EPUBの「日本語組版」を巡る業界団体の動き

海上忍
2010-03-04 10:47:04
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 連載第3回目となる今回は、「EPUBの日本語組版」を取りあげます。制作への道のりはいまだ遠く、下調べしなければ……というわけで、説明調ではありますが、EPUB日本語組版の現状をまとめてみましたのでご覧ください。

縦書き対応、始まっています

 我々日本人は暗黙の了解のもと、母語である「日本語」の表記スタイルに則った電子書籍の登場を期待しています。世界で多数派の左から右への横書きと、我が国伝統の縦書きの両方に対応していなければ、胸を張って“日本語電子書籍”とは名乗れません。縦書きという少数派の表記スタイルを持つ言語ゆえに、主張なり自助努力するなりの覚悟が必要なのだと思います。

 その縦書き対応ですが、すでに日本電子出版協会(JEPA)が対応を開始しています。JEPAに加盟するイーストのブログには、「縦書き、ルビ、禁則、縦中横、右/左開きなどのシンプルな仕様を4月上旬に公表」とありますから、あと1カ月もすれば方向性は見えてくるかもしれません。とはいえ、EPUB研究会の発足は昨年の11月ですから、わずか5カ月という期間で日本語電子書籍の将来を左右しうる規格の方向性を決めていいものなのかどうか。そもそもJEPAとは? という話もあろうかと思います。

林立する業界団体

 で、調べてみました。日本語電子書籍のフォーマット策定を検討している(と思われる)業界団体を。EPUB限定というフィルターを外せば、いろいろな企業が鵜の目鷹の目で電子書籍マーケットを狙っていることがわかります。

 まず、前述のJEPA。こちらの設立時期は1986年と古く、出版社以外にもマイクロソフトやアドビシステムズ、富士通などのIT系企業が加盟していることが特徴です。2010年3月時点では、特別会員を含めると99社の名を確認できます。

 99社という数が多いか少ないかは、約4000といわれる日本の出版社数と比べれば一目瞭然です。名簿を見れば、加盟していない大手出版社もいくつかありますし、コミック系出版社も少数です。IT系企業にも偏りがあります。

 調べてみますと、コミック系出版社は「デジタルコミック協議会」を主な意見交換の場としている模様です。EPUBへの関与については確認していませんが、グラフィックの扱いなどコミックならではの処理が求められていますから、EPUBとは切り離して考えていいのかもしれません。コミックについては、識者に話を聞くなどして後日まとめたいと思います。

 そして、最近設立された「日本電子書籍出版社協会」。国内大手出版社21社により、日本の電子書籍市場をリードしていくことを目的として設立されたようです。講談社や角川書店など、JEPA未加盟企業の名もあります。上記の記事には、共通規格や契約モデルの策定も進めるとありますから、今後EPUBなどの世界標準規格についても検討を開始する可能性大です。

 まだありますよ。書籍ともコミックとも異なる雑誌の分野です。こちらは、日本雑誌協会内部に設置された「デジタルコンテンツ推進委員会」が、フォーマット策定に関与するものと考えられます。図版多めで縦/横書きなど一定しない雑誌のレイアウトは、そもそも規格化が難しいと思われますが、これを標準化するとすればどうなるのか、広告をどう処理するのかなど、興味深いところです。

つまり、早い話が

 2010年3月現在、EPUBの日本語組版はInternational Digital Publishing Forum(IDPF)が策定した規格の域を出ません。つまりサポートされるのは横書きのみ、UTF-8でエンコードすれば日本語を扱えるものの、縦書きはいうに及ばず、ルビを扱うこともできません。これでは、紙ベースの日本語書籍をただちにEPUB化し、商品化することには無理があります。とはいえど、ただ座して待つわけにはいきませんので、いろいろ方策を練ろうかと考えています。

 先日、しばらくお休みしている他誌連載の読者の方から、冒頭部分の近況報告を毎回楽しみにしていたとのメッセージを頂きました。これはうれしいですね……というわけで、本連載でもこの様式(というほどのものではありませんが)を踏襲します。電子書籍/端末の時事ネタに対するコメント、批評、あるいはただのグチまで、このように文末であれこれ書きますので、なにとぞお引き立てのほどを。

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