UXに本気のマイクロソフト、MIX09でデザインプロセスを語る

大関興治(セカンドファクトリー) 齋藤善寛(セカンドファクトリー) 小川達樹(セカンドファクトリー)
2009-03-31 13:54:01
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800人を擁するMicrosoftのデザイン部門

 基調講演ではMicrosoft社内のデザインの現状についても語られた。Buxton氏がMicrosoftに入社した頃はデザインに関する部門が少なく、体制もあまり良くなかったという。

 しかし、デザイン部門の強化を図った結果、現在では800人ものデザイナーを抱える組織になった。Arc MouseやZuneのプロダクトは、彼らによってデザインされているとも語っている。

ハードウェアに定評あるMicrosoftの新マウス「Arc Mouse」。4月17日には新色も発売される予定だ。(画像をクリックすると拡大します) ハードウェアに定評あるMicrosoftの新マウス「Arc Mouse」。4月17日には新色も発売される予定だ(画像をクリックすると拡大します)
MicrosoftのiPodキラー「Zune」(画像をクリックすると拡大します) MicrosoftのiPodキラー「Zune」(画像をクリックすると拡大します)

 現に最近のMicrosoftのロゴやプロダクトは、過去の無機質なデザインから脱却し、かなり洗練されたデザインに生まれ変わってきている。

Expression Blend 3「SketchFlow」

 Expression Blend 3では多くの新機能が盛り込まれたが、中でも注目すべき機能は「SketchFlow」である。「SketchFlow」は手書きスケッチに画面遷移の概念を与え、簡単なインタラクションの実装やダミーデータのバインディングまでやってのける。

 SketchFlowにより、デザイナーは手書きのスケッチを利用したプロトタイピングを素早く作成でき、UXのイメージ検証を、容易に、初期段階で、何度でも行うことが可能になる。

Expression Blend 3では期待の新機能「SketchFlow」が提供される(画像をクリックすると拡大します) Expression Blend 3では期待の新機能「SketchFlow」が提供される(画像をクリックすると拡大します)

 昨年、Adobe Systemsが同様のツール「Flash Catalyst」を発表している。しかし、Flash CatalystはAdobe Creative Suite 4とAdobe Flex Builder 3の間を橋渡しするツールとしての役割が強いように思える。

 一方の「SketchFlow」は、グラフィックデザインよりも前のアイデアを具現化する工程に利用でき、より初期の段階でプロトタイピングを行うことにより、クライアントのフィードバックを簡単に得ることができるツールといえる。どちらも優れたツールではあるが、それぞれの使い方やユーザー層は異なるだろう。

 Microsoftは、Expression Blendの領域をオーサリングツールからアイデアツールにまで広げようとしているのだろう。SketchFlowの登場は、デザイナーに限らず、デベロッパー、いや、誰もがアイデアをデザインスケッチから具現化できることを暗に示したかったに違いない。

ユーザーエクスペリエンスの現状

 ここ数年、UXは大きなトレンドであった。Microsoftも.NET構想の中でUXがソフトウェアの品質を向上させる大きな要素だと大々的にアピールしている。

 しかし、多くの開発者は概念的にUXが重要であることを十二分に理解しているが、実際にソフトウェアにUXを取り入れることについては、大変苦労しているケースが多いと感じる。

 もちろん、テクノロジーの進化はUXに大きな影響をもたらす。事実、SilverlightやWPFの登場によって.NETアプリケーションのインターフェースは様変わりした。MIX09の基調講演で発表されたRolling Stone、NETflix、KEXPなどのウェブコンテンツやウェブアプリケーションでは、様々なユーザー体験が提供されている――しかも短納期かつ容易に、だ。

 しかし、これはツールが「手助け」し、かつUXを真剣に検討している場合に限る。

 手前味噌ではあるが、セカンドファクトリーが10月にリリースしたJellyfish Deepzoomのオープンソース化も同様の考えである。ツールが「手助け」し、余力をIAなりUXなりに配分してほしいという思いからリリースしたのだ。

 しかし、ツールがソフトウェアにUXをもたらすと誤解し、浅はかなアイデアでバッドエクスペリエンスを提供してしまっている例が少なくないことも事実。AdobeのFlexが登場して間もない頃、Flashと比較されて「動くVB」と揶揄されたことがあった。今回の基調講演や新機能を見るに、まさに「ツールだけに頼るな」というメッセージを感じる。

筆者紹介

セカンドファクトリー 大関興治・齋藤善寛・小川達樹(MAIL
デザイナーとデベロッパーの融合した開発体制を目指し1998年1月に設立。人間中心設計を採用した開発プロセスや、長年のRIA(Rich Internet / Interactive Application)の開発経験に基づき、PC向けアプリケーションやウェブサイト、ウェブアプリケーションのみならず、さまざまなデバイスに対しても革新的なインターフェースを持つアプリケーションを提供。Microsoft Global Partnerに認定され、緊密な連携のもと活動を行っている。

「アプリケーションにおもてなしを」をテーマとし、ユーザーインターフェースとRIA開発を得意分野とする。UXデザインコンサルティングやプロトタイピング、製品化支援などのサービスも展開。

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