「コロコロ爆伝!!」の著者・渋谷直角氏に裏話を色々と聞いてきた
builder読者の皆さん、こんにちは。
金曜日担当の山田井ユウキです。
週末といえばカジュアルデイ。
ということで、当ブログではネット関連で流行っている話題や、その他、僕が個人的に気になっていることなんかをフリーダムに取り上げていこうと思います。
まずは先週のおさらいですが、前回ご紹介した「コロコロ爆伝!! 1977-2009 『コロコロコミック』全史」。
実はあの後いろいろありまして……紆余曲折を経て(“紆余曲折を経て”って便利な言葉ですよね!) 、著者である渋谷直角さんに直接お話を伺う機会を持つことができました。
せっかくなら色々聞いてみよう! ということで、製作過程での裏話なんかを伺ってきましたので、今回はそのインタビューの模様をお届けしたいと思います。
渋谷さんのお話は面白いのですが、僕については特に面白い発言とかはしていないのでそういうのは期待しないでくださいね!
渋谷直角さん
――まずは今回「コロコロ爆伝!! 1977-2009 『コロコロコミック』全史」を出版することになった経緯を教えてください。
「『リラックス』という雑誌で何年か前に藤子・F・不二雄の特集を組んだことがあったのですが、すごく反響があったんです。それで、もう一度ああいうのをやれないかなと思ったときに、ちょうどコロコロが300号を迎えるということだったので、特集をやらせてもらえるか尋ねたら、OKってことだったんです」
――雑誌の企画だったんですね。
「そうですね、最初から本ありきというわけではなかったんですが、その特集をやっていく中で、コロコロの編集長に裏話とかを聞いて、これはすごく面白いなと思っていたところに、飛鳥新社の赤田祐一さんという編集者から『本にまとめませんか』と声をかけていただいて。ちょうどコロコロが2年前に30周年だったので、本当はそれに合わせて出そうと思っていたんですけど……(笑)」
――それだけ大変だったということですね。
「大変でしたね。取材をどこで止めるかというのもありましたし、続けていくうちにキリがないなと思う瞬間が何度もあって。その中でできるところまでやって……あとは版権的な問題とか、許可取りとかですね。本当は原稿自体は去年の夏にはできていたんですけど、ここまで延びてしまったのはそういう事情なんです(笑)」
――出てくる方々が大物ばかりですが、一番緊張した人は?
「……やっぱり鳥嶋さんですね。激しい話ばかりで、書籍の方はこれでもだいぶマイルドにしているんです(笑)」
――鳥嶋さんのインタビューはすごかったと思います(笑)。やっぱり編集にも気を遣いました?
「あのインタビューでは、鳥嶋さんにコロコロを語っていただくことで、客観的にコロコロってどういう雑誌なのかということを浮かび上がらせたいなと考えていたんです。それでお願いしたのですが、そこから完成まで2年もかかったことで怒られて(笑)、でもきっちり原稿チェックもしていただけました。怖かったですけど(笑)、すごく良い話が聞けてよかったと思います」
――ライバル誌といえば、ジャンプの話題は出てきましたが、ボンボンは意外なほど出てきませんでした。
「そうなんです。ボンボンはあまり……。編集者に話を聞いていても『そんなに意識してなかったけどね』ぐらいで。代わりにジャンプの話は結構出てくるので、ああやっぱりジャンプなのか、って思いました」
――本の中では、たくさんの編集者が当時を振り返ってお話されていますね。
「なんか小学館の編集者って独自の雰囲気を持っているように感じるんですよね。少しクールでインテリっぽいというか……。今のコロコロの編集長はわりと体育会系ノリなんですけど、でもやっぱり小学館の人だなって思います。あとは皆さん編集者としてすごく熱くて、古き良き編集者というノリを感じました」
――取材する中で一番印象に残っているのは?
「ポケモン関係での、久保さんのお話でしょうか。でも原稿に反映するにあたって書けない話も結構あったのでカットしてるんですけど……(笑)。あとは秋本さんというファミコン担当の編集者の方がいて、イベントをどう転がしていったかという話は印象に残っていますね」
――イベントといえばコロコロの真骨頂ですよね。
「そうですね、僕はファミコンキャラバンに参加しなかったのが心残りです(笑)。そういうイベントを都内だけじゃなくて全国でやっていたのはコロコロぐらいですからね。そこはやっぱり他と違うな、と」
――キャラバン……高橋名人ですね!
「高橋名人とタミヤの前ちゃんのレアな対談も収録しているんですが、この間お二人とはトークショーも一緒にやったんですよ。仲は良いんですけど、『あんまり俺たち話すことないんだよね』って(笑)。まあでも確かにお二人の共通の話題って、そんなにはないらしいんですよね」
――ファミコンとミニ四駆はまた別物ですもんね。ファミコンといえば、渋谷さんはゲームもお好きで?
