あなたの知らないPKI(5)--PKIに関係する諸制度(行政機関編)

佐藤直之(日本ベリサイン)
2009-02-05 10:56:01
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5.5 商業登記に基づく電子認証制度(電子認証登記所)

 電子認証登記所は、法人の登記情報に基づく印鑑証明書や資格証明書の電子版として、法人についての電子証明書を発行する。本制度は法人登記を所管する法務省によって提供されるもので、平成12年10月に一部の登記所から運用が開始された。

 電子認証登記所が発行する電子証明書には、発行対象である法人に関する情報として、商号、本店の住所、代表者の氏名、資格、および公開鍵等の情報が記載される。また、電子証明書を発行した者として、登記官の情報とその電子署名が付与される。電子証明書の有効期間は3カ月から27カ月。発行の手数料は有効期間の長さに依存し、2500円(3カ月)〜1万6900円(27カ月)だ。電子認証登記所は商業登記簿を管理する登記所のシステムと連携しており、発行された電子証明書の記載事項に相当する登記簿の事項に変更が生じた場合、自動的に当該電子証明書は無効にされる。

図5-4 電子認証登記所の仕組み(画像をクリックすると拡大します) 図5-4 電子認証登記所の仕組み(画像をクリックすると拡大します)

 発行された電子証明書の用途は限定されておらず、行政への手続きはもとより、民民間の商取引にも利用できる。先ほど登場したe-Tax(国税電子申告・納税システム)のほか、商業法人オンライン登記申請、動産譲渡オンライン登記申請、特許庁インターネット出願システム、その他の各府省の電子申請システムでも利用することができる。

 実は、政府認証基盤に接続した民間の認証局が発行する一部の電子証明書は、電子入札や電子申請のシステムにおいて、実質的に、法人の用途で利用されている。このため、電子認証登記所による電子証明書とこれら民間の電子証明書との利用範囲の区別はわかりにくいかもしれない。この点、基本的に、法律の定めるところにより法人としての電子署名が求められる場合には、電子認証登記所を利用する必要があると考えてよい。


 これまで数回にわたり、我が国の社会基盤として利用される代表的なPKIについてその概要をまとめてきた。今回とりあげなかった他の例としては、保険医療福祉分野での利用を目的に厚生労働省が推進するヘルスケアPKI(HPKI:Healthcare Public Key Infrastructure)があり、また、社会基盤とは少し異なるかもしれないが、大学間で連携を行うためのPKIや、特定業界の特定用途のための業界標準的なPKIなども検討あるいは実装が進められている。

 見てきて明らかであったように、PKIは我が国の社会基盤に少しずつとり込まれてきている。これらのPKIの運用にあたって色々な課題が指摘されているのは事実だが、PKIが今後ますます身近になってくることは間違いないだろう。ただし、社会基盤におけるPKIの利用用途のほとんどは電子署名(デジタル署名)であって、暗号や認証(オンライン認証)のためにPKIを採用する例はあまり多くないようだ。次回は、本連載のまとめとして、我が国の社会基盤におけるPKIの利用状況を総括し、今後の方向性について検討を加えたい。

佐藤直之
著者紹介

佐藤直之(日本ベリサイン 主席研究員)
2001年5月、日本ベリサイン入社。前職において暗号技術についての研究活動に従事し、現職では情報セキュリティ関連、特にPKIを中心としたコンサルティング業務等に従事。セキュリティの技術面だけでなく、電子署名法やe文書法など情報の電子化に関連する法令・制度の面において多くの知見を有する。

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