山田井ユウキ

ネット黎明期を支えた個人サイトたち―テキスト王―

2008-12-19 07:00:00

 

 builder読者の皆さん、こんにちは。

今年もあとわずかとなりましたが、年末前にはクリスマスという地雷イベントが控えているため、今からイルミネーションやツリーを視界に入れない特訓をしている山田井ユウキです。

 

そんな話はさておき。

 

今回もネット黎明期を支えた個人サイトをご紹介していこうと思います。

―――

ネットで何か文章を書いていて、その後作家になったりライターになったりという話はわりとよく聞きます(僕もそうです)。

最近だと「夢をかなえるゾウ」でブレイクした水野敬也が代表例でしょうか。

今回ご紹介するサイトの著者も、ネット黎明期からサイトで文章を公開し、見事に小説家デビューを果たしました。

そのサイトは、テキスト王。著者は工藤圭。

またずいぶんと大きく出たな! と言いたくなるサイト名ですが、名に恥じない文章力と面白さを備えているのがテキスト王のすごいところ。

1997年に開設され、更新そのものは2004年末をもって終了となっていますが、一部未完のコンテンツがあるため不定期に更新が続いています。

もしかしてコンテンツがすべて完結した折にはサイトそのものが消滅してしまうのでしょうか……。

その可能性もないとは言えないので、ぜひ今のうちに全ログを読むことをお勧めします。

というか、一度読み始めると時間を忘れて読破してしまうはず。それだけの魅力が詰まったサイトです。

―――

テキスト王の代表的なコンテンツは以下の3つです。

 

■小説家志望の主人公の人生を描いた自伝的創作「さっか道」

■メールだけで物語が綴られるという、斬新な形式のミステリ「メールフレンド」

■女性からふられる時のパターンを軽妙な筆致で描いた「ZEROの法則」

 

他にも多数のエッセイがあって、そちらも読み応えがあるのですが、まずはこの3つをぜひ読んでください。

とはいえ「さっか道」と「メールフレンド」はかなり長いので、それだけで躊躇してしまう方も多いでしょう。

ということで、そんな方のために簡単に内容を紹介したいと思います。

 

■さっか道■

テキスト王管理人である工藤圭を主人公に、小説を出版するまでの道のりを描いた自伝的小説。20代後半ぐらいの人が読むと心に刺さるものがあるはず。「夢をあきらめるのか、それともまだ頑張るのか」という微妙なポジションにいる主人公の心理がリアルに(自伝だから当然か)描写されています。

こう書くと何やら重い話っぽく聞こえるかもしれませんが、ぜんぜんそんなことはなくて、ユーモアにあふれた文体でテンポよく読むことができるのでご安心を。

 

■メールフレンド■

以前のエントリで紹介した「絶望の世界」はウェブ日記の形式を用いて綴られた小説でしたが、この「メールフレンド」はメール形式のみで綴られていくという斬新な構成です。

メーリングリストに突然送られてきた不気味な殺人予告メール。そして本当に殺人が実行される……。

さっか道とは違い、こちらは完全なフィクションですが(そりゃそうだ)、ネットにどっぷり浸かっている人ほどこの物語の怖さがよくわかるのではないでしょうか。

ちなみに「メーリングリスト」とは、特定のメールアドレスにメールを送るだけで、登録してある複数のアドレスに一斉送信できる仕組みのこと。

最近はあまり流行していないようですが、“特定の隔離された空間”を擬似的に生み出し、さらに“送信者の匿名性を保つことができる”という意味において、非常にミステリ向きの題材です。

また、メールだけで展開するため地の文がないことも特徴的で、ある意味ケータイ小説のはしりと言えなくもないかもしれません。いや、それは違うか。

 

■ZEROの法則■

もし時間がなくて小説を読む時間がないよーという方でもこれだけは読んでほしい、僕の一押しコンテンツ

タイトルからは内容の想像がつかないと思いますが、男性が女性にふられるときのパターンを面白おかしく綴ったエッセイで、女性の建前と本音の使い分けの例には思わず「あるある!」とうなずくこと請け合い。

例えば、女性をご飯に誘ったとき、「忙しくてなかなか時間が取れない」と言われた経験は誰にでもあると思いますが、著者はこれを……

―――

客観的に見れば、断り文句だとすぐわかっても、当事者になるとどうしてもそれがわからなくなる。男性は「なんで、そんなに忙しいんだ、飯を一緒に食べる時間ぐらい、その気になれば作れるだろ!!」と逆上するわけであるが、その気になれないから作らないという、大事なことを忘れがちだ。

