「見た目」だけがデザインではない:シナリオ主体のUXを実現したTARGET

大関興治(セカンドファクトリー) 齋藤善寛(セカンドファクトリー) 小川達樹(セカンドファクトリー)
2009-03-31 16:08:01
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膨大なユーザーデータが生んだIE8

 Microsoftが開催したウェブ開発者向けカンファレンス「MIX09」。2日目では、Internet Explorer 8(IE8)がさまざまな機能とともに披露された。同社はIE8の機能の詳細を紹介する前に、機能の多くは膨大なユーザーデータから導き出された答えだと語っている。

 MicrosoftはOffice 2007を皮切りに、膨大なユーザーデータからあるべきUIの姿を導き出そうとしている。それはWindows 7でも同様だ。

 IE8は設計思想として「Home studies of dozens of ”normal” families living with IE8 every day.」を掲げ、毎日の家庭生活にフィットさせることをコンセプトとしている。

シナリオから生まれるUX

 IE8の発表が終わった後、初日の基調講演に登壇したBill Buxton氏が再登場した。初日と同じように、UXがテクノロジー主体だけでなく、シナリオ主体でももたらされるひとつの成功事例を訴えるため、Deborah Alder氏を紹介した。

 つまり、初日だけではなく、2日目でもUXに関する内容が盛り込まれていたのである。

 Alder氏は米小売大手TARGETの処方薬のラベルやパッケージをリデザインし、薬の誤飲を大きく減らすことに成功したデザイナーだ。Alder氏がこのデザインに取り組んだきっかけは、処方薬のパッケージの視認性の悪さから、祖母が誤って祖父の薬を服用し、死線を彷徨う経験をしたことから始まっている。

薬のパッケージに記載されている様々な注意書き(画像をクリックすると拡大します) 薬のパッケージに記載されている様々な注意書き(画像をクリックすると拡大します)

 処方薬のラベルやパッケージングを調査してみると、デザインは複雑でわかりにくく、統一された表記や情報フォーマットがないことに気付き、Alder氏はリデザインの必要性を強く感じたという。まさに「IA+DESIGN」である。

 現にアメリカの60%の市民が正しく処方薬を服用していないこと、その問題を解消するために莫大なコストがかかっていることを指摘し、デザインがコストに大きく影響することを強調した。

パッケージのデザイン分析(画像をクリックすると拡大します) パッケージのデザイン分析(画像をクリックすると拡大します)

 Alder氏は、ユーザーの調査および分析から、いくつものプロトタイプを作成した。ラベルの情報を統一することや誤解を招くアイコンを刷新すること。また、複数の家族に対して誰の処方薬か間違いのないようにカラーリングを取り付けるアイデアを生み出した。

ラベル情報の統一とアイコンの刷新 ラベル情報の統一とアイコンの刷新
家族の誤飲を防ぐためのカラーリング 家族の誤飲を防ぐためのカラーリング

 完成したパッケージは「design for all」をコンセプトに提唱していたTARGETの理解を得て、「ClearRx」シリーズのすべてに適用されることとなった。

リデザイン後のClearRX リデザイン後のClearRX

 「ClearRx」シリーズはその洗練されたデザインから、多くの称賛を受けた。そしてもちろん、この事例は我々にもシナリオからくるUXの重要性をまざまざと示してくれる。

 UXのパワーが、Alder氏にとっても、患者にとっても、そしてTARGETに対しても、大きなWINをもたらした好例だろう。

デベロッパーとデザイナーのMIXが実現する未来

 今回のMIX09で、Microsoftはデベロッパーとデザイナーが融合する未来を、基調講演や「SketchFlow」を通じて見せてくれた。同社が着実に、ソフトウェアにUXをもたらすための支援を実現してきていることは間違いない。

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