「Adobe Digital Publishing Suite」を試す(2)

海上忍
2011-01-31 10:50:23
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 Adobe Digital Publishing Suiteを使い、雑誌スタイルの電子ブックを出力するワークフローを追うテーマの第2回です。前回はAdobeが配布するサンプルでとりあえず出力しただけですが、今回は日本語を文書の出力に挑戦してみます(前回はこちら)。

Adobe Digital Publishing Suiteのお約束

 Adobe Digital Publishing Suite(DPS)は、ファイルエクスポートを目的としたInDesignアドオンではありません。将来的にはともかく、現時点では縦、横方向にページを繋げたり目次を付けたりといった工程は手作業となります。デザインしてしまえばそれらを意識する必要がない紙向けの作業とは大きく異なる、と言っていいでしょう。まずは、従来の工程に加えて行う作業を眺めてみます。

・全体の構造を考える

 DPSが出力する電子ブックは、横方向だけでなく縦方向にもページをつなげることが可能です。PLAYSTATION 3(PS3)やプレイステーション・ポータブル(PSP)に採用されている「クロスメディアバー」(XMB)似の構造とでも言えばいいでしょうか、西欧諸語の書物同様、左から右への横方向を基本としつつ、章単位では縦方向にページ遷移させるという、二方向へのページ遷移をサポートしています。

 なお、ページサイズは一律ではありません。紙の本では3つに折り畳まれるような横方向に長いページも挿入できますし、縦方向に長いページにもできるので、体裁という意味では自由度の高い電子ブックに仕上げることができます。

Digital Publishing Suiteで制作された「WIRED」の構造。このように、ページ組は横と縦の二方向で構成される Digital Publishing Suiteで制作された「WIRED」の構造。このように、ページ組は横と縦の二方向で構成される

・レイアウトは「固定」

 DPSで出力する電子ブックは、現在のところ「固定型」が前提です。書き出す時点で対象ページのサイズ(解像度)を指定し、その範囲内でテキストを表示するため、EPUBやKindleのようなリフロー型ではなく、ページあたりの文字数は固定となります。さらに文字など各種データはPNG画像にラスタライズされて出力されるため、文字の拡大/縮小表示には対応せず、iOSならではのピンチイン/アウトもサポートされません。つまり画像データとして書き出されるため、文字を検索することもできません。

 例外はインタラクティブな機能で、オーディオ/ビデオの再生といった各種機能(下図)をSWFファイルとして埋め込むことができます。SWFの作成には、同じくAdobe Labsで配布されているAIRアプリ「Interactive Overlay Creator」を利用できます。

Interactive Overlay Creatorで利用できるインタラクティブ機能
360 Viewer360度回転可能なオブジェクトを表示する
AudioMP3オーディオを再生する
Image Pan小さい領域に大きな画像の一部を表示する
Panoramaパノラマ画像を表示する
VideoMP4(H.264)動画を再生する
Web View領域内にウェブサイトを表示する
Adobe Labsでベータ版が公開中の「Interactive Overlay Creator」 Adobe Labsでベータ版が公開中の「Interactive Overlay Creator」 ※クリックすると拡大します

素材を準備する

・「issue」フォルダに必要な素材

 DPSでは、「issue」フォルダに収録したファイルをソースとして電子ブックを出力します。issueフォルダ内部には「Stack」と呼ばれるフォルダがいくつか用意され、各Stackフォルダごとに縦方向につながって出力されます。つまり、横方向のページのぶんだけStackフォルダを用意することになります。

 InDesignのファイル(*.indd)にも命名ルールがあります。ファイル名末尾には横向き文書の場合「_h」(「-l」も可)を、縦向き文書の場合「_v」(「_p」も可)を付けます。デバイスが横/縦どちらの持ち方でも適切に表示されるためには、「page1.indd」というファイルがある場合、横向きの「page1_h.indd」と縦向きの「page1_v.indd」という2つのバリエーションを用意しなければならないことになります。

 さらに、各Stackフォルダには、目次に表示するためのサムネイル(tocFile.png/70x70ピクセル)を用意しなければなりません。

 以上の条件を満たした(必要最小限の)issueフォルダは、以下に示す図のような構造となります。この図では、各Stackフォルダに「Links」というサブフォルダがあるように、実際にはInDesign文書に含まれるリソース一式も収録します。フォントフォルダ(Document fonts)や映像/音声などインタラクティブな要素を収録するフォルダ(OverlayResources)も、必要に応じて配置することになります。

必要最低限の構成のissueフォルダ。これをDigital Content Builderで読みこめば、体裁だけはWIRED(?)な電子ブックを生成できる 必要最低限の構成のissueフォルダ。これをDigital Content Builderで読みこめば、体裁だけはWIRED(?)な電子ブックを生成できる ※クリックすると拡大します

・日本語は利用できない!

 最後になりましたが……結論からいうと、現行バージョン(2010/10/25リリースのBeta 1)のDPSでは、日本語を扱うことができません。日本語フォントを含むInDesign文書をStackフォルダに入れ、Digital Content Builderで電子ブックの生成処理を開始しようとしたところ、「rasterizeDocumentPage」とエラーメッセージが表示されて処理が中断されました。

 InDesign文書だけでなく、Digital Content Builderでメタデータを設定することも、Stackフォルダの名称に日本語を含むこともできません。日本語フォントの処理がどうなるかなど、気になる点が多いだけに、ベータ版のアップデートが望まれるところです。

残念ながら、現在のBeta 1では日本語を扱うことができない 残念ながら、現在のBeta 1では日本語を扱うことができない
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