Windowsの歴史 Windows NT編:今のWindowsの礎が築かれるまでの道程

横山哲也(グローバル ナレッジ ネットワーク)
2009-07-09 17:43:01
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 Windows 95登場の直前に発売されたのがWindows NTだ。Windows NTは現在のWindowsの直接の祖先にあたる。

Windows NT誕生

 マイクロソフトは、サーバOSとして「OS/2」をベースにしたシステムをIBMと共同開発していた。しかし、Windows 3.1の成功をふまえ、マイクロソフトではサーバOSをWindowsベースとするように方針が変わった。そして、マイクロソフトはOS/2から手を引き独自のOS開発を開始した。これが現在のWindows NTである。

ACEイニシアチブとARC

 Windows NTの開発が行われていたころは、RISCベースのCPUが数多く登場した。そして「(CISCベースである)インテルCPUの性能向上は限界だ」「これからはRISCの時代だ」という声が高まっていた。当時人気があったCPUは、ディジタル・イクイップメント(DEC、現ヒューレット・パッカード)のDEC Alpha、IBM PowerPC、MIPS R4000などである。サーバベンダーは、マイクロソフトと協力して「ACE (Advanced Computing Environment)イニシアチブ」という団体を立ち上げ、「ARC(Advanced RISC Computer)」規格のPCの設計を開始した。

 とは言え、インテルx86のソフトウェア資産は大量にあるため、結局マイクロソフトはインテルx86とRISC(ARC)の両方をサポートすることになった。なお、当時のMacintoshはPowerPCを採用していたが、ARCベースではなかったためWindows NTは動作しない。

 その結果、Windows NTは一時期Alpha、R4000、PowerPC、そしてx86の4種類のアーキテクチャをサポートした。しかし、後にインテルはRISCプロセッサの長所を取り込むことで、自社のプロセッサの大幅な性能向上に成功し、RISCブームは下火になった。

 現在のWindowsは、RISCプロセッサをサポートしない。それでもWindows NTが複数のCPUをターゲットとして作成されたことは無駄ではなかった。64ビットプロセッサ向けのWindowsが極めて短期間で登場したのは、当時の経験があったからこそ可能だったこと考えられている。

RISCのその後

 RISCブームは下火になったとはいうものの、RISCプロセッサ自体に欠陥があったわけではない。PowerPCはMacintoshに採用されており「PCより高速」という評判だったし、その他のCPUも、主にUnixを中心に発展した。

 Unixのアプリケーションの多くはソースコードが流通しており、Cコンパイラさえあれば異なるCPUに移植することは難しくなかった。Unixは当初から多くのCPUで動作しており、多くのアプリケーションはCPUの違いを意識しないで済むようなソースコードになっていたからだ。ところが、Windowsアプリケーションのほとんどはコンパイル済みバイナリの形態で流通していた上、インテルCPUのみをターゲットとしていたため、新しいCPUのために移植するのが困難だった。

 RISCベースのPCが受け入れられなかったのは、互換性のなさを補うだけの圧倒的な性能差がなかったためだ。少し早い程度ではソフトウェア資産の重みに勝てない。

ARCの名残

 ARCはUnixベースのOSとOS/2ベースのOSを選択可能としていた。そのため、システムディスクにはブートOSを選択する機能が実装された。現在のWindowsで、ブートOSが格納された場所を「ARC名」で表示するのはARCの名残である。

 筆者は、ARCベース(と思われる)PC「DEC Alpha AXP/150」を使ったことがある。ARCベースのWindows NTは起動システムを格納するために数十メガバイトの専用パーティションが必要だった。これを「システムパーティション」と呼ぶ。一方、OSがブートするのが「ブートパーティション」である。ARCの規格ではシステムパーティションはFATでフォーマットしなければならないため、セキュリティ上のリスクがある。そこで、ARCベースのWindows NTはシステムパーティションを隠しドライブに設定するオプションが用意されていた。

伝説のプログラマー

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