
日本電子出版協会の「EPUB日本語要求仕様案」を読み解く
今回のJEPAによるEPUB日本語要求仕様案は、説明会資料にもあるとおり「日本語表記固有の特徴を早期に、かつEPUBの仕様に取り入れるために必要最低限の要求事項を提示する」もので、微に入り細をうがつ日本語組版ルールをそのまま持ち込むものではありません。かなり控えめな内容なのでは、と個人的には感じています。
1. 書籍の組み方向として「縦組」が指定できること
2. 縦組では段は上から下、ページは右から左へ配置されること
3. 縦組の場合にも柱とページ番号、キャプション、表上の記入項目は横組で表示されること
4. 縦組の書籍を横組、またはその逆で表示できること
5. 縦組/横組用両方のスタイルシートを持てること……削除の可能性あり
6. 縦組時の欧文処理(その1:日本語文字と同じ組方向に1文字づつ表示できること)
7. 縦組時の欧文処理(その2:時計回りに90度回転して表示できること)
8. 縦組時の欧文処理(その3:縦中横で表示できること)
9. 禁則処理(その1:終わり括弧類など行頭に配置してはならない文字の定義)
10. 禁則処理(その2:始め括弧類など行末に配置してはならない文字の定義)
11. 改行できない文字のつながりの定義
12. モノルビとフォールバック情報が使用できること
13. テキストに圏点を付けられること……削除の可能性あり
現行のEPUBにおけるコンテンツ部分の仕様(OPS v2.0)は、W3Cが定義したCSS2がベースとなっています。次世代のEPUB3では、CSS3ベースに更新される見込みですが、ここで気になる点がひとつふたつ……。
ひとつは、CSS3 Text Layoutワーキングドラフトに、縦書き対応のwriting-modeプロパティが存在しないことです。かつてCSS3の勧告候補段階では縦書きプロパティが存在したのですが、縦書き用と横書き用2つのスタイルシートを用意する必要があるなどの事情を考慮したのか、後日ワーキングドラフトから削除された経緯があります(最新版エディターズドラフトには存在しますが)。縦書き対応には、IDPFに加えてW3Cへの提案と働きかけが必要ということで、多少の難航も予想されます。
もうひとつは、ルビの扱いです。EPUB日本語要求仕様案では、モノルビ(文字1つ1つに対して振るルビ)を前提に検討しているようですが、実際のところ熟語ルビやグループルビ(熟語や単語単位に振るルビ)が多いように思うからです。
CSS3が関連する話となると、W3Cの草案「日本語組版処理の要件」との兼ね合いも気になります。というわけで、現在JEPA EPUB研究会に取材を申し入れているところです。結果は後日報告させていただきます。
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