楽天とオラクルのアーキテクトが本音で語る、「Java EE 6導入を推進するうえでのポイントと導入効果」

Oracle Java & Developers編集部
2013-09-04 11:00:00
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プロプライエタリな世界はもうお断り──日本のシステム開発の現状と課題

 ここまで両氏が挙げてきたJava EEの利点や導入効果は、詰まるところ「業界標準のオープンな仕様の枠内で、標準として定められたやり方で当たり前に作ること」から生まれるものだと言えるが、これは逆に、現状のシステム開発が、そのように行われていないことの証左でもあるのかもしれない。話題が日本におけるシステム開発の現状や今後に及ぶと、まず大橋氏は次のように指摘した。

 「私が多くのお客様に共通に感じているのは、運用時にお金のかかるシステム構成になっているということ。開発については、これまでさまざまな工夫をされた結果かなり改善されているが、運用についてはまだ課題があると見ている。例えば、システム構成が複雑であったり、Java EE標準の上に非標準な独自の世界を作り込んでしまっていたり、サードパーティ製品を数多く使っていたりといった具合。また、これは日本の文化として仕方ないことなのかもしれないが、過剰な要件を設定してオーバーエンジニアリング気味に作られたシステムも少なくない」

 そして、大橋氏がそうした点を指摘すると、「うちは特別だから」と返されるという。"特別"だから必要以上のコストがかかるわけであり、それが本当に必要で、覚悟してやっているのならば問題はない。しかし、大橋氏が見る限り、「大抵は当たり前のやり方、当たり前のコストで運用しても差し支えないはず」だという。

システムのガラパゴス化を避けよ

 一方、岩崎氏は"システムのガラパゴス化"に警鐘を鳴らす。

 「企業システムで標準技術を使わず、無闇に独自の世界を作り上げることには、非常に問題があると感じる。これにより、いわゆる"ガラパゴス化"が生じ、その技術に長けた一部の開発者しかわからない世界ができてしまう。例えば、StrutsもHibernateもSpring Frameworkも、今となってはすべて非標準の世界だ。これらをJava EEなどの標準技術を使って新しく作り変えていかない限り、いずれはシステムが硬直化し、教育コストも増大して、時代遅れなシステムになってしまう。新技術を導入したくても簡単にはいかず、結局はどこかでゼロリセットすることになり、高くつくだろう。もちろん、各種オープンソースなどは依然として各方面で有用であり、『使いどころや運用方針を間違えるべからず』という当たり前の事実にもつながる話だ」(岩崎氏)

 先ごろStruts 1がEOL(End Of Life:開発停止)を迎えたことからも、岩崎氏と同じ思いを抱いている読者は少なくないだろう。

 「海外企業の動きを見ると、Java EE 5、Java EE 6など最新のJava EEへのシフトが急ピッチで進んでいる」と岩崎氏は強調する。一方、開発を外部に委託している国内のユーザー企業の場合、SIerなどから経験の豊富さやコストの安さなどを理由に、プロプライエタリな技術の採用を提案されるケースがまだ見られる。そうした場合、どう対応すべきだろうか。

 「確かに、『これしかできないから、これでやらせてくれ』とご提案をいただくことはあるが、その場合は残念だがお断りしている。自分たちのシステムを作る技術は自分たちで管理するというのが我々の方針であり、Java EEなどによる標準技術の枠内で作っていただくのが最低限の条件となる」(岩崎氏)

 このように岩崎氏は手厳しいが、しかし、やむをえない場合もあるだろう。その際には「明確な移行プランを描くべき」と大橋氏はアドバイスする。

 「今はやむをえず、プロプライエタリな技術で作らなければならない場合、将来的にJava EEの標準技術の枠内に移行していくプランを必ず描いていただく。それに納得したうえでご採用いただくのならよいが、きちんとした移行プランを描けない場合は、いずれお客様がプロプライエタリな世界にロックインされてしまう危険性があるので、『お勧めできません』とアドバイスしている」(大橋氏)

 また今後は、最新のJava EEによる開発スキルの向上も、多くの企業で必要になる。先に岩崎氏が語ったように、楽天ではシステムの内製化を促進すべく、プロジェクトを通してJava EE 6に精通した人材の育成を進めている。ただし現状、日本語による技術情報が少ないことが日本の一般技術者にとって高いハードルになるだろうと感じているという。

 「『Beginning Java EE 6 Platform With Glassfish 3』は訳書が出たが、まだ情報が足りない。『The Java EE 6 Tutorial』、アルン・グプタ氏の『Java EE 6 Pocket Guide』、さらに『Oracle WebLogic Server 12c』、『NetBeans IDE 7 Cookbook』など、最新のJava EE開発のスキル向上に役立つ優れた書籍が英語では沢山出ている。これらを読める開発者と、英語を読めない開発者とでは、その点だけで大きな差が生じているはず。この面だけ見ても、弊社の英語化推進の利点は極めて大きい」(岩崎氏)

 Java EEに関する今後の取り組みだが、岩崎氏は、先に構築したJava EE 6ベースのシステムを社内で横展開しながら、Java EE 6の適用範囲を広めていく計画だという。もちろん、6月に登場したJava EE 7の新機能の検証も進める。

 一方、大橋氏は、今回実情を明かしてくれたコンサルティング活動を通じて、ユーザー企業のIT部門のバリューアップに引き続き貢献したいと語る。「この取り組みを通して、お客様との信頼関係を強化し、気軽にご相談いただける関係を作ること。また、お客様同士の情報交換のつなぎ役になること」が、1コンサルタントとしての大橋氏の目標であり、また最大のモチベーションでもあるからだ。

 最後に参加者に向けクロージングの言葉を求められた二人は、それぞれ次のように語ってディスカッションを締めくくった。

 「今日の企業システムは、ビジネスを改善し、ドライブするためのものであるはず。そのサイクルは、早ければ早いほど良い。それをやるのに最適なのは、標準技術を使うことだ。今後も、この方向性で管轄のITシステムを作っていきたい」(岩崎氏)

 「日本でもJava EE 6に取り組む機はいよいよ熟した。後は決断するだけで、何よりもスピードが大事。全力でご支援するので、皆さんもぜひ前に踏み出してみてほしい」(大橋氏)

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