ソーシャルグラフの将来像--「もう一つの社会」が浮かび上がる
ソーシャルメディア上の情報を収集し解析し表現する、これこそが、ソーシャルグラフの役割であると言える。十分な量のコンテンツ、属性、行動履歴、メタデータなどがあれば、それを解析することによって、リアルな社会では成し得ないレベルでの社会構造を見ることが可能になる。
どうせ人が認識できるのは脳というフィルターを経た情報だけなのですから、脳がネット上の社会を生存空間として認識すれば、ネット上の社会がより優先的な社会になる可能性すらあります。
もちろんその場合、個体の生存という問題を解決しなければならないため、現時点ではかなり非現実的ではあります。
以前にヒットした「マトリックス」という映画がありましたが、この映画はそうした「もう一つの社会」を「ただ一つの社会」として人に認識させた場合について取り扱っていました。
マトリックスのような、完全に独立して機能するほどの社会を具現化するのは現時点では難しいとしても、人が「もう一つの社会」として認識する程度であれば、現時点でのソーシャルメディアの総コンテンツボリュームがあれば可能かもしれません。
ただしそのためには、それを相互に交換するための「標準化された」データフォーマットとプロトコル、そしてそれらを解析する技術が必要となります。
ただここで、「何故もう一つの社会が必要なのか?」という疑問が出てきます。必要のないものは本質的に存在できない、というのが筆者の考えです。そして同時に、筆者は「もう一つの社会」の重要性を確信しています。
そこには本質的な存在するだけのメリットがあります。そのメリットの一つは、前述したように「制約のない社会」を実現できるからです。
ネットがここまで普及した最大の要因の一つは、空間的制約がないことです。そしてソーシャルメディアがここまで成長してきている要因の一つは、その匿名性を確保した複数の人格を保有できるからです。
つまり人は活動する空間としてネット、そしてソーシャルメディアを潜在的に求めていると言え、そうである以上はその空間=社会はより構造的であるに越したことはないはずです。
もう一つのメリットは、本人ですら認識できない社会構造を、求めるのであれば手に入れることが可能だからです。幸い、ネット上のデータというのは全てデジタルです。そしていま存在する解析手法というのも全てデジタルです。
ネット、そしてソーシャルメディア上に十分な量のデジタルなデータ(コンテンツ、属性、行動履歴、メタデータ)があれば、それをデジタルな手法で解析することによって、リアルな社会では成し得ないレベルでの社会構造をそこに見ることが可能になります。
非常に初歩的な例で言えば、Amazonによって自分が本来知らなかった、自分が好むコンテンツを知ることができることなどが挙げられます。これこそが「集合知」であり、そのメリットです。Web 2.0の特徴、メリットは色々ありますが、筆者は「集合知」こそが最大のものであると思っています。
ネット上、ソーシャルメディア上で、本質的に人が欲しいと思う社会を実現するのが、ソーシャルグラフの役割だとあえてここでは言い切ってみたいと思います。
次回はソーシャルグラフを実現する技術についてです。
山崎徳之株式会社ゼロスタートコミュニケーションズ 代表取締役社長
アスキー、So-net、ライブドアなどでシステム設計、構築、運用を行う。2003年9月にシリコンバレーにVoIPの開発会社であるRedSIP Inc.を設立、CEO就任。2006年6月にゼロスタートコミュニケーションズを設立、代表取締役社長就任。Software Designで「レコメンドエンジン開発室」などの連載をしている。
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