
HTML5をサポートした次期Kindleフォーマット「Kindle Format 8」の狙い
Amazonは、Kindle Format 8によってこれまでは難しかった児童向けの絵本や漫画、グラフィックノベル、料理本、教科書や技術書などを、電子書籍として作成することが可能になると説明している。Amazonのウェブページでは、Kindle Format 8で作成したいくつかのレイアウトが紹介されている。ほんの一例でしかないが、確かに、現実の書籍に近い多彩な表現が可能になることが確認できる。
Kindle Format 8がHTML5/CSS3を中心にして実現していることは、表現力の高さと同時に、柔軟性や将来性といった点でも大きな意味を持っている。HTML5/CSS3はまだ発展途上の規格であり、現在でもまだ多数の新しい提案が行われている。
例えば、CSS3に提案されている規格のひとつにCSS shadersがある。これはコンテンツを蛇腹状に折りたたんだり、紙をめくるように表示したりすることができるインタラクティブなコンポーネントである。Adobe Systemsが準備しているCSS Regionsなども興味深い。これはテキストの複雑な回り込みを実現するためのもので、もともと同社がDTPツールのInDesignを開発する中で登場した、書籍レイアウトと極めて相性のいい規格だ。
Amazonが将来的にKindleでこれらの新しいレイアウトを採用するかどうかはわからない。しかし、HTML5/CSS3をサポートするということは、将来的にこのような表現力を実現できるかもしれないという可能性を見せてくれる。一方で、このような懸念も生じる——「では、インターネットと電子書籍の違いはどこにあるのか」
今はまだ“その時”ではない
現在の電子書籍は、既存の紙ベースのコンテンツをデジタルなコンテンツに変換するという目的に終始している。Kindle Format 8が動画やオーディオなどをサポートしていない理由も、その目的からの大幅な逸脱を避ける意味が少なからずあってのことだろう。動画やオーディオをサポートすればよりリッチな体験を提供できるようになるかもしれないが、それでは書籍との差異があまりにも大きくなりすぎ、電子書籍を“書籍として”楽しみたい読者や、コンテンツを作成する著者、編集者の支持を失い兼ねない。
もちろん、将来的にKindleがウェブブラウザに近づく方向で進化していく可能性も考えられる。動画やオーディオ、アニメーション、読者による可変なレイアウトなどを持った電子書籍が登場することもあるだろう。しかし少なくとも今はまだそのときではない、というAmazonの答えがKindle Format 8には現れている。
なお、冒頭で触れたように「Kindle Fire」が最初にKindle Format 8をサポートする端末となるが、従来のMOBIフォーマットも継続して使うことができる。また、パブリッシャー向けにはMOBI形式で作られた書籍をKindle Format 8に変換するツールやガイドライン、Kindle Format 8のプレビューツールなども提供される。
これらのアップデートは「近日中」となっており、このページよりサインアップしておくことでアナウンスを受け取ることができる。
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