韓国における電子書籍の失敗と進取の気性から、日本の方向性を考える

海上忍
2010-05-19 19:48:59
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 まず、皆さまに報告です。タイトルどおり「電子書籍をEPUBで作る」ことが目的の本連載。早々に商業ベースの電子書籍を世に送り出そうと動いてきましたが……どうにか目処がつきました。タイトルなどは未定ですが、内容は電子書籍に関するものになることで確定しています。ご期待ください。

あまり知られていない韓国の電子書籍事情

 ことデジタル分野の話になると、我々(というか私)は無意識に英語ベースの情報を探してしまいますが、よくよく考えてみれば電子書籍にこのルールを当てはめるべきではありませんよね。電子書籍といえど、i18n(国際化)対応が義務付けられていることはなく、流通する特定の国や地域、言語のみ考慮すればいいのですから。その普及や制度化に関する話題もまた然り。英語ベースの情報では、北米と英国での動向ばかり見ることになるでしょう。

 冒頭に挙げた私の電子書籍本ですが、コンテンツの1つに「韓国の電子書籍事情」があります。近年の韓国には“勢い”があり、液晶テレビなど家電分野では日本メーカーが後手に回りがちなほどです。電子書籍に関してもチラホラ聞こえてきますが、ウェブで調べてもわからない……情報のほとんどがハングルで書かれていますからね。韓国の動向を無視できないとすれば、最新情報を識者に聞くしかありません。

 そこで、お力を借りたのが韓国出身の安天(アン・チョン)さん。現在、東京大学総合文化研究科にて言語情報科学を専攻している方です。先日取材させていただいた内容を原稿に起こしているところですが、いくつか問題を提起したいと思い、ここにその一部を紹介させていただく次第です。

ブックトピアの失敗

 ここ日本には、失敗に終わった電子書籍事業があります。たとえば、ソニーが推進した「LIBRIe」。E Inkの電子ペーパーを採用するなど、現在の電子書籍に通じる機能を備えていましたが、2004年のサービス開始から約4年後に市場より撤退しました。

 その原因の1つに数えられるのが、コンテンツの少なさです。LIBRIeでは、ソニー全額出資の電子書籍配信サイト「Timebook Town」でコンテンツを提供していました。しかし、オープン時のタイトル数はわずか800冊。半年後には2000冊に増えましたが、9万冊でスタートし1年3カ月後には23万冊にまで増えたKindleとは、比較できるものではありません。独自フォーマット(BBeB)や60日間のレンタル方式など、コンテンツ配布モデルはひとまず置くとして、量的な不足が消費者にアピールしなかった原因のひとつであることは確かでしょう。

 しかし、タイトル数が絶対的な指標になるとはかぎりません。その実例が、韓国の「ブックトピア」。安さんに聞いた話では、大手出版社の出資により2000年に12万タイトルでスタート、出版社から受領したデータを電子書籍に作り直してオンラインで売る、というビジネスモデルだったそうです。

 文が過去形なのは……2009年に倒産したからです。12万タイトルのうち1冊でも売れたのは20%程度だったそうで、末期にはデータ提供元の出版社に支払うべき印税を隠すなど資金繰りに窮していたという事実からしても、失敗だったことに疑いの余地はありません。

 ちなみに、ブックトピアのターゲットプラットフォームはPCだったとのこと。専用デバイスという縛りがなく、しかもWindowsとInternet Explorerの組み合わせがPCの圧倒的多数を占める国情にあわせたにもかかわらず、惨めな結果を招いたわけです。量だけでなく、売れ筋をそろえるといった質的充実が必要ということでしょう。

すでに始まっている「電子図書館」

  • コメント(2件)
#1 ★qqq4545   2010-05-26 23:57:59
"記事に関係する情報をコメントでお寄せください" なんか、変な日本語ですね?
脳に、直接入れる方法が、見つかるまで、人類は、苦労する事に、なるのでしょうね。
寝ている時間に、記憶の上書き!がんばってください。期待してます。
#2 anonymous   2010-08-20 11:24:58
舅(69歳)は県立図書館で何ヶ月も予約待ちして『坂の上の雲』を読んでいます。大河ドラマや連続ドラマがはじまるたびに何十人もの予約リストに加わるのです。公共図書館において完全に韓国に遅れをとっており歯がゆいですね。
最も電子化の恩恵を受けるのはこうしたシニアかもしれません。
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