フォーマットとしての「iBooks」とEPUBの関係

海上忍
2012-01-27 11:37:00
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 電子ブック制作ソフト「iBooks Author」が、最終出力形式としてiBooksファイル(*.ibooks)と、その一時作業用としてIBAファイル(*.iba)を利用することは前回述べたとおり。そしてiBooksファイルがEPUBをベースに独自の拡張をくわえたものだという点も、重要なポイントだ。

 教科書のような社会公益性の高い存在には(オープンかつ世界標準規格の)EPUBを選ぶべき、という意見もあるだろうが、iBooksファイルは有償でなければiBookstoreを経由しない自由配布が認められる。教科書といえども、医療など専門分野向けや副教材という位置づけであれば、プロプライエタリな仕様であることに目くじらを立てる必要もないだろう。むしろ懸念すべきは、Appleによる審査が行われるであろう点だと個人的には考えている。

 ただ引っかかるのは、iBooksとiBooks Authorの新機能の多くはEPUB 3でも実現可能だということ。詳細は別の機会に譲るが、CSSを活用したレイアウト機能の強化や、JavaScriptを利用したインタラクティブ性、縦書きサポートを含む多言語対応、MathMLを利用した数式の表現など、独自の拡張を施さなくてもIDPFの最終推奨仕様たるEPUB 3で足りるはずだ。

 どのような拡張が施されているかは、iBooksファイルを展開(拡張子を「.zip」に変更すればOK)すると現れる「OPS」フォルダ内を探れば、ある程度調べることができる。

 OPSフォルダの構造そのものを見るかぎり、iBooksファイルはEPUB 2/3とほぼ同じと言っていい。しかし、OPSフォルダ直下にあるOPFファイル(ibooks.opf)を見ると、「xmlns="http://www.idpf.org/2007/opf"」という記述もあり、正確にはEPUB 2がベースであることがうかがえる。

 OSSのサブフォルダ「assets/css」以下には、多数のCSSファイルが保存されているが、そのすべてに1行目に「@namespace ibooks "http://www.apple.com/2011/iBooks";」という記述を確認できる。これはCSSの名前空間を使用する宣言であり、iBooksファイルには独自の属性定義が含まれるということだ。実際、それらCSSには「-ibooks-line-hints」や「-ibooks-positioned-slots」といった記述が多数含まれる。

 以上の材料から判断すると、iBooksファイルは「EPUB 2をベースにCSSの拡張やHTML5対応など独自機能をくわえた新フォーマット」と考えられる。IDPFによる(縦書きなどの)仕様が確定する前に開発がスタートしたであろうことも考慮すると、EPUB 3を待てずEPUB 2に独自機能を追加する道を選んだとも推測できる。縦書きや右開きといったEPUB 3で定義された機能がiBooksファイルに未実装なことは、その裏付けかもしれない。

iBooksファイルの構造はEPUBのそれに準じているが、CSSなどに独自の拡張が加えられている
iBooksファイルの構造はEPUBのそれに準じているが、CSSなどに独自の拡張が加えられている
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