来るべき「EPUB 3.0」を整理する(1)

海上忍
2010-12-17 15:59:21
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 はやいもので、2010年も残りわずか。振り返れば、EPUBの日本語対応にばかり気を取られ、他の強化項目をないがしろにしていたかも……ということで、今回は来るべきEPUB 3.0の全容についてまとめてみたいと思います。

EPUB 3.0のサブグループ

 EPUB 3.0の策定状況は、Google Code上に設けられたウェブサイトで逐一報告されています。それによれば、EPUB 3.0に関わるコミッタ(この場合仕様策定に関与できる権限を与えられた人物)が65名、責任者という位置付けのオーナーが5名の計70名で活動が続けられています。

 策定作業は、いくつかのサブグループに別れ進められています(表1)。EGLSの活動状況は、日本語を母語とする我々にとって関心が高い縦書き対応を通じて紹介してきましたが、ルビを扱う「Annotations」、目次の整備などを担当する「Navigation」といったサブグループも存在します。

 これらサブグループで議論された内容は、IDPFのEPUBワーキンググループに吸い上げられ、やがて草案(Editors Draft)の形へと収れんされていきます。本稿執筆時点では、11月20日公開のEditors Draft第1版が最新で、第2版は今月の公開が予定されています。

表1:EPUB 3.0のサブグループ
サブグループ名主な担当分野
Annotations脚注や注釈、ルビ、正誤表など
EGLSEnhanced Global Language Support。縦書き対応はここに含まれる
MetadataEPUBに詳細なデータを持たせるための仕様
Navigation目次(NCX)の整備など利用しやすさの向上を図る
Rich Media, Ads, and Interactivity動画や広告など動的コンテンツを扱う
Styling and Layoutページレイアウトなど外観の向上
TextContentEPUBファイル間の連携など

EPUB 3.0の目玉「リッチメディア」

 電子化されても本の主役はテキスト、あくまで文章で勝負!……それにも一理ありますが、紙と切り離して新たな可能性を探るべし、という意見にも説得力があります。その考え方の裏付けとなるのが「リッチメディア」、すなわち動画や音声などの動的コンテンツです。

 EPUB 3.0では、前ページの表1に挙げた「Rich Media, Ads, and Interactivity」サブグループが規格をとりまとめています。内容は多岐にわたるうえ、現段階では具体性に欠ける部分も散見されますが、ここではその方向性に着目し、いくつか要注目点をピックアップして解説してみましょう。

ビデオ/オーディオのサポート

 本文(ex. XHTML)に記述する形でのビデオ/オーディオのサポートが掲げられています。形式としては、EPUBのファイルパッケージに収録する形と、外部サーバがストリーミングするものを受信する形があります。ボタンをクリックすると再生が始まる動画や、BGMとしてループ再生する音楽など、具体的な活用方法に基づいた規格の策定が進められる予定です。オンライン上のコンテンツへのアクセスに備え、キャッシュ機構の必要性についても触れられるなど、実装が必要な機能についても言及されています。

オーディオとの同期

 ただオーディオを再生可能にするというだけでなく、所定のページが開かれたところで再生が始まるなど、ページ遷移との同期が考慮されています。十数年前に流行ったCD-ROMマルチメディアタイトルを連想させますが、テキストのハイライト表示と連動させるなど、語学学習への応用を考慮している節も見受けられます。

インタラクティブ性

 今回紹介する項目でもっとも注目されるべきが、このインタラクティブ性だと思います。Google Code上の文章では、具体的な活用事例がいくつか挙げられています。それを読むと、コミッターの方々がイメージするEPUB 3.0の姿が浮かび上がってきます。

 a.クレヨンを拾い上げる動作で、ページに色付けできる。しかも、色をそのまま残すことができる。
 b.天体シミュレーション。時間や緯度/経度などの情報にあわせ、天体が変化する。
 c.Mathematica風数学シミュレーション。
 d.クイズブック。出題者に回答を送信できる。
 e.料理のレシピ本。タイマーを内蔵することにより、調理時間を測定できる。

 次回は、EPUB 3.0のインタラクティブ機能について、さらに掘り下げてみたいと思います。

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