ビジネスの将来を託すIT基盤を何で作るか? ITRのアナリストが語るITアーキテクチャの重要性と、Java/Java EEの揺るがぬ価値

Oracle Java & Developers編集部
2014-03-11 16:26:00
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企業のIT部門が、迅速かつ効果的なIT活用のための地盤作りとして取り組むべきことは「ITアーキクチャの標準化」だとITRの甲元宏明氏は語る。多くの企業が、その中核技術としてJava EEに期待しているようだ。

なぜIT部門にとって「ビジネスへの貢献」が難しいのか? 最大の課題は「ITアーキテクチャの欠如」


ITR プリンシパル・アナリストの甲元 宏明氏

 Java EEが企業システム開発の主要技術となって久しいが、一方でシステム開発にかかわる技術は日々進化を続けている。また、企業のIT部門に課せられるミッションは年々、多様化しており、ITによるビジネスへの直接的な貢献を求める声も強まっている。日本オラクルが2014年2月に開催した「最新のJavaを3時間で知る! Java解説セミナー」では、ITRでプリンシパル・アナリストを務める甲元宏明氏が、「エンタープライズシステム開発用言語/フレームワークの最新動向とJavaの価値」と題した講演を実施。IT部門が今日、課せられている課題に挑むにあたり、その下地となる取り組みとして「ITアーキテクチャの標準化」を進めることの重要性と、その際に「言語/フレームワーク」をどのような基準で選択すべきかについて、日頃多くのユーザー企業に接するアナリストの立場から見解を示した。

 甲元氏は冒頭、企業各社のIT部門が課せられているミッションが、2000年代以降、急速に多様化していることに触れた。2000年以前には「システムの構築運用」が主な業務であったのに対し、2000年代以降には、より経営に深くかかわる「経営戦略とITとの同期」、売上増などにつながる「ビジネスへの直接的な貢献」、さらにはITによるイノベーション、新規ビジネスなど「ITを活用したビジネス提案」まで、より幅広く高度なミッションを担うことが求められるようになっているという。

 一方で現状、そうした要求に企業のIT部門が十分に応えられているのかというと、実情は芳しくないようだ。日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)が2012年に企業のIT部門を対象に実施した調査によれば、「ビジネス・モデルの変革」や「ビジネス・プロセスの変革」といったかたちでのビジネスへの貢献を「期待されており、応えられている」と回答した企業は全体の半数以下となっており、多くのIT部門が、そうしたミッションを十分に果たせていないと認識している状況が明らかになっている。

 ITによるイノベーション、ビジネスへの直接的な貢献を難しくしている最大の要因として、甲元氏は依然としてシステムのサイロ化が解消されていない企業が多く存在し、「IT基盤の統合/再構築」が最重要の課題と認識されながらも、その実施が遅れている現状があると指摘する。サイロ化が進んだシステムが、ビジネス・ニーズに応じた俊敏かつタイムリーなIT活用を阻んでいるというわけだ。

 それでは、なぜ「IT基盤の統合や再構築」が思うように進まないのか? その理由を、甲元氏は都市計画になぞらえ、ITの基本的な都市計画の欠落、すなわち「ITアーキテクチャの欠如」が、その根底にあると指摘する。

 「都市計画では、都市全体の構想が十分に練られていなかったり、無計画な交通網の整備や構造物の乱立などがあったりすると、結果として交通渋滞や安全性の欠如、住環境の悪化、保全コストの増大、柔軟性の欠如といった問題が生じます。それと同様に、IT基盤の統合/再構築にあたっては、熟考されたITアーキテクチャの上で、計画的にインフラやミドルウェア、IT製品を導入していかなければ、いずれさまざまな問題が起こります。その難しさが、企業が思うようにIT基盤の統合や再構築を進められない理由の1つになっているのです」(甲元氏)

 この「IT都市計画」において、OSや連携ツール、プロトコル、開発言語やフレームワーク、データベースといったITアーキテクチャかかわる構成要素は、エンドユーザーが直接触れて使い勝手を確かめられるアプリケーションなどのビジネス・アーキテクチャとは異なるレイヤに位置する。そのため、ITアーキテクチャについては、十分な検討に基づいた選定が行われないケースが少なくない。しかし、このITアーキテクチャこそが、「IT都市計画」においては極めて重要な部分だと甲元氏は強調する。

 アプリケーションなどビジネス・アーキテクチャの構成要素については、ビジネス・ユニットや事業部門ごとに適したものを用意する一方で、データベース、開発言語/フレームワーク、連携ツール/プロトコル、OSといったITアーキテクチャについては、できる限り標準化しておくことが理想的だ。

 しかし今日、企業のIT基盤を取り巻く環境は複雑さを増している。旧来からあるシステムに加えて、近年ではIaaSやPaaS、SaaSなどのクラウドが一部に取り入れられるケースも増えてきており、こうした状況の中で「IT基盤を完全な一枚岩として再構築するのは不可能」なのが実情だと甲元氏は語り、次のように続けた。

 「したがって、企業のITアーキテクチャを"固定的なもの"、"完成するもの"と捉えるのではなく、"完成せず"、"段階的に変化、成長するもの"と捉え直すことが必要になっています。そのうえで、可能な部分からできる限りの標準化を目指して取り組むことが重要なのです」(甲元氏)

 甲元氏は、特に優先的に対策を進めるべきIT基盤の領域として、次の4つを挙げる。

  • 開発フレームワーク
  • 開発言語
  • ミドルウェア
  • システム連携

 これらの部分は、ITが担うべきシステム課題への影響が大きい一方で、特に現在、サイロ化が著しく進んでいるためだ。

 「特に開発言語やフレームワークの選択は、システムの構築速度や変化への柔軟な対応、保守、継続性に大きな影響を与えるため、パッケージ製品やPaaSを選定する際にも十分に留意すべき領域です」(甲元氏)