電子書籍と印刷物を比較:出版の条件、初期投資、流通のしくみ

海上忍
2010-02-24 10:57:04
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 まずは、読者が手にするときの形態。パルプから製造した紙にインクを吹き付ける従来の印刷物は、携帯性に優れ書き込みも可能な反面、時間の経過とともに劣化することが避けられません。紙そのものは再利用できず、印刷面の変更は不可です。この辺りは、時間を割いて説明するまでもないでしょう。

 押さえておきたいのは、流通経路の違いです。オンラインストアに出品するハードルがどれほどのものかは、現状推測に過ぎませんが、紙の印刷物を流通ルートに載せることに比べれば低いと考えられます。

 おおまかな説明になりますが、新規に出版社を立ちあげようとする場合、日本図書コード管理センターという業界団体で「出版社コード」を取得し、将来の出版計画も提出しなければなりません。次に、トーハンや日販などの取次会社(早い話が本の問屋)での口座開設という難関が待ち構えています。ここでも、法人としての経歴や出版実績/計画などを書面で提出する必要があるうえ、審査が通るともかぎりません。地方・小出版流通センターなどの小規模出版社を対象とした取次もありますが、とりあえず2〜3冊出せればいいや、というスタンスは通用しないでしょう。小なりといえど本気で出版社を立ちあげ継続させる、という気概と資本が必要になります。

 一方、電子書籍には従来の「取次ルート」が不要と考えられますから、オンラインストアというワンクッションを置きつつも、出版社と読者をダイレクトに結ぶことが可能です。これは推測ですが、紙という在庫を抱える必要がないことから(取次に相当する)販売側のリスクは低く、長期の出版計画を求められる可能性は低いでしょう。事業主体が法人に限られることもなさそうです。紙とデジタルという物理特性のまったく異なる両者ですが、それに負けず劣らず「流通のしくみ」の違いにも注目する必要があります。

紙の印刷物と電子書籍の比較
電子書籍
携帯性ページ数と判型に依存端末とイコール
耐久性汚損・褪色あり半永久
再利用不可
書き込み不可
出版の条件取次に口座を設けるオンラインストアへの出品
流通取次・書店のルートオンライン・オンデマンド
初期投資(消費者)負担なし端末が必要
初期投資(制作者)DTP環境オーサリングソフト
初期投資(販売開始時)取次での口座開設オンラインストアでの審査のみ
製造コスト制作費+原材料費+印刷費+流通費制作費+流通費
  • コメント(3件)
#1 anonymous   2010-02-25 19:18:40
電子書籍の製造コストに原稿料が入っていない理由は?
#2 builder   2010-02-25 20:01:49
> 1 様

builder編集部です。いつもご愛読頂きありがとうございます。
ご指摘ありがとうございました。

執筆された海上氏の原稿では「制作費+原料+…」となっており、制作費に原稿料が含まれているという認識でしたが、編集時の認識ミスから「制作費+原稿料+…」となっておりました。

該当個所を修正させて頂きました。
読者の皆様ならびに関係各位に深くお詫び申し上げます。

今後もご愛読頂ければ幸いです。
#3 anonymous   2010-03-04 14:14:03
画像解像度と出力解像度を混同されていませんか?
モニタ等の「解像度」は「出力解像度」です。
「商業印刷物は300~350ppi」というのは「画像解像度」の事です。
またハード的な画像の再現方法にも品質感は依存する部分もあります。
単位は ppi でも dpi でも良いですが、全く異質なものを単純に数値だけ比較しても意味がありません。
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