やはり気になる、電子書籍の「印税」--デジタルコンテンツの「作者取り分」から考察する

海上忍
2010-04-02 12:21:06
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Amazon「Kindle」のインパクト

 インパクトからいえば、Amazonの電子書籍プラットフォーム「Kindle」をおいてほかにないでしょう。当初の印税率は35%でしたが、2010年1月から最大70%までの印税率を適用できるようになりました(英文のニュースリリース)。ただし適用には条件があり、作家側が読者のダウンロード費用を負担すること、作品の販売価格を2.99〜9.99ドルの範囲に設定すること、Kindle/Kindle Storeの全オプションを有効にすること……など、多岐にわたります。

 その条件のうち、ダウンロード費用の負担は印税率低減の原因となります。ニュースリリースによれば、販売している電子書籍の中央値はサイズが368Kバイトで、ダウンロード費用は0.06ドル未満とのことですから、仮に売価7ドルとすると、印税額は7×70%=4.9ドル、そこから0.06ドルを差し引いた4.84ドルとなります(印税率に引き直すと約69%)。ダウンロード費用が10倍の0.6ドルだとしても60%を超えますから、印税率大幅アップとなることは確かです。

 ちなみに、従来の印税率35%が適用されるとき、印税率70%時と同額の利益を得ようとした場合には、販売価格を13.83ドル以上に設定しなければなりません。7ドルと13.83ドルでは、売れ行きに相当な差が生じるでしょうから、Amazon Kindleの場合印税率70%が適用される範囲に価格設定することが妥当と考えられます。

「著者の取り分7割」が黄金比か?

 この70%という数字に既視感を覚えた方も多いのではないでしょうか。そう、iTunes Store内のiPhone向けアプリストア「App Store」における、有料コンテンツ売り上げの開発者取り分です。App Storeの場合、年99ドルのiPhone Developer Programに参加しなければならないため、一律に比較はできませんが、著者取り分の比率は同じです。

 「取り分70%」を適用するオンラインストアは、App Storeにかぎった話ではありません。Microsoftの「Windows Marketplace for Mobile」しかり、Nokiaの「Ovi Store」しかり。Googleの「Android Market」すら、同じ70%です。これは、EPUBを扱うiBooksの印税率もAmazon Kindleと大差ない水準に設定されるのでは、という仮説に対するひとつの根拠になるはずです。

 同じデジタルコンテンツという理由で電子書籍の粗利を考えると、この“黄金比”が適用できる可能性は大です。その場合、企画・編集から製本(≒HTMLオーサリング)までを担う電子出版社を通して電子書籍を出したとしても、印税率は10%という紙の世界での常識を素直に受け入れる著者はいないと思います。

 話が長くなりましたが、本連載の目標遂行にあたり収支をシミュレートする場合、一切合切を著者が担当する場合の粗利は70%という認識でよさそうです。この数字がわかれば、目標とする単価や部数をどうするか、どの程度コスト(取材費)をかけられるかが逆算できますから。

 早いもので、もう4月。まもなくiPadが発売され、iBooksの実像も見えてきます。焦りは感じますが、拙速とならないよう努力せねばなりません。とはいえ、オンスクリーンキーボードの使い心地はどうなのか、バッテリ駆動時間はどれほどなのか……とiPadそのものへの興味も尽きないわけでして。時間のやりくりに苦労する月になりそうです。

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