ベトナムの高等教育事情--優秀な人材をどう確保するか

古川浩規(インフォクラスター)
2014-07-25 07:30:00
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 ベトナム進出後に避けては通れない課題に人材確保があります。製造業であれば、工員の確保もさることながら、通訳、会計、幹部候補などの人材をどう集めるかも課題です。そこで今回は、ベトナムの高等教育事情にについてご紹介します。

 ベトナムは労働集約型の産業拠点としてとらえられがちですが、社内統制のためには、ベトナム人中間管理職層の充実といった管理業務の組織化も当然必要となります。ベトナムでは一般的に人材の流動化が進んでいるため、転職希望者の採用やヘッドハンティングも有効です。

人材の流動化が進み転職者の給与が高騰

 一方で、転職者はキャリアアップ志向が強く、数年の勤務の後には少しでも給与の高いところに再び転職するという傾向もあります。こうしたことが要因で、転職者の給与が高騰することにつながっているようです。

 

 一部では、「社内で育ててきたスタッフとの待遇で釣り合いが取れないため、どれほど優秀な者であっても転職者を積極的に受け入れることは容易ではなくなってきた」という声も聞かれるほどです。

 さらに、日本とベトナムでの社会システムの違いもあるため、優れた技術を持っている転職者であっても、日系の社内環境やシステムに習熟し期待通りの活躍をしてもらうためには時間がかかるケースも多いようです。転職者を受け入れたものの、「ようやく会社に馴染んできたと思ったら、また転職してしまった」という悩みもよく聞きます。

 そのため、新卒の学生を採用しなるべく離職しないように配慮しながら自社で育てるという、従来の日本型経営が功を奏すこともあるようです。

「国立大学は予算が少ない」という笑い話はベトナムの大学でも通じる冗談。しかし、どこでもキャンパスはきれいに整備されている(国立大学のハノイ大学にて)。
「国立大学は予算が少ない」という笑い話はベトナムの大学でも通じる冗談。しかし、どこでもキャンパスはきれいに整備されている(国立大学のハノイ大学にて)。

大学への就学率は約20~25%

 日本では大学、短期大学などへの進学率が50%を超えていますが、ベトナムでは高等教育機関への進学率はまだまだ低調です。義務教育段階でもある中学校段階の就学率は約80%で、高校段階の就学率が約40%。大学段階の就学率はここ10年ほどで倍増しているとはいえ、まだ約20~25%程度となっています。

 そのため、ベトナムでは学士を持つことの価値は高く、当該分野の学士を持っていなければその専門職として働けないこともあります。

 例えば、ベトナムでは各会社にチーフアカウンタントを置く必要がありますが、このチーフアカウントになるには会計系の学士以上であることが基本です。そのため、専門性を有する優秀な学生を確保する際の最大の問題は、転職者を探す場合とは異なり、それほど潤沢ではない卒業者数の中から優秀な人材を選び出さなければならなくなります。

 社会主義国家であるベトナムは、その性質上、旧ソ連との交流が活発でした。そのため、ベトナムの大学においては、旧ソ連の高等教育システムを範にとり、専門ごとの単科大学の設置が基本となっています(なお、この傾向は、大学のみならず、高校段階にも言えることです)。

 昨今、ベトナムでも、国際化や社会主義体制の下での自由市場経済の発展といった社会の複雑化が進んできているため、ハノイ国家大学、ホーチミン国家大学、地方総合大学といった形での総合大学化も進んできています。

 しかし、大学内の実情としては、「ハノイ国家大学工科大学」や「ハノイ国家大学外国語大学」といった「大学内大学」としての組織形態となっているため、実質的には単科大学として機能しています。

 そのため、1つの大学で輩出される学生数は、学科あたり最大200人ほどと日本の総合大学と比較して、それほど多くはありません。

 また、近年でこそ優秀な私立大学も増えてきましたが、ベトナムではまだまだ国立大学が重要な教育機関となっています。しかも、日本と同じくこれらの国立大学の数及び定員が限られているため、より優秀な学生を採用したいと希望する場合には、どうしても一部の大学に求人が集中してしまい、売り手市場の争奪戦が始まってしまいます。

 特にIT業のような「優秀なITエンジニアを数多く集めたい」という要望にすぐに応えることは容易ではありません。

 大学のほかに専門学校や職業訓練校も存在しますが、これらの学校への進学意欲は積極的なものではありません。先に述べたような学士への憧れや制度上の必要性が高いため、受験に失敗したなどの理由でこれらの学校に通うことがあっても、最終的に「大学卒業の資格がほしい」と希望して大学で学び直す若者もいます。

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