
UXに本気のマイクロソフト、MIX09でデザインプロセスを語る
UXに本腰のマイクロソフト
「この不況の時にこそUXデザインを!」――Microsoftが開催したウェブ開発者向けカンファレンス「MIX09」で、同社のBill Buxton氏は基調講演の冒頭、会場に訴えかけるように大きな身振り手振りでこう切り出した。
不況に喘ぐ現状と大恐慌時代を照らし合わせ、大恐慌時代の1926年にKodakが黒1色で販売していたカメラを多色展開し、付加価値をつけて販売していた例を挙げ、不況の時にこそデザインが重要視され、革新的なプロダクトが誕生するチャンスだと訴えたのだ。
このシーンは衝撃的だった。以前のMIXでは、こうまで言い切ることもなかった。これまではテクノロジー視点から「ユーザーエクスペリエンス」(ユーザー体験、以下UX)が語られることが多かったのだが、今回は違う。UXが基調講演の冒頭からデザインプロセス主体で語ったのだ。MicrosoftのUXに対する本気度を迫力満点で見せつけられる結果となった。
この演出を基調講演の、しかも冒頭にぶつける――Microsoftは相当のリスクを考えただろう。称賛に値するヒトコマだった。
デザインスケッチから生まれるUX
Bill Buxton氏は、Microsoft Researchの主任研究員を務めている。今回の参加者には彼の著書「Sketching User Experiences」が配布されたが、その内容の大半は文章ではなく、彼が取り組んできたデザインスケッチで埋め尽くされている。
目を引くのは、前半の大部分を割いてApple製品(iPod)に関する緻密な調査および分析結果を載せていることだ。現に基調講演でも、Appleが先のKodakのアイデアにヒントを得てiPodを多色展開したことに触れ、過去の成功事例を上手くアレンジしたとしてライバルを称賛している。
Buxton氏は、工業デザインのデザインプロセスを例に、アイデアからスケッチに起こす反復作業と、ユーザーのプロダクトに対する情熱的な体験と経験をかたちにすることの重要性を訴えた。これは、この後で発表される「Expression Blend 3」の新機能「SketchFlow」への前ふりであろうか。
Buxton氏はデザインスケッチを反復して描き、何度もトライ&エラーを繰り返しながらイメージを具現化するためのツールを切望している。これは多くのデザイナーにとっても同じ見解だろう。