Matzに聞いてみた:効率の良い開発についてどうお考えでしょう?
Ruby開発者であるまつもとゆきひろ氏は、企業における情報システム開発の現状を見て、「ソフト開発の効率性向上はのっぴきならない問題になっている」と分析する。
トラディショナルな開発
Rubyは生産性が高いとして注目されるとともに、実際の開発現場でも活用されているが、その開発者であるまつもと氏から見て、企業の情報システムの開発の現状はどう見えているのだろうか。まつもと氏はこう語る。
「たとえば、仕様書があって、ハンコを押してもらって、外部設計書があって、内部設計書があって……というトラディショナルな開発というものがあるかと思うんですが、そうしたトラディショナルな開発については、正直知らん、っていう感じですね。もう好きにやって下さいと言いたいです」
企業が情報システムやウェブを開発する際に、外部に開発を委託するにはさまざまな手順を踏まざるを得ないわけだが、まつもと氏はそうした開発プロセスについて“時代遅れ”と見ているようだ。
同氏はネットワーク応用通信研究所(NaCl)に身を置きつつ、2007年6月から、楽天の研究部門である楽天技術研究所でフェローとして働いているが、そうしたトラディショナルな開発は行われていないという。
「そんなのんびりした開発は許されませんから。楽天では外注がないんですよ、全部内製なんです。仕様を決める“幸せ”があるんだったら、“さっさと作れ”“サービスインしろ”という会社なので」
ネットサービスを中心とした企業だからなのか、楽天ではとにかく作って、サービスインしてしまった後で、改良し続けるという小さなプロセスが、至る所で動いているようである。「ウェブ系企業であれば、数週間でサービスインするという事態はままあることだし、かけたとしても数カ月」(まつもと氏)であって、ソフト開発に何年もかけて開発するという状況はもはやあり得ないという。そうした開発を前提にして、まつもと氏は「トラディショナルな開発とはオーバーヘッドが大きすぎて話にならない」と見ているのである。
小さいプロジェクトが至る所で動く
「官公庁系の大きなプロジェクトというのは、そうしたトラディショナルな開発が残ると思いますけど、そうではないウェブを中心にした開発工程の中で外部仕様書を書くことなんてあり得ない。ラフなデザインで開発のゴーサインを出して、できあがってちょっと使いにくかったら、ちょっと直して……というサイクルになってくると思いますね。Rubyが活用されているのは、そうした新しいエンタープライズ開発なんです」
この新しいエンタープライズ開発は、小さいプロジェクトが至る所で動いているわけだが、これはオープンソース開発でいうバザールと同様のものと言えるのではないだろうか。そうした問いに対してまつもと氏は、こう答える。
「必ずしもイコールにはならないと思いますが、場合によっては近い“生態系”になることはあると思います。つまり、新しいエンタープライズ開発では、バザール方式での開発の考え方を学んだ方がいろいろな理解が進んでいいと思いますが、必須かというとそうでもない」
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