インタラクションから生まれる3種類の体験

2010-12-03 16:09:30

以前「ところで体験ってなんですか?」という記事で、体験は2つの自己によって形成されていると解説しました。行動経済学者ダニエル・カーネマンによると、今この瞬間を経験する「Experience Self」、記憶を辿る「Remembering Self」という2つの自己が密接に繋がりあい、それが幸せかどうかの尺度にも影響するとしています。つまり、よい体験があったかどうかの判断は、どのようにその出来事を記憶しているかに大きく左右していることになります。

体験の善し悪しを考える上で、ダニエル・カーネマンの提唱する2つの自己は大変参考になります。では、体験をもう少し分かりやすく分類するとどうなるでしょうか。ヒト・モノ・コトと関わり方の違いでも体験の仕方が変わってくるはずですが、どのように分類できるでしょうか。Jodi Forlizzi と Katja Battarbee が共著した文献「Understanding experience in interactive systems」には、製品やサービスとの関わりで生まれる体験を理解するために、体験の分類と理解のためのフレームワークの構築を試みています。その文献によると、体験は3つに分類できると言われています。

体験 (Experience)
何かの体験をしているその瞬間を指します。ダニエル・カーネマンの「Experience Self」に近い概念。公園で散歩したり、夕食を食べているそのひととき
ひとつの体験 (An Experience)
起承転結があるひとつの体験を名前を付けて記憶することが出来ること。映画を見た、Webサイトをつくったなど様々な体験を総称してパッケージングができる
共同体験 (Co-Experience)
上記のような体験を社会的な交流を行うことで異なる意味や感情がうまれること。チャットでの会話や家族で買い物をするといったひとりでは作り出せない価値
時系列に沿ってその瞬間を体験する「Experience」と、その体験をひとつの名称や明確な枠組みとして表現することができる「An Experience」
「Experience」を誰かと共に過ごしたり、「An Experience」を誰かと共有することで「Co-Experience」が生まれます

このなかでも共同体験は大きな影響を及ぼします。単独で体験したら「よくなかった」と評価することも、家族・友達が加わることで「とてもよかった」と考える場合があります。「機械的に評価をしない私たちだから」という記事でその辺について解説しましたが、人が関わることで価値観が大きく変わる場合があります。実際、ここ数年にでてきている多くのテクノロジーをみても人と人を繋げるものであったり、コミュニケーションを補助するものが少なくありません。それは、共同体験が様々な体験の価値を変えてしまうくらい大きな影響力をもっているからかもしれません。

体験とひとことで片付けると非常に分かり難いわけですが、実際どのような体験があるのか細分化し、それぞれが上記の体験の分類のうちどれに当てはまるのかを考えることで体験をより深く理解できるキッカケになるでしょう。体験がどのようにはじまり、明確になっていくのかの道筋を見出し、記憶が残る部分はどこか、利用者はどのような反応を得るのかを想像することで体験のデザインがより精密なものへと変わっていきます。

共同体験の影響力を考慮し、私たちデザイナーは人が物理的又はバーチャルでどのようなコミュニケーションを行っているかの理解が必要になってきます。人々が一緒になってサービスや製品を使うことによってどのような価値観が生まれるのかといったところも想定することで、今まで考えつかなかったアイデアも生まれる可能性があります。

Illustration is taken by cori kindred

※このエントリは ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および ZDNet Japan編集部の見解・意向を示すものではありません。
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