「もしドラ」と「適当日記」が大ヒット、DReaderを推進するダイヤモンド社に話を聞く(後編)

海上忍
2010-08-24 09:00:00
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 電子書籍でも大ヒットを記録した「もしドラ」こと「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」。同書をはじめとして、電子書籍の提供に積極的な姿勢を見せるダイヤモンド社に、その取り組みや今後の展開を聞く第2回。

 今回はダイヤモンド社書籍編集局局長の今泉憲志氏と、書籍編集局第二編集部 電子書籍チームの常盤亜由子氏に、電子書籍ビューワ「DReader」の開発や他社提供に至る経緯を中心にご紹介します。なお、前回の記事は「『もしドラ』と『適当日記』が大ヒット、DReaderを推進するダイヤモンド社に話を聞く(前編)」をご参照ください。

--どのような経緯でDReaderの開発に着手されたのでしょうか。社内で議論を尽くした結果、ということですか?

常盤:組織的に行動しているのだろうと言われますが、そうではありません。後から振り返ってみると、早めに取り組んでいたことが正解だったかもしれません。社内で意見を戦わせるほどの深い議論はなく、「やるなら早いほうがいいだろう」となりました。正直、やってみないとわからないところがありました。ビューアの選定については、読者の立場でいくつか試しつつ、必要とされる機能を見定めていったというところです。

今泉:皆で集まってけんけんごうごう、ということはありませんでしたね。ただ、DReaderのベースとなった電子書籍ビューワアプリ「SkyBook」の情報は十分把握していて、高く評価していました。だからSkyBookを開発した高山(恭介)さんとは、早い時期から一緒にやろうという方針が決まっていました。

--現在App Storeでのみ展開しているわけですが、Android Marketなどほかのデバイスに進出する計画は?

今泉:普及したら取り組まざるをえない、というより間違いなくやります。ビューアを開発するかどうかはわかりませんが、コンテンツを出していこうということにはなるでしょう。まだ、なんともわかりませんが。

--ところで、App Storeで展開するにあたっての苦労話をお持ちでしょうか? リジェクトとか……。

常盤:リジェクトはありますよ。回数はさほど多くありませんが、えっ、こんなところで? ツッコミどころはここですか? と感じたことは何度もあります。これは明かしても問題ないと思いますが、書名をホーム画面の仕様(筆者注:ホーム画面に表示できるアプリの名前は、日本語(全角)は6文字、英数字(半角)は11文字までというiOSの仕様上の制限がある)にあわせて短くする作業には苦労しましたね。けっこうな字数がある本のタイトルを6文字にすること自体、そもそもムリがありますからね。知恵を絞った結果が裏目に出た、という(笑)

今泉:「適当日記」が内容でリジェクトされるのでは、と心配していたのですが、なにもありませんでしたね。表紙(電子書籍版の表紙を1〜2ページめくると……)もさることながら、中身は基本的にわい談ですから(笑)。審査ではどういった部分を見られているのでしょうね?

--私が見聞きしたかぎりでは、アップルの製品や社内事情に関する内容は基本的にアウトのようです。コミックでは性的、暴力的な描写がダメなど、日本の一般的な水準よりも相当厳しいようですね(※1)。ところで、再び数字の話になりますが、事業として取り組むからには目標値が設定されると思うのですが。

今泉:電子書籍だけで明確な数字の目標というのは、少なくとも今年度はありません。弊社の書籍事業全体における、トータルの予算枠の中での試みですから。現在は紙と電子を混ぜて考えていますが……個別には見ていますよ。1つの企画が売れる/売れないではなく、電子媒体としてどのくらい数字が伸びるのかを見る時期なのだろうと思います。

※1:詳細は本連載の「電子コミック『働きマン』が配信拒否になった理由--電子書籍時代の検閲」「受験マンガ『ドラゴン桜』ですら一度は配信NGに--電子書籍には“カウンター勢力”が必要」を参照。

--電子書籍の損益管理はどうされていますか? コストはこれだけだから何部以上売れれば収支に見合う、とか。

常盤:1つのアプリを作るのに固定費はいくらかかるのかなど、コスト管理はしています。最初にDReaderベースのアプリを出した4月時点では、市場規模もわからない暗中模索の状態でしたが、強い企画を出せばどうなるかということも含め、勉強のつもりで取り組んできました。それから書籍の点数が増えるにつれ、知見といいますか相場観が身についてきたかな、という印象です。最近では、この内容だからコストはこの程度で、ということも意識するようになってきました。

今泉:まだ市場規模が小さいですから、そこそこ売れた、という程度では採算的に厳しいと思います。ただ、もしドラのように、ある地点を超えて大きく伸びてくると、かなり利益率は高くなります。DReaderによる弊社の電子書籍事業は、現時点でじゅうぶん黒字のレベルに達していますが、やはり大きいヒットがなければ厳しかったでしょうね。それに、iPhone/iPadが今後どうなるか、Androidなどほかのプラットフォームがどう出てくるかといった市場規模も影響してきます。

「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」
紙では100万部超え、App Store有料ブック部門でも1位に輝いた「もしドラ」こと「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」

--6月からDReaderのライセンス供与を開始されていますが、申込状況はいかがですか?

今泉:サンマーク出版とアクセルマークの2社が、すでにDReaderベースのiPhoneアプリを公開しています。ほかに数社が、タグ付けなどの編集作業を進めているところです。ライセンス供与に関しては、新設の専門部署が担当しています。担当者は不在がちですから、多くの引き合いをいただいているのだと思います。

--ライセンス供与には「松」「竹」「梅」の3プランありますが、どれがもっとも人気ですか?

今泉:いまのところ「梅」ですね、まずは自力でやってみましょうか、と。6月のアナウンス時点ではタグ付け用のサポートツール「DEditor」が未完成でしたから、「竹」と「松」を強くプッシュしていなかったという事情もあります。現在はほぼ開発を終えていますから、今後は「竹」に力を入れようとは考えていますが。

--採用を決める際、独自フォーマットということを気にかける会社はありませんでしたか?

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