WCANで話したゲームの仕組みと楽しさの関係

2010-12-27 14:59:08

Fun is just another word for learning

CSS Nite Shift もそうですが、年末恒例行事になっているもうひとつのセミナーが名古屋の WCAN です。昨年までは、その年の総集編と次の年の予測について話していましたが、今年は少し趣向を変えてゲームの話をしました。このサイトを長く読んでいらっしゃる方はご存知だと思いますが、私のサイトでは頻繁にゲームの話題があがっています。以前からゲームの話がしたいと言っていたわけですが、ついに念願がかないました。

月々支払の購読モデルから F2P (Free to Play) モデルが主流になりはじめたオンラインゲームビジネス。そして、ソーシャルゲームというジャンルの急成長がみられた 2010 年。こうした動きから「ゲームは今注目だ。時代はソーシャルだ」と言う方も少なくありませんが、ゲームを導入するだけでは特に意味はありませんし、かえって安っぽく見える可能性もあります。私たち Web サイトの企画・制作・運営に携わる人間として注目しなければならない部分は、ゲーム自体ではなく、何がゲームをおもしろくしているのかというエッセンスです。

楽しいという感情の秘密

WCANでは「ゲームから学べる楽しいユーザー体験」というタイトルで、ゲームの仕組みが作り出す「楽しい」という感情が生まれるメカニズムを解説。これをうまく Web デザインに利用出来ないかという提案ベースのプレゼンをしました。以前から UX がいう「良い体験」という表現はどうも不十分だと感じていました。良いという表現はあまりにも漠然過ぎていて共有が難しいですし、良いを共有するためにまた違う作業工程が生まれている可能性もあると思います。「楽しい」は「良い」より具体的な表現ですし、ゲームの仕組みを話の入り口にすることで共有もしやすいのではと考えています。UX という感情的で漠然とした表現も、ゲーム的楽しさから入ることで UX への理解も深まる可能性もあります。

また「楽しい」という感情は様々な障壁を超える要素だと考えています。使い難そうなサイトや面倒なプロセスに遭遇したとしても、楽しければなんとか超えることが出来てしまう場合があります。最初は使い難いと叫んでいたユーザーも次第に慣れてしまうひとつの要因は、その場にいることが楽しいから使い続けていたということもあります。ユーザビリティと楽しいという感情の関連性を調査している学者は少なくなく、ここ10年 IT 技術のユーザビリティと楽しさに関する文献が幾つか発表されています。

難しいけど楽しいからやってしまうという感情を引き出すのはゲームの得意技です。ゲームは楽しませながら学習させ、遊んでいる人はいつの間にかスキルアップしています。グラフィックが美しい、ストーリーがおもしろいという部分だけでなく、ゲームならではの仕組みが次の日も遊んでしまう楽しさを生み出しています。つまり、ゲームの仕組みを理解することで、長く利用してもらえるだけでなく、利用者に満足してもらえるサイトをつくるための糸口が見えてきます。

ユーザーからプレーヤーへ

今セッションではゲームで使われている仕組みと、Web サイトやソフトウェアで実際使われている実例を幾つか紹介しました。適材適所で仕組みを導入することで訪問回数や滞在時間だけでなく、コンバージョンにも繋げることが可能になります。どのタイミングでどのゲームの仕組みを利用したら良いのか迷う場合があると思いますが、そのときに「ユーザー」から「プレーヤー」と言葉を入れ替えて考えてみてはいかがでしょうか。

「ユーザー / 利用者」というとつい機能や使いやすさのほうに意識がいきがちです。もちろん、それらはとても重要なことですが、「プレーヤー」と言葉を変えるだけでどうしたら楽しい感情を引き出すことが出来るのか考えやすくなるでしょう。また「プレーヤー」と名付けることで、その人は積極的にその場で何かをしたいと考えている方のように捉えやすくなります。コンバージョンまでの道筋をひとつのゲームシナリオを考え、そこでプレーヤーがどのようなゲームプレイを期待しているのか、そして何をすればそのゲームプレイがより楽しくなるかを考えてみてください。

ゲームは「楽しい」という感情を引き出すのが上手ですし、その仕組みを Web サイトに適応させることで「楽しい」サイトを作れるようになるかもしれません。ゲームにも言えることですが、このように感情を上手く操作できるパワフルな仕組みをもっているからこそ、私たちは責任をもってその力を活用しなければいけません。ゲームの仕組みは人を楽しませるというポジティブな力をもっていると同時に、人を中毒にしたり不当なお金稼ぎの利用といったネガティブな力に働くこともあります。デザインマニフェストに通じるところがありますが、依頼が来たからする、知っているから使うという受け身だけの姿勢で作るのは自分たちにとっても社会にとっても良い結果になりません。私たちは人の感情や社会に影響をもつことを頭の片隅に起きながらゲームの仕組みやデザインの力を活用するべきでしょう。


今回はゲームの基本的な仕組みについて話しましたが、また機会があればもう少し深く掘り下げた話題やオンラインゲームに特化して話が出来たら良いなと考えています。今回のセッションを通してゲームは思ったより Web サイトデザインや UX に近い存在にあるのだと気付いていただけたのであれば幸いです。

※このエントリは ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および ZDNet Japan編集部の見解・意向を示すものではありません。