機械的に評価をしない私たちだから

2010-04-19 20:43:49

私たちは様々なことに対して「よかった」「イマイチだった」と評価することがあります。食べ物や音楽もそうですし、私たちが毎日のように利用する Web サイトもそうです。例えば食べ物を評価するとしましょう。その際、評価で最も重要となる要素は味です。食べ物であるわけですから、味が重要なのは当然ですが、果たして私たちは本当に味だけで食べ物を評価しているのかといえばそうではありません。場合によっては味が評価の際に最も重要な要素ではない場合もあります。

見た目や感触、人、料理というプロセス、場所を考慮して食べ物を評価しています

例えば、誰かのホームパーティに誘われたとしましょう。

そのときに出て来きたものは、腕のいいシェフが最高の食材を使って料理した食事にはほど遠いものです。コンビニで買った食べ物の味の方が良かったのかもしれません。しかし私たちはきっとそのホームパーティで食べた食事を「とても美味しかった」と記憶すると思います。

私たちは味だけでなく、どのような場所で誰と一緒に時間を共にして食事をしたのかということも含めて善し悪しを評価します。もしそのホームパーティが、一緒に料理をして自分達でつくったものを食べるという体験も含まれていたら、味は一層良く感じるかもしれません。こうした評価の仕方は客観的とはいえません。しかし、誰が客観的に味だけで食事を評価をするのでしょうか。

また、食べ物の見た目も重要な要素です。それは美しく飾られているかという部分だけでなく、ブランドイメージも含まれています。ブランドイメージと味は密接に繋がっていて、食べる人はブランドに対する期待を基に食している場合があります。つまり、企業側が味を良くするために工夫したつもりでも、食する人が抱くブランドイメージとズレが生じてしまい、たとえ客観的に見れば美味しくなったのかもしれなくても、「美味しくない」と感じる方が出ることがあります。

音楽の場合は、音だけでなくミュージシャンの人格、ライブなどの体験、勧めた人やメディアが評価に影響しています。

音楽でも同様のことがいえます。

私たちは旋律や歌声の美しさ、そしてテクニックだけで音楽の善し悪しを決めていません。ライブへ行った体験が自宅で聞く同じ音楽の体験を増幅させていることもありますし、親友が熱く語っていたことが影響することもあります。また、音楽を作り出しているミュージシャンの人柄に共感や尊敬を抱いていることもあります。ここ数年、インターネットを通じてブレイクしたミュージシャンは少なくなく、彼等の成長を見ながら音楽を聴き続けているリスナーもたくさんいます。市場でたくさん売れる音楽ではないのかもしれません。しかし、リスナーにとっては流れる音楽だけでは掴めない文脈を知っている(他のリスナーと共有している)ことが音楽に新しい価値を与えているのだと思います。

音楽に「顔」が現れ始めたのはミュージックビデオがインターネットより先でしょうね。ビデオでのパフォーマンスがきっかけで音楽が好きになるということも少なくありませんから。

Webサイトも見た目だけで評価できない

食事と音楽という例をみても分かる通り、私たちは機械的かつ客観的に物事の善し悪しを決めるということはしません。もちろん、食事において味はとても重要ですし、不味くても良いというわけではありません。しかし、味だけで食事を評価することは出来ませんし、客観的な味の評価がどうでもよくなるほど他の要素が強く評価に影響することがあります。それは人かもしれませんし、料理というプロセスかもしれません。

Webサイトの善し悪しも食事や音楽に似ています。

見た目は重要でしょう。しかし、それをときには勝る要素というのが人の善し悪しの評価に左右することがあります。時には「品物がはやく来た」「カスタマーサービスが親切だった」といったサイトそのものには関係ないところからの影響を受けることもあります。サイトの評価なのにおかしいと感じるかもしれません。しかし、技術的なこと、専門知識があまりなければ、混同して評価することはそれほど不思議なことではないと思います。切り分けて客観的に評価することは難しいですし、それを常に心がけて善し悪しの感想を述べている人はそうはいないでしょう。

私たちが Web サイトを作るときも見た目だけでなく、インタラクションやパフォーマンスなどにも細心の注意を払いますが、それは訪問者が感じる善し悪しに多大な影響を及ぼしています。それゆえ、早い段階から見るだけでなく体感できる環境をつくっておくことが重要だといえます。情報がいちはやく届いていないという理由で「よくない」と感じる利用者もいます。それを回避するために柔軟性のあるデザインを提供する、すぐにサイトを更新できるような運営体勢を整えなくてはいけません。見た目以外でよく出来る部分というのがこのようにたくさんあるわけです。

私たちがいつも見ているサイト、利用しているサイトを思い浮かべてください。

きっと見た目だけで「良い」と評価しているわけではないと思います。では、一体何があなたに「良い」という感情を与えているのでしょうか。それを一度立ち止まって考えてみることで、自分が今作っているサイトの足りない部分、改善すべき部分がみえてくるでしょう。

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※このエントリは ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および ZDNet Japan編集部の見解・意向を示すものではありません。
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