UXの定義と私たちの仕事の関係

2010-03-01 07:11:17

UXデザイナーと名乗る方にとって、体験という主観的かつ概念的な要素をいかにして測定し、価値を見出すのが課題のひとつです。それについては「UXの測定項目を考えてみた」という記事で候補になりそうな項目を幾つか挙げて解説しましたが、項目を考える上で常に UX (User Experience) とは何か?という質問に辿り着くのではないでしょうか。UX に興味がある方、又は仕事としている方はそれぞれ自分で UX を定義していると思いますが、明確なラインが引けないですし、すべて自分で出来るというものではないので説明が難しい言葉です。Webデザインより説明が難しいと感じることがあります。

「UX」とひとことで言い表すことが出来るわりには、包括する分野が非常にたくさんあります。UX を作り手、顧客、マーケットなど見る切り口によって違ってきますし、数多く存在するアプローチは分断しているのではなく、密接に入り組んでいます。UX の定義という難しい課題に多くの方々が挑戦しており、UXの視覚化に成功しています。

様々な表現で視覚化されている UX

The Elements of User Experience (PDF)
Jesse James Garrett氏が10年前に作成した UX の概念図。日本語でも発売されている彼の著書が参考になるでしょう。利用者が Web サイトを観覧している視点から下の階層をきめ細かに定義しており、シンプルですが深い部分まで視覚化されています。3次元で UX を捉えている点も分かりやすい理由かもしれません。今でも UX を説明する際に出て来る図がこれの場合が多いです。
User Experience Design (JPG)
Kicker Studio が作成した UX の領域を示す図。ビジュアルデザイン、インタラクションデザインなど、様々な分野のデザインを包括していることを表現。それぞれのデザインがどう重なり合っているのかをみるのも興味深いです。
What the hell is UX?
Nick Finck氏が作成した図。様々なデザインを包括しているという点は Kicker Studio のものと変わりありませんが、こちらはビジネス戦略やマーケット調査まで広げています。中心の UX の円の中には SEO、コピーライティング、ユーザーテストなど様々な分野が書かれていますが、彼の図ではアクセシビリティ (Accessibility) が円の中央にあるのが印象的です。
The User Experience Honeycomb
Peter Morville氏が作成したハニカム構造で構成した UX の概念図。こちらはデザインの領域を表現したものではなく、「使いやすい」「利用できる」「望ましい」「見つけられる」「アクセスできる」「信頼出来る」という UX に含まれる意味を図に表しています。
The Fundamentals of Experience Design
Stephen P. Anderson氏が奇麗なイラストを添えて作った UX の仕組み。人と活動、そしてその2つを繋げるコンテクスト (文脈) が UX の要素であると表現しています。Anderson氏は定期的にこうした体験の視覚化に挑戦しているようですね。
The Interactive Development Process
Nathan Shedroff氏が (恐らく) 90年代後半に作った開発プロセスを表す図。UX という言葉は出てきていませんが、開発前のビジネス戦略から製品のローンチまで「エンジニアリング」と「体験」が入り組んで共存している部分が興味深いです。
Experience Lifecycle
製品/サービスのライフサイクルを認知から順に購入や操作までロードマップ化されています。顧客のどのアクションが何に繋がっているのかも分かりやすく表現されています。手や目で触れた時点から UX が始まっているということが分かります。
User-Centered Design of Digital Products
Namahnが提供しているポスター。様々な人中心デザインのアプローチを地下鉄マップ状に表現しています。『路線』によって目的や効果が違うので、これを見ながら何が出来るのかを検討するのも良いでしょう。
Designing the Experience – Example of WOW
LEGOが社内用で利用している UX テンプレート。顧客像を円の中心に書き、なにが必要なのか、どのような体験があるのかを周りに書き込めるようになっています。UX をテーマにしたワークショップに使えそうです。

上記に紹介した図やイラストをみて感じることが、自分が日々仕事でしていることは UX の一部なのだということです。コーディング、設計、ビジュアルデザイン、Webライティングなど、様々な仕事はすべて UX に直結しています。プロジェクトに関わるすべての方が利用者の体験を補助するための部品を組み立てているわけです。誰かが他の方より重要であるというわけではなく、どれも欠けていては成立しません。それでは、私たちが UX を意識する上で、どの役職でも共有しておきたい前提条件とは何でしょうか。上記に紹介した幾つかの図をヒントに考えてみました。

  • どのような体験を提供したいのかという明確なビジョンの定義と共有
  • 職の領域を示す円が重なりあっているように、手を動かさないとしても他の領域に関する知識をもつ
  • 作る手であれば自分の領域に近い領域が何かを見付け学習する
  • ビジネスゴールや顧客関係についての理解
  • 提供したい体験と今作っているものに大きな差異が生まれていないか振り返る

広義な意味で使われてることが多い UX であるからこそ説明が難しいことがあります。しかし今回紹介した視覚化された UX の図と自分の仕事を見比べてることで、自分からどのような体験を提供することが出来るのか見えて来るかもしれません。Webサイトは常にミクロとマクロを行き来しながら作り上げて行くわけですが、マクロの視点に UX が存在しています。自分が作っているときに立ち止まってサイトを見つめ直す際に役立つツールとして UX があるのではないでしょうか。

※このエントリは ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および ZDNet Japan編集部の見解・意向を示すものではありません。
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