「好きですね。ポケモンとかゼルダとか……でもわりとライトユーザーですよ。ゲーマーの方がガッツリやるような作品はやってなかったんです。FF7とか去年初めてやりましたから(笑)」
――渋谷さんから見て今と昔のコロコロ、比較してどうですか?
「あまり変わらないかな。情報量とかレイアウトは違っていて、僕らの頃はもうちょっとシンプルな感じだったんですけど、今はカラーページとかすごく多いですよね。でも基本的には「イナズマイレブン」とか読んでいても、ああ当時の感じのままだなって。僕は今34歳なんですけど、この本を作るためにまたリアルタイムでコロコロを読むようになったんです。で、最初は読むのがきつかったんですよ。さすがに今のコロコロはちょっと自分にはヒットしないなーって思ってたんですけど……だんだんヒットするようになったんですよね。自分、この歳でヤバイかなと思ってるんですけど(笑)。ギャグマンガとかもすごく笑えますし」
――ギャグマンガですか。
「今、コロコロってギャグマンガがすごく増えてるんです。『絶体絶命でんぢゃらすじーさん』というギャグマンガが人気があって、それがコロコロマンガのターニングポイントになっていくんじゃないかと僕は見ています。というのも、このマンガは藤子先生の文脈のギャグマンガではないんですよね。どちらかというと赤塚先生の、シュールで不条理なギャグマンガの文脈なんです。その影響なのか、コロコロのギャグがちょっと変わってきていて、別の流れがきている。これが今後のコロコロにどういう影響を及ぼしていくのかというのは興味がありますね」
――深いお話ですね。渋谷さんのそういう考察は、今回は収録されてないですよね。
「批評本という形にはしたくなかったんです。時代と合わせて考察するとか、それをコロコロに対してやるのはちょっと違うぞというのがあって。とにかくコロコロって「ガッツで!」という感じなので、この本も「ガッツで!」という感じ(笑)。あまり難しいことは書きたくなかったんです」
――渋谷さんの“コロコロ愛”はすごく伝わってきました。
「この本を読んだ方には、僕がコロコロを愛しているということは伝わると思いますね(笑)。『読んでねえやつが書いてんな』とは思ってほしくなかったです」
――渋谷さんご自身が色々と発言されているのは座談会のコーナーぐらいでしたね。
「そうですね。座談会は、この本を読んでいる人はいきなりコロコロって言われてもちょっと……ってなるかもしれないから、まずは『こういうマンガあったよねー』っていう導入部分として、懐かしい気分に覚醒してもらうためのものだったんですけど、メンバーがマニアックすぎて最初から話についていけないんですよ(笑)。そこは失敗しました(笑)」
――出版されて、周りの反響はいかがですか?
「結構良いですね。友達とか驚いてました。もうちょっとダメな内容だと思っていたらしいです(笑)。内容について、もうちょっと言うと、僕はライターを10年ぐらいやっているんですが、『リラックス』では編集作業的なこともやっていたので、そういう目線で編集者のお話のところを読むと作り手としてすごく共感できるんです。鳥嶋さんのインタビューなんかも、内容は過激ですが編集者としてはすごく参考になるんじゃないかと思います。同業の人にはぜひ読んでいただきたいですね」
――最後に、渋谷さんにとってコロコロとは何でしょう。
「『ガッツ』ですね! あとは『ド迫力!』。この本を作っていて、僕はわりとそれを指針にして生きているのかなって気づきましたね。いつまでも大人になりきれずにいるんです。僕は普段から結構熱いタイプと言われるんですが、それはコロコロで培ってきたもの。だからこの本を作れて、その熱さを忘れずに大人になってしまわなくて良かったなと思います。読者の方の中にも仕事に追われて『ガッツ』と『ド迫力』を忘れてしまっている人がいると思うんです。そんな人に、ぜひ読んでもらいたいですね」
……ということで、渋谷さんどうもありがとうございました!
<今回のインタビューでわかったこと>
・鳥嶋元編集長の話は結構ギリギリ
・小学館はインテリ
・インタビューの間カバンにドラクエを忍ばせていて後からチェックしたらチョッカクさんとすれ違っていた(まさゆきの地図、ありがとうございます!)
<渋谷直角プロフィール>
1975年生まれ、東京都出身。雑誌『relax』でライター活動開始。
マンガも描いており、著書に『relaxboy』『へっポコ!』(石川勝也と共著)
などがある。現在『フイナム』『ゲットナビ』などでコラム連載中。
ちなみに直角は本名であり、小山ゆう「おれは直角」から付けられた。
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