複雑化するシステム、モデルベース開発で評価を--IPAと仏LIST

杉山貴章(オングス)
2012-02-28 12:29:00
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合同ワークショップで共同研究分野を決定

 独立行政法人情報処理推進機構(IPA)とフランスの原子力・代替エネルギー庁システム技術統合研究所(CEA LIST)は、2月21日から3日間にわたり沖縄県那覇市で合同ワークショップを開催した。2011年10月に締結された「研究協力に関する相互協力協定」に基づくもので、ソフトウェアの信頼性に関する国際的な枠組みでの協力関係を結ぶにあたり、双方のこれまでの取り組みを理解し、具体的な共同研究分野を探るのが主な目的だ。

 最終日の23日には、その成果として複雑かつ高度な高信頼性システムを主な対象とした次の3項目についての重要性を共有し、継続的な情報交換と人的交流を行うことへの合意が発表された。

  1. モデルベースエンジニアリングとトレーサビリティの確保
  2. 高信頼システムの品質評価・監査の仕組みの確立
  3. 準形式手法への継続的な取り組み

 以下に、各項目に関する具体的な内容を紹介する。

1. モデルベースエンジニアリングとトレーサビリティの確保

 近年のIT産業の分野では、単体のシステムが高性能、高機能化したことに加え、複数のシステムが複雑に連携して動作する環境が当たり前になってきている。そのような複雑化する統合系システムにおいて信頼性を確保することは容易ではなく、日本のみならず世界の産業界において極めて深刻な課題になっている。

 この複雑性をコントロールするための方法のひとつとして注目されているのが、「モデルベース開発」ないし「モデルベースエンジニアリング」だ。

 モデルベースエンジニアリングとは、開発対象をモデルを用いて表現し、分析や設計、システム検証、コード生成など、一連の開発工程をモデルを中心に進める考え方である。統合系システムにおいてモデルベースエンジニアリングが重要な理由を、IPAソフトウェア・エンジニアリング・センター(SEC)副所長を務める立石譲二氏は次のように説明する。

IPAソフトウェア・エンジニアリング・センター 副所長 立石譲二氏
IPAソフトウェア・エンジニアリング・センター 副所長 立石譲二氏

 「従来のシステムでは、対象となるユーザーの利用シーンに合うように開発を行っていました。しかしスマートグリッドのように非常に多種の機器やシステムが連携して動作するような環境では、想定とは異なる用途で利用される可能性も考えなくてはなりません。その影響をどう評価すればいいか。実際にプログラムを作って評価するのでは手間がかかりすぎて現実的ではありません。そこで、モデルをベースとした評価やテストが有効になるわけです」(立石氏)

 モデルベースの開発を行うにあたって特に重要なのがトレーサビリティの確保だ。設計の変更が具体的にコードのどの部分に影響するのかや、テストによって判明した問題点の影響範囲はどの程度なのかなど、開発工程の様々な場面で情報をトレースできなければならない。そのためには適切なツールによるサポートが不可欠である。それも、全ての工程で一貫し、かつ業界横断的に利用できるツールチェーンを構成するためには、オープンな技術を利用することが重要である。

 LISTでは早い段階からモデルベースエンジニアリングの研究に取り組んでおり、ツールの面においてもEclipseベースのモデリングツール「Papyrus」を開発するなどの実績を持っている。今後はそれらの取り組みをさらに発展させるために、産業界でパートナー企業を募ってアフィリエイトプログラムを開始する予定だという。その一方でグローバル化を進めるためには、それぞれの国に固有の慣習などを考慮しなければならない。そこでIPA側からは、LISTの取り組みに関する日本で適切な配備や展開に向けた協力を行っていくことになる。

 この項目に関する今後の予定としては、LISTからIPAへ共同研究プログラムの提案を行うほか、5月に東京で開催される「SODEC 2012」に当該プログラムのための展示ブースを設けること、IPAの藤江一正理事長が年内にLISTを訪問することなどが決められたとのことだ。

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