
HTML5をサポートした次期Kindleフォーマット「Kindle Format 8」の狙い
10月20日、米Amazon.comは電子書籍端末Amazon Kindle向けの新しいファイルフォーマット「Kindle Format 8」を発表した。
Kindle Format 8は間もなく出荷される「Kindle Fire」で導入されるほか、「Kindle Touch」をはじめとした電子ペーパーデバイスや、タブレット、スマートフォン向けのKindleアプリでも数カ月以内にサポートされる予定となっている。今回はこのKindle Format 8を解説しよう。
新フォーマットの導入に至る経緯
KindleはこれまでMOBI形式(Mobilepocket形式)のファイルフォーマットを採用してきた。MOBI形式は、もともとは仏Mobilepocket社によって電子書籍システム「Mobilepocket」のための電子書籍フォーマットとして開発された。Amazonは2005年にMobilepocket社を買収して傘下に納め、MOBIはKindle向けのファイルフォーマットとして採用されるに至った。
現在使われているMOBI 7は、画像データの埋め込みやリンク機能、フォントの指定などといった、書籍として最低限必要なレベルの表現力を備えている。しかし、基本的には小説を中心としたテキストベースのコンテンツを想定したものであり、絵本や漫画のような複雑なレイアウトを実現することは難しかった。
電子書籍市場の爆発的な広がりを考慮すれば、現状のMOBIの表現力では限界がきていることが明らかである。競合するEPUB形式にはすでに大きく溝を開けられており、同等の表現力を求めるデザイナーや編集者から不満の声が聞こえていた。そのような状況を打破するために登場したのがKindle Format 8である。AmazonではKindle Format 8をMOBI 7の後継として位置づけており、Kindleによって読者に最高の体験を提供するための選択だと説明している。
注目はHTML5のサポート、ただし動画やオーディオは含まれない
Kindle Format 8では、HTML5とCSS3をサポートしたことによって、従来のMOBI 7と比べて新たに150以上のフォーマットが利用可能になる。HTML5をサポートするといっても、現段階でサポートする予定のものはレイアウトに関する要素が中心であり、JavaScriptはもちろんのこと、動画やオーディオに関するタグにも対応していない。
利用できるようになる代表的な表現は次のようなものだ。より詳細なリストはAmazonのウェブページにまとめられている。
- 固定レイアウト
- 埋め込みフォント
- ネスト形式のテーブル
- 吹き出し型のポップアップ
- 背景画像
- ボックスレイアウト
- サイドバー
- SVG(Scalable Vector Graphics)画像の埋め込み