iPhone 3Gを考える:iPhone 3Gからはじまる悪夢

エリック松永
2008-06-10 17:00:00
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 WWDCでSteve Jobs氏は、講演の大半をiPhone 3Gに費やしたという。その講演でiPhoneの戦略が明らかになってきたのだが、正直驚きと落胆を隠せなかった。

レベニューシェアにこだわらないアップル

 まずは驚きから説明しよう。

 BloombergのConnie Guglielmo氏は、Jobs氏はiPhone 3Gで通信キャリアとのレベニューシェアモデルを採用しないと発言し、NASDAQで株価を2.2%落としたと報告していた。

参考:Apple Unveils Faster IPhone to Lure Business Buyers (Update4)

 レベニューシェアモデルの終焉は、キャリアとの独占契約の終焉を意味し、SIMを変えればどのキャリアで利用できるようなSIMロックフリーの端末になるということなのかもしれない。その可能性は大きいだろう。

 iPhone 3Gは199ドルからと価格を大幅に下げたので、キャリアフリーになればかなりの市場拡大が期待できる。米国以外でも同水準の価格で提供されるとのことだが、今日の報道を見る限り、日本でも2万円台になる可能性がある。

 これはかなり魅力的な価格だ。通信キャリアからもたらされる通信費のおこぼれよりも、市場を拡大することによる収入を狙ったと理解するべきだろう。

 ZDNet Japanのコラムで、通信費のレベニューシェアはメーカーにとって新たな収入源になると書いたが、Appleは3G iPhoneの投入を機に、その収入源を自ら捨てて市場拡大という戦略と取ったのだ。市場の反応は前述の通りポジティブとは言えないが、キャリアに縛られず、さらに安いとくれば筆者はWelcomeだ。

参考:ソフトバンク株の行方--「iPhone」発売決定も不透明感ぬぐえず

「公私」の一側面を強調しかねない使われ方

 もう1点は残念ながら、落胆(筆者の個人的な想い)だ。

 今回、iPhoneは本気でBlackBerryを意識したビジネスユーザの獲得を図るらしい。Microsoft Exchange、Cisco IP Sec VPNのサポートは、ビジネスユーザの武器「スマートフォン」を意識したものだ。

 iPhone向けに提供される他社製アプリケーション群――革命的な音楽ツール「CowMusic」、eBay専用アプリ、SEGAの「スーパーモンキーボール」――の登場で、さらにエンターテイメント性を高めたiPhoneになったかと思いきや、ビジネスユーザの獲得を主要な4つの課題のひとつとして紹介したことで、一気に興ざめしてしまった。

 ちなににその4つの課題とは、

  1. 高速化
  2. 企業システムへの対応
  3. 他社製アプリの対応
  4. グローバル対応

 となる。

 「暗い喫茶店の片隅で、中年男が暗い面持ちでiPhoneに向かっている。彼は会社から支給された法人向けiPhoneを使って営業がうまくいかなかったことを、iPhone向け営業アプリケーションで報告している。この法人向けiPhoneは、全てのエンターテイメント機能がマスクされ、利用制限もかかっている。音楽も聞けなければ、業務以外のインターネットアクセスも制限され、通話記録も全て録音されるビジネス端末だ。この男にとってiPhoneは怖い上司にしか見えない……」

 ――そんな悪夢をみてしまうのは筆者だけなのだろうか……。

Eric
筆者紹介

エリック松永(Eric Matsunaga)
Berklee College of Music、青山学院大学大学院国際政治経済学研究科(修士)卒業。19世紀の米国二大発明家Graham Bellを起源に持つ米国最大の通信会社AT&Tにて、先進的なネットワークコンサルティングの領域を開拓。その後アクセンチュアにて、通信分野を柱に、エンターテインメントと通信を活用した新事業のコンサルティングをグローバルレベルで展開する。現在、通信業界を対象にした経営コンサルタントとして活躍中。

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