらも含め、「IoTサービスを検討する企業は、大きく2つのタイプに分けられる」と杉氏は語る。1つは「新規IoT検討企業」、もう1つは「従来型M2M展開企業」だ。

 「新規IoT検討企業」とは、近年、急速にコモディティ化が進むスマートフォンなどのモバイル・デバイスとインターネットを活用して、新規にサービスの提供を検討する企業である。先の例ではナイキがこれに当たる。この場合、サービス導入時は小規模にスタートし、需要を見極めながら順次、規模を拡大していくといったかたちになる。

 一方の「従来型M2M展開企業」は、すでにM2Mに関して何らかの事業を展開しており、そこで培ったビジネスの枠組みを生かしながら、最新のテクノロジーに対応した新サービスの提供を検討する企業である。先に紹介した国内ハイテク製造業の事例は、こちらに該当するケースだ。

 それでは、IoTと従来型M2Mとの間には、どのような違いがあるのだろうか。杉氏は、そのポイントとして「機能設計」、「ネットワークへの接続頻度」、「目的」の3つを挙げる。

 「従来型M2Mは、個別機器の機能が主体だった時代に、それを部分的に補完して保守などの作業を効率化する目的から、ネットワークを介したデータ送信を行うというものでした。そのため、接続の頻度は低く、送信されるデータの量も限定的です。

 それに対して、今後の導入が検討されているIoTでは、機器がネットワークを介してサーバ側と接続することが前提にあり、そのうえでデバイスとサーバ側(クラウド)が一体となってサービスを提供することを想定しています。接続頻度も常時が基本となるでしょう。機器から得たデータを包括的に活用することで、ユニークなサービスを提供することが導入の主目的なのです」(杉氏)

 そして、こうした想定の下に考えると、システム基盤に関しては「情報量の増加に対応可能なアーキテクチャ」と「水平発想の機能設計」が重要なテーマになってくるという。

 例えば、前出の国内ハイテク製造業では、10年ほど前に保守サービスの一環としてM2Mへの取り組みを開始。先頃、顧客/機器数の増加や、より多くの情報を利用した付加価値サービスの提供を視野に入れ、大規模なトランザクションをリアルタイムに処理できる基盤への刷新を図った。その中でデータ受信と加工のプロセスをリアルタイムに処理するレイヤを新設したが、そこでFusion Middlewareの技術を活用しているという。

 また、近年のIoTプロジェクトに見られる傾向として、「垂直型の設計」から「水平型の設計」への設計方針のシフトがある。

 「垂直型の設計」とは、端末/デバイス側のシステムとサーバ側のシステムを、それぞれ完結したかたちで設計することを指す。両者間のデータのやり取りは、あくまでも部分的なものであり、基本的には非リアルタイムな連携になる。デバイス単独の機能に閉じたかたちで展開していた時代には、こうした垂直型で完結した設計になるのは当然のことである。

 一方、常時接続やリアルタイムのサービス提供が前提となるIoTでは、端末側とサーバ側の仕組みを一体として考える「水平型」の発想が必要になると杉氏は説明する。

 「IoTサービスの検討段階では、どの機能をどこに配置するかといった詳細設計はまだ行いません。サービスの形態や差別化のポイントといったサービス・モデルに関する議論が先行し、その後でサービスに必要な機能の配置を設計します。この配置設計を柔軟に変更できたり、開発リソースやノウハウを共通化しながら全体の設計が行えたりといった点で、IoTプラットフォームを水平型設計の思考で進めておくことには大きな意味があります。JavaやFusion Middlewareといったオラクルの技術スタックは現在、まさにそうした方向性に向けて進化を続けており、デバイスからサーバ、クラウドまでの各層を抽象化し、一括して扱うことのできるミドルウェア層を構成するうえで大きな威力を発揮するでしょう」(杉氏)

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