―――

と、気持ち良いぐらいバッサリと斬ってくれています。

あれ、久しぶりに読んだら何だかオラ、涙が出てきたぞ……。

 

テキスト王のご紹介は以上ですが、これで終わるのも何なんで、最後に僕が自分の体験談からオリジナルのZEROの法則を発表しとこうと思います。

 

―――

シチュエーション

会社員の男(25歳)と大学生の女(22歳)。二人は共通の友人が開いた飲み会で知り合い、意気投合する。

男「それじゃあ今度飲みに行かない? お酒のおいしい店があるんだ」
女「いいですねー 行きましょう~」

そして飲み会は終了。男はさっそくメールをして具体的に予定を組み、お酒に誘うことに成功する。

二人でのデートもまずまず盛り上がり、男は「これはいける!」と確信。さっそくメールで二回目のデートに誘う。

男「昨日はありがとう!楽しかったよ。ところで来週なんだけど、よかったら○○に行かない?」
女「私も楽しかったです。ありがとうございました。来週はサークルの飲み会があるんですよーごめなさい(絵文字)」
男「そっか、じゃあその次の日曜はどうかな?」
女「うーん・・・課題があるのでしばらく忙しいですね。すみません(絵文字)」
男「そっか・・・じゃあまた誘うよ」

このへんで男は「あれっ?」と思い始める。

誘ってもOKが出ず、女の方から具体的な代案もない……これはもしややんわりと断られている……?

でも一回目のデートはあっさり受けてくれたし、話も盛り上がったし、何も問題はなかった。

なのになぜ……。

この場合、「一回目のデートで成功したと思っているのが実は男だけだった」というパターンと、「そもそも最初から脈はなかったが、義理で一回だけ遊んでくれた」というパターンの二つが考えられるが、ほとんどの場合、後者が正解だと思われる。

女性も空気を悪くしたくないし、人間関係など様々なしがらみを考慮して、一回ぐらいは遊んでくれる。しかし二回目はない。

何とも思っていない相手に貴重な人生の時間を二回も使うのは、苦痛以外の何物でもないからだ。

結論としては、

女性は、脈がなくても義理で一回ぐらいは遊んでくれる。だが次はない。

これをわかっていないと壮大な勘違いをぶちかますことになるので要注意である。

―――

 

はい、ということで僕の血涙から生まれたライフハックをお届けしました。

ちなみにこの話、僕だけかと思って女友達に聞いて回ったところ「あー……あるかも」と言われたので、あながち外してもいないみたいです。

 

なんだかクリスマス前に暗い気分にさせたところで、また来週!

 

 

 

※このエントリは ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および ZDNet Japan編集部の見解・意向を示すものではありません。
  • 1件のコメント
#1   2008-12-22 12:00:08
始めまして、本文大変楽しく拝見させていただきました。
非常に懐かしいサイト名に思わず軽く目元が熱くなったのは秘密です。

なんというか、最近はこういうサイトが名前に上がる事も無くなってしまいましたから。
当時を知っている人間も随分散逸してしまっているようですし、
当時の混沌とした熱気交じりの「口コミで密やかに広がっていく」空気が時折懐かしくなります。
今は調べれば大概のものはすぐ見つかりますけど、逆にいうと調べるだけで見つかってしまうんですよね。
「口コミの噂をたどっていく内に色々な人にめぐり合う必要がある」、というか「そうでもしないと出所がわからない」噂と与太話が蔓延していただなんて極最近ネットを始めた方は想像できないんじゃないですかね。
懐かしのアングラサイトなんてその典型でした。今の子らにあの空気は理解できますまい。

明らかに不便であった所が便利になった以上良くはなっているのでしょうが、
やはりふと振り返ってみると寂しく感じるのは歳を取った証拠でしょうか。
考えながらインターネットと向き合うようになってこっち、私は当時のような我武者羅な楽しみ方が出来なくなってしまいました。
願わくば今の若い・・・中高生の方々が良いバカを楽しめている事を祈るばかりです。
・・・まぁ、最近のインターネットは怖いんで程々にしていおてな、とも言いたいですが(笑)

これからも記事、楽しみにしております。
是非頑張ってくださいませ。
ネット黎明期といえばやっぱり外せない、Flashサイトの紹介も是非!(笑)
偽与野区役所やMoRinonoといった青春をフシギに彩ってくれたかの「動く」絵達の存在はやはり文章サイトと対極でありながら同じ空気を持っていたように思います。
今は誰でも簡単に動画の切り貼りなんて出来ますが、当時はそんなことが出来るのはごく一部だけでした。
コレも時代の流れですね、うん。
  • 新着記事
  • 特集
  • ブログ
このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]