アドビ仕様のPDFでは未来が明るくない--PDFのチャンピオン、標準化を語る

杉山貴章(オングス)
2008-11-13 18:03:00
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

Adobe版のPDFのままでは未来は明るくない

 King氏によれば、Adobeが作成したPDF 1.7の仕様はISOのルールに則ったものではなかったため、ISOの認定を得るためにはルールに合わせて1から書き換える必要があったという。King氏はこの作業を次のように振り返っている。

 「当初は一体いつになったらこの作業が終わるのかという印象でした。1310ページもある仕様書の一字一句をチェックして書き直していくわけですから。ところが3分の1くらい進めたところで考え方を変えました。このままでは完全なものになるのに5年もかかりそうなペースだったので、目標を6月15日と定め、それまでにできる限りのものを完成させようということにしたのです」

 スピード重視の作業が可能であった理由は、もともとPDF 1.7は業界で広く認められたものだったからだと同氏は言う。そもそもISOでは、Adobeの仕様をそのまま提出しても良いと判断していたそうである。しかしKing氏はこれを拒否した。

 「ISOに委ねると決定した以上、Adobeの仕様のままでは未来は明るくないと思いました。また、ISOのルールに合わせる作業は非常に高度な知識を要するので、これもISOに任せるのではなく、Adobeのエキスパートがやるべきだと考えたのです」

標準化によって何が変わるか

 では、仕様が標準化されたことによってPDFの役割はどう変わってくるだろうか。King氏は「基本的には変わることはない」と指摘し、その理由を次のように語っている。

 「もともとPDFの仕様は93年の頃から書籍の形で公開されており、特許も公開されていました。また、PDFを扱うソフトウェアについても自由に開発することができました。ISOになったとしても、現時点でPDFを利用している会社や団体にとっては何も変わることはないと思います」

 一方で同氏は、次の2つのケースでは状況が変わる可能性があるとも指摘している。

 ひとつは、その会社や団体が国際的な仕様しか許容していない場合。政府機関ではその傾向が強いため、影響が大きいかもしれない。もうひとつのケースは、競合する製品を扱っている場合だ。

 「競合製品のベンダーはこれまでAdobeが仕様をオープンにしても、何か裏があるんじゃないかと懐疑的な目で見ていました。ISO標準になったことでそのような誤解を解くことができるのではないかと思います」

 もちろん、AdobeとISOでは仕様の管理に対する手順が異なるため、細かな部分ではこれまでと異なる点も多くでてくるだろう。

 例えば仕様のアップデートの手順は大きく変わる。ISOでは、仕様をアップデートする場合にはまずその内容を文書化し、国内委員会で話し合った上で国際委員会にかけるという手順が必要になる。King氏によればこの作業には少なくとも2、3年はかかり、従来通りのペースでアップデートしていくことはできないだろうとのこと。

 ただし、ISO 3200-1には拡張ポイントが用意されており、Adobeを含めた各ベンダーはこれに従えば独自の拡張を行うことができる仕組みになっているという。例えばすでにリリースされている「Adobe Acrobat 9」はISO 3200-1に準拠しているが、このしくみを利用した拡張も含んでいるとのこと。

 「おそらくISOによる(PDFの)アップデートよりも、Acrobatのバージョンアップの方が速いペースで行われていくことになるでしょう。そこでActobatにはあまり大きくないレベルの拡張を加えつつ、標準化するに相応しいものは次の提案に盛り込むという形になると思います。正確なところは分かりませんが、Acrobatが2つバージョンアップするのに対して、ISOが1つバージョンアップする、というくらいのペースになるのではないかと考えています」

